【コラム】“泣き虫”のエースが背負う使命…ネイマールが涙の今大会初ゴール

2018年6月26日(火)22時0分 サッカーキング

コスタリカ戦後、勝利に安堵して涙を流すネイマール [写真]=Getty Images

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 試合終了のホイッスルが鳴り響くと、ネイマールはその場にひざまづいて両手で顔を覆った。優勝候補のブラジルにとっては“通過点”であるはずのグループステージ第2戦、しかしセレソンのエースは涙をこらえることができなかった。

 本人は試合後、自身のインスタグラムで「苦しい時を乗り越え、ようやく勝利することができた」と涙の理由を明かした。確かに苦しい試合だった。90分を終えた時点でスコアは0−0。コスタリカの守護神ケイラー・ナバスの牙城を崩し、ゲームの均衡を破ったのはアディショナルタイム突入後の91分だった。

 ネイマール自身も再三のチャンスを決め切れなかった。79分にはエリア内で倒されてPKを獲得したかに見えたが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)によって判定は覆った。それでもタイムアップ直前のアディショナルタイム7分、ドウグラス・コスタのクロスに点で合わせて追加点をもぎ取った。誰よりも本人が待ち望んでいた今大会初ゴールだった。

 ネイマールは今回のワールドカップを4年前のリベンジの舞台と捉えている。しかし、大会を前に試練が訪れた。2月末に右足首を負傷して戦線離脱。ようやく実戦に復帰したのは6月に入ってからだった。復帰戦で即ゴールを決めたものの、試合勘やコンディションには少なくない不安があった。実際にスイスとの初戦では決定的な仕事ができず、背番号10には大きなプレッシャーがのしかかっていた。だがらこそ、コスタリカ戦の勝利に思わず安堵の涙がこぼれた。

 思えば、ネイマールが公の場で涙するのは今回が初めてではない。前回大会では国家斉唱で感極まって泣き、試合後の会見で泣き、自身の負傷やチームの敗退に涙した。2年前のリオ五輪で母国に初の金メダルをもたらした時もピッチに突っ伏して大泣きした。“泣き虫”のエースに対しては「精神的に弱い」と批判する声も聞かれる。だが、「ブラジルの10番」、「セレソンのエース」という肩書きには想像を絶するプレッシャーがあるのだろう。

 重圧にさいなまれ、もがき苦しみ、時に涙を流す。コスタリカ戦後には、チームメートへの侮辱行為やゴール後のジェスチャーが物議を醸すなど、未熟な部分をいくつも露呈している。だが、決して完璧ではない“人間臭さ”もまた彼の魅力の一つだ。あれだけのテクニックとセンスを持った選手が感情をむき出しにする姿は、時にプレー以上にファンを魅了する。

 ケガを乗り越え、最初のプレッシャーを跳ね除けたことで、ネイマールはようやくロシア大会の“スタートライン”に立った。ブラジル国民は、コスタリカ戦でエースが流した「安堵」の涙が、W杯制覇という悲願達成による「歓喜」の涙に変わることを願っている。

サッカーキング

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