【コラム】常に平常心の柴崎岳、今こそ内に秘めた熱を放つ時

2018年6月12日(火)8時14分 サッカーキング

練習でも一人黙々とこなす姿が目立つ [写真]=Getty Images

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 先日、リーガ・エスパニョーラの公式HPにこんな記事が掲載されていた。「自身初のワールドカップで主役になるかもしれない注目選手」。リーガでプレーする選手から選ばれた8名の中に、柴崎岳の名前があった。

 昨年7月にヘタフェに移籍し、バルセロナやレアル・マドリードといった強豪クラブがひしめくスペイン1部リーグで1シーズンを戦い抜いた。1年間の成長を一言で表すならば、「世界主要リーグのスピードに慣れた」こと。世界基準への“慣れ”は、W杯を戦う上で「アドバンテージになる」と柴崎は胸を張る。

 スペインの地でさらに磨きをかけた戦術眼やパスセンスは、日本代表の攻撃にアクセントを加える武器となり得る。先発が予想される12日のパラグアイ戦に向けて、自身の役割は明確だ。

「ボランチの位置からしっかりと攻撃の方向づけをしていきたい。ガーナ戦よりも(スイス戦のほうが)バイタルエリアへの侵入回数は増えてきた。そこから先のラストパスの質が問題になってくる。僕個人としては、ゴールに迫れるような状況を作っていきたい」

 中盤の舵取り役だけでなく、セットプレーのキッカーとしても期待される。スイス戦の81分には、得点にこそならなかったものの、右CKから精度の高いボールを送って見せ場を作った。

「究極を言えば、1本でも質の高いボールを蹴れば決まると思う。1本1本、集中して蹴りたいと思いますし、中の人(受け手)との関係性をもっと深めたい。(僕のボールを)信じて、中に入ってきてもらえるようにしたい」

 柴崎の安定したプレーの背景には、「平常心」というキーワードがある。試合前は集中力を高めるために自分の世界を作る。たとえば、アップテンポの音楽を聴くのもその手段の一つだ。気持ちを高ぶらせたいわけではない。頭の中のリズムやテンポを上げることで、グッと集中できるのだという。普段見せるクールな素振りからは想像しにくいが、ロッカールームであえて大声を出すことだってある。

 しかし、これらはルーティンではない。「その時に聴きたいものを聴くし、やりたいことをやる。自分のペースで、バランスを保ちながらやっています」。それが柴崎流の集中力の高め方だ。

 一点に集中してしまうと、ピッチに立った時に視野が狭くなってしまう。だから全方位に対してより敏感に反応できるよう全身の感覚を研ぎ澄ませる。そのアプローチはW杯という大舞台を前にしても変わらない。

「特に変わったことを意識しているつもりはない。個人の感覚としては悪くないので、そこをもっと良くして、自信を持って初戦に臨めるようにしたい」

「個人としてのパフォーマンスを上げて、目に見える結果を出して、なんとか自信をつけたい。分かりやすい形で成果を出すことができたら、チームとしても、個人としても、この先にまた違った可能性が見えてくる」

 淡々とプレーする柴崎の姿には頼もしさを覚える一方で、そこにもう少し“熱さ”が加われば、と思うことがある。ポーカーフェイスの裏に隠れている闘志、それが前面に表れたらもっとチームに勢いをもたらすのではないか、と。その熱量みたいなものは、きっと勝敗を分ける“ちょっとした違い”の一つであり、同時に主役になれるかどうかを分ける“ちょっとした違い”なのだと思う。

取材・文=高尾太恵子

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