A.エスパルガロの今季初優勝とアプリリア勢が席巻したトップ5。その要因となった新アイテム/第9戦イギリスGP

2023年8月9日(水)9時20分 AUTOSPORT web

 MotoGP第9戦イギリスGPの決勝レースで、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)が優勝を飾った。最高峰クラスとしては、自身として2勝目。アプリリアにとっても2勝目だった。勝利のカギとなったのは、イギリスGPで投入された新しいアイテムだったという。


 エスパルガロは4列目12番グリッドからスタートして、1周目には6番手に浮上した。この好スタートもひとつのポイントとなったのだが、これについては後述することにする。


 6周目には2番手にポジションアップ。13周目あたりで小雨が降りだしたことでマシンの乗り換えが可能となるホワイトフラッグが掲示されるコンディションとなり、トップのフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)と2番手のアレイシ・エスパルガロに、ブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)、マーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)、ミゲール・オリベイラ(クリプトデータRNF・MotoGPチーム)が迫りトップ集団を形成したが、レースを通して見れば、トップ争いはほとんどエスパルガロとバニャイアによって争われていた。


 エスパルガロは最終ラップの10コーナーでバニャイアの前に出ると、11コーナーで抜き去った。そのままトップでチェッカーを受け、2023年シーズン初優勝を飾ったのだった。


 2022年シーズンに大きな飛躍を果たし、シーズン中盤までチャンピオン争いに食い込んだアプリリアとエスパルガロ。ドゥカティがシーズンを席巻している今季、優勝や表彰台こそ多くはないにせよ、コンスタントにトップ5付近でゴールするレースを続けている。イギリスGPでは金曜日のプラクティスでトップ。エスパルガロはチャンスだと考えていたという。


「トップに戻ってこられてすごくうれしいよ。シーズン序盤は、自分やチームにちょっと期待をしすぎていたのかもしれない。だからかなりミスもした。アルゼンチン、アメリカでクラッシュもしたしね。それでポイントをかなり失ってしまった。金曜日はスピードがあることが多かったし、多くのセッションでトップを走るペコ(フランセスコ・バニャイア)にとても迫っていたけど、日曜日に速く走らなきゃいけないんだから、そんなことは関係ないんだ。何らかの理由で、自分の速さと結果を結び付けられていなかった」


「でも、ここでは金曜日に速かった。昨日はあいにくウエットレースだったけど、自分のパフォーマンスにとても満足していた。今日はすごく自信があったし、いいペースだったからチャンスだと思っていたんだ。プレッシャーもなかったよ。12番手スタートだったけど、レースは長いし、ここはオーバーテイクが難しいサーキットというわけでもないからね」


 ドゥカティ勢と争うためにも、現在のMotoGPクラスでは前方からのスタートが非常に重要であると言われているが、12番グリッドからスタートを切っての優勝。これはマルコ・メランドリが2006年のトルコGPで挙げた14番グリッドスタートからの優勝に次ぐ、後方スタートからの優勝である。エスパルガロは追い上げのレースに必要だった好スタートの要因を挙げた。


「12番手からのスタートはリスクが高いけど、僕はいいスタートを切った。アプリリアがクラッチ、スタートシステムについてかなり力を入れて取り組んでいるからなんだ。レースでは多くの新しいアイテムを使い、それが僕を大いに助けてくれた。アプリリアからのサポートは非常によかったと思う」


 エスパルガロは金曜日から、新しいフェアリングとフロントエンドにもトライしていたという。それによって、コーナー立ち上がりのトラクションが改善された。元々アプリリアにとって相性のいいシルバーストン・サーキットで、投入された新しいアイテムが奏功した形となった。


「(新しいパーツによって)うまくコーナーを閉じられると感じた。だからほんの少し、バイクを早く起こせるようになったんだ。バイクを起こす、それから加速については、まだ大きく改善が必要な部分でもある。新しいフェアリングで僕はこの週末、かなり改善したと思うんだ。カギは、多くのトラクションを得たことだと思う。以前よりもずっとうまい具合にバイクを起こせるようになったからね。以前はバンクした状態で加速していたものだから。これが非常に重要なアップグレードだった」


 イギリスGPではエスパルガロが優勝したことに加え、サテライトチームのオリベイラが4位、ビニャーレスが5位に入り、アプリリア勢3台がトップ5に入り、トップ10まで範囲を広げて見ればラウル・フェルナンデス(クリプトデータRNF・MotoGPチーム)の10位によって、トップ10に全ライダーが入る結果となった。途中で小雨がぱらつく難コンディションであったとはいえ、22台のうち8台を占め、今シーズンを席巻するドゥカティ勢がライバルにいることを考慮すれば、素晴らしい結果ではないだろうか。


「トラクションとグリップが重要なんだ」と、エスパルガロはシルバーストン・サーキットで発揮されたアプリリアの強さの理由を説明した。


「パワーの量はグリップによって限られている。アプリリアはトラクションがよく、グリップも高い。だからカタールやアルゼンチン、シルバーストンのようなサーキットでは、バイクがとてもよく走るんだ。ほかのサーキットでもとてもいい走りをするけれど、前のほうからのスタートじゃなかったり、ル・マンではマーベリックがすごく速かったけどクラッシュしたし、アルゼンチンは雨だったし……」


「運の話をするのは好きじゃないよ。チャンピオンシップに運は関係ない。でも僕たちの本当のパフォーマンスは、発揮しきれていないと思うんだ。改善すべきところがまだたくさんあるとはいえ、バイクはすごくいいんだから。今日はアプリリアにとって素晴らしい日だったと思う。トップ5に3台のアプリリアが入ったんだからね。それに、トップ10に4台だ。素晴らしい結果だよ」


 イギリスGPでは前述のような新しい空力デバイスのほか、ビニャーレスが新しいスイングアームを使用した。また、エスパルガロによれば、「オーストリアでもアプリリアは新しいアイテムを持ち込むみたいだ」と言う。注視すべきアプリリアの進化はまだまだ続きそうだ。

「最終ラップにアレイシが来るとわかっていて準備していたけど、うまくいかなかった」とバニャイア
レース前、息子のマックスくんには「テレビに映らないから前のグループで走ってよ」とお願いされたんだとか
「今季いちばん力強く走れたレースウイークだったよ」とイギリスGPを振り返っていたビニャーレス。サイドカウルの下部に突き出しているのが新しい空力デバイスと見られる

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