新型ポルシェ911 GT3 Rのテストは現行車も活用。開発フェーズは終盤に「状態は良好」
2022年7月1日(金)12時53分 AUTOSPORT web
ポルシェ911 GT3 R開発のプロジェクトマネージャーであるセバスチャン・ゴルツによると、ポルシェが2023年から世界中のカスタマーレース市場に投入する新型GT3カーの開発は終盤のフェーズに入っており、状況として「良い状態」にあるという。
ポルシェは2019年から活躍している同名の現行GT3モデル“タイプ991.2”に代わり来年、タイプ992ベースの『911 GT3 R』をカスタマーレーシングのマーケットに投じる予定だ。
ゴルツによると、スパ・フランコルシャン、カタロニア、モンツァを含むヨーロッパの複数のサーキットで行われた大規模なトラックテストにより、GT3エンジニアリングチームはニューモデルの発売を前に製品を高性能かつ信頼性の高い状態に仕上げることができたという。
「我々は多かれ少なかれ、このクルマの開発フェーズの終盤にいる」とSportscar365に語ったゴルツ。
「すでに耐久テストを終えているので、信頼性の面では適切なものになっている。いい状態だ。クルマのパフォーマンスもいいし、ベースラインは間違いなくそこにある」
「今は2023年に向けてクルマのセットアップをどのように導入したいかを定義するために時間を割いている。これはもう少し微調整が必要だ。なぜなら、私たちは今後数年間のクルマ定義づけをしているためだ」
■991.2モデルを活用したトラックテスト
ポルシェは多くのプライベートテストで、992世代のGT3マシンと、過去3年半の間にメジャーレースで複数の勝利を収めた先代マシンを同時に走らせた。
これにより、開発チームは新型車のベースラインを観察し、改善すべき領域を迅速に特定することができた。
2019年型ポルシェGT3を走らせるチームが獲得した注目すべき勝利には、GPXレーシングとROWEレーシングのトタルエナジーズ・スパ24時間レース、マンタイ・レーシングのニュルブルクリンク24時間レースなどがある。
ゴルツは「我々は高い目標を掲げている」と述べた。「新車は、最低でも現行車と同じレベルのパフォーマンスを発揮しなければならない」
「私たちはどのテストでも新車と現行車を一緒に走らせた。同じコンディションで同時にテストし、その間にドライバーを入れ替えたりもした」
「つねに同じ理論的なBoPポイントに基づいてクルマを合わせていた。それにより、実際に走らせてドライバビリティやパフォーマンス、トップスピード、加速度などを比較することができた」
「これは、新しいクルマがどのレベルにあるかを判断するのに役立った」
ゴルツは、新型GT3マシンの基本的な設計は図面から変わっていないものの、一部の空力部品などは、こうしたサイド・バイ・サイドテストで得られた結果を受けて微調整されたと説明している。
「ベースラインは最初から本当に良かった」と同氏。
「パフォーマンスは初めからあったので、感覚的には箱から出してそのまま戦える状態だった。しかし、当初は正しくないと思っていたこともいくつかあった」
「トップスピードの面では、なぜ以前のマシンのように(競争力が)ないのかを突き止めなければならなかった。そのため、シミュレーションやトラックテストのデータなどを使って再確認した」。
「そして問題が見つかったので、このリファレンスカー(991.2モデル)をコース上に置くことが本当に重要だったことは明らかだ」
「私たちは何かが間違っているに違いないと気づき、何が問題なのかを突き止めた。対策を講じた今は、私たちが期待していた側にいる」
「1台で走っていると、周囲の状況やコース、タイヤのせいかもしれない。何が原因なのか、はっきりしたことはわからない。でも、そこにリファレンスカーがあれば、良くも悪くも違うはずだと理解できるんだ」
■公認前のテスト参戦はNLSや24Hシリーズか
タイプ992ロードカーベースの新型911 GT3 Rは、今年後半にホモロゲーション前の状態でレースデビューする予定だ。ゴルツはNLSニュルブルクリンク耐久シリーズと24Hシリーズをその舞台とする可能性を挙げている。
ポルシェは、独立したドライバーやチームの手によってシステムがどのように機能するかを確認するため、テストプロセスの最終段階にカスタマーを組み込むことを熱望している。
「彼らにとっては、まだ顧客に販売されていないクルマに乗ることが許されるのは、とても名誉なことだ」とゴルツ。
「多くのレースに出ているいくつかのチームは異なる予算レベルで作業をしているが、そうでないチームは特別なツールや、その他すべてのものに支払うための大きな予算を持っていない」
「そのようなチームが、すべてを処理することが可能なのだろうか? もし、そうでないなら、私たちは何か間違ったことをしたのかもしれない。だからこそ、これが必要なんだ」