「FW11Bに敵うマシンはない」元F1王者マンセル、今のドライバーは“適切なマシン”を知らないと主張

2019年7月26日(金)7時45分 AUTOSPORT web

 1992年にウイリアムズでチャンピオンに輝いた元F1ドライバーのナイジェル・マンセルは、最近のドライバーたちは“適切な“F1マシンがどのようなものか経験することはないだろうと考えている。


 モータースポーツの最高峰であるF1におけるマンセルのキャリアは、ターボエンジン時代が始まった急激な技術開発の時期にあたる。また当時ウイリアムズはアクティブサスペンションを備えた『FW14B』によって、寄るところ敵なしの圧倒的優位を確立していった。


 最も勇敢で、アラン・プロスト、ネルソン・ピケ、アイルトン・セナらを打ち負かしていた猛然たるドライバーであったマンセルは、当時素晴らしくスリリングで驚異的に速いマシンを極めていたウイリアムズの有力なメンバーだった。そのマシンはスーパーチャージャー時代に、1500馬力を超える1.5リッターエンジンを搭載していた。


「F1は決してあのようには戻らないだろう」とマンセルはFIAの『Auto』誌に語った。


「ああいったマシンをドライブするのは、人生でできることのなかでも最も爽快で恐ろしいことだった」


「ウイリアムズの『FW11B』におよぶマシンは、世界中でもひとつもない。そして、F1があのようなマシンに戻ることは決してない。本当のところ、現在のドライバーたちは適切なF1マシンがどのような感じか知ることはまったくないだろう」


 実際にルイス・ハミルトン(メルセデス)は、メルセデスの2019年型マシン『W10』について嘆いていた。素晴らしい性能と効率性を備えたW10は、ドライブするのに身体的な負担の多いマシンではないのだという。


 マンセルは当時のF1マシンについて、「予選では、文字通り1500馬力まで出した」と述べた。


「BMWはさらに馬力があったとの評判だった。そして6速で、ストレートでホイールスピンをした時のことは、ドライバーとして言葉では言い表せないくらいだ」


「ひとつひとつのコーナーに差しかかる時、マシンは文字通りドライバーを殺そうとする」


 マンセルの時代、グランプリレースは危険なものだった。1980年代や90年代初頭に見られたひどく過剰なパワーとスピードのせいだけでなく、ドライバーは危険な環境に直面していたのだ。


「当時、古いシルバーストンのコースでレースをすると、たとえばハンガーストレートを予選の勢いで走り、時速200マイル(約時速321.8km)を超えたものだ」とF1における“勇猛な”心の持ち主であるマンセルは振り返った。


「ストウ・コーナーではリフトなしで全開でターンインした。古いコースで、コーナーの外側には6インチ(約15cm)幅のポールにキャッチフェンスとしてワイヤーが張られていた。ワイドに走るとこうしたポールにぶつかりそうになったものだ」


「そしてクラブ・コーナーにリフトせずに全開で入っていった。コーナーを出ると文字通り安堵のため息が出た。なぜなら第一に、途方もない大きさのGフォースに引っ張られた後で息をすることができるからだ。そして第二にして最も重要なのは、コーナーを出ると、『やり遂げた』と思うからだ」


「安全面については、1980年代と90年代には状況は正しい方向へ進んだ。だが技術面については、状況が良くなるようにはならなかった。いまだに非常に厳しいものだ」

ウイリアムズのヘリテージ・ドライバーを務めるカルン・チャンドックが走らせたウイリアムズ FW14B


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