逃げきり方を見失った湘南。痛恨ドローの新潟戦を検証【J1リーグ2023】

2023年8月14日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

FW大橋祐紀(左)MF高木善朗(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第23節の全9試合が、8月12日と13日に各地で行われた。


同リーグ最下位の湘南ベルマーレは12日、敵地デンカビッグスワンスタジアムでアルビレックス新潟と対戦。最終スコア2-2で引き分けている。


前半に2点のリードを奪ったものの、後半30分とアディショナルタイムの失点で勝ちきれなかった湘南。今節での最下位脱出は叶わず、J1リーグ残留に向けて手痛い勝ち点の取りこぼしとなった。


湘南が逃げきれなかった原因は何か。ここでは新潟戦を振り返るとともに、この点を検証したい。




アルビレックス新潟vs湘南ベルマーレ、先発メンバー

狙い通りの守備で湘南が先制


最終ラインから丁寧にパスを繋いでくる新潟に、湘南がハイプレスで応戦。基本布陣[4-2-3-1]の新潟のパス回しを、サイドへ追いやろうとする狙いが窺えた。


この日も[3-1-4-2]の布陣で臨んだ湘南は、大橋祐紀とディサロ燦シルヴァーノの両FW(2トップ)が、新潟の2センターバックからボランチへのパスコースを塞ぐ。これにより新潟のDF新井直人(右サイドバック)が自陣後方でパスを受ける場面が多くなり、ここに湘南のMF山田直輝が積極的にプレスをかけた。


GKや最終ラインからのパス回しの際、新潟の両サイドバックが自陣後方の大外のレーンや味方センターバックとほぼ同列の位置へ降りてボールを受けたため、湘南としてはハイプレスの的を絞りやすい展開に。この新潟の攻撃配置が修正されないうちに、湘南が先制ゴールを挙げた。


前半9分、大橋とディサロの2トップが新潟GK小島亨介からMF高宇洋へのパスコースを塞いだうえで、湘南MF小野瀬康介がホームチームのDF渡邊泰基(左センターバック)に鋭く寄せる。


この守備で新潟のパス回しをDFトーマス・デン(右センターバック)や新井方面へ追いやると、デンの強引な縦パスに湘南の選手たちが食いつく。センターサークル付近へ降りた新潟FW鈴木孝司からはボールを奪えなかったものの、鈴木からDF長谷川巧へのパスを、湘南のDF杉岡大暉(左ウイングバック)が回収。ここからアウェイチームの速攻が始まり、左サイドを駆け上がった山田の低弾道クロスを大橋がスライディングで押し込んだ。キックオフ直後からの湘南の狙いが結実した場面と言えるだろう。




アルビレックス新潟 FW鈴木孝司 写真:Getty Images

試合序盤に乱れた新潟の攻撃配置


新潟としては、試合序盤に攻撃配置を整えられなかったことが悔やまれるところだろう。1失点目の場面では、湘南の山田と杉岡のどちらにも捕捉されない中間エリアに長谷川(右サイドハーフ)が立ち、鈴木からのパスに反応していれば、ボールを奪われなかったかもしれない。杉岡の射程圏内に立ったことで、鈴木からのパスを受け損ねた。


また、この場面でも新潟の両サイドバックが自陣後方の大外のレーンに立っており、湘南のインサイドハーフやウイングバックのプレスを浴びやすい状況に。サイドバックがこの位置でボールを受けても、自身の傍にはタッチラインがあるため、その後のパスコースが限られてしまう。サイドバックが内側に立ち、中央とサイドどちらにもパスを出せる状況を作る。もしくはサイドバックとセンターバックの間へボランチの選手が降り、パスを捌くなどの工夫が今後は必要だろう。新潟のシーズン終盤戦に向けた課題が明確になった失点シーンだった。


1失点目を境に、新潟の攻撃配置が整い始めた

一瞬の隙を突いた湘南が追加点


湘南の先制ゴールを境に、新潟の両サイドバック(新井とDF堀米悠斗)がタッチライン際から内側へ絞ってパス回しに関わるように。これに加え、ハイプレスからのボール奪取を狙う湘南のインサイドハーフとウイングバックの中間エリアを、新潟の両サイドハーフ(長谷川とFW小見洋太)やMF三戸舜介がより積極的に狙った。


新潟の攻撃配置が整い始めたことで、湘南はハイプレスを仕掛けづらくなったが、ワンチャンスを物に。前半26分、タッチライン際から内側に絞った新井から縦パスが繰り出される。このパスはMF高を経由し、湘南のインサイドハーフ山田と左ウイングバック杉岡の間に立っていた三戸に繋がったものの、その後のワンタッチパスが長谷川と合わず。湘南がボールを回収した。


この直後に湘南のDF大野和成がロングパスを繰り出すと、敵陣左サイドを駆け上がった大橋が新潟DFデンとの競り合いを制し、ペナルティエリアへ侵入。大橋のラストパスをディサロが冷静に相手ゴールへ押し込んだ。




湘南ベルマーレ MF小野瀬康介 写真:Getty Images

リードをふいにした湘南の反省点は


前半途中よりハイプレスを仕掛けづらくなった湘南は、インサイドハーフの山田と小野瀬がMF田中聡(中盤の底)の両脇を埋める[5-3-2]の守備隊形へ移行。後半開始前に山田との交代でピッチに送り込まれたMF平岡大陽もこの役割を担ったが、後半途中からインサイドハーフのポジショニングが漫然としてきた。


新潟が最終ラインからパスを回した後半10分、湘南のインサイドハーフ小野瀬の位置どりが高すぎたため、MF田中の脇が空く形に。このスペースをDF舘幸希(センターバック)が最終ラインから飛び出して埋めようとしたが間に合わず。途中出場の新潟MF高木善朗にこの位置でパスを捌かれ、同クラブの速攻を許してしまった。


この場面を皮切りに、湘南の守備の段取りが曖昧に。無闇にハイプレスを仕掛けた平岡の背後を、ポストプレーのために降りてきた新潟FW鈴木に狙われるシーンもあり、失点は時間の問題だった。


アルビレックス新潟 MF高木善朗 写真:Getty Images

後半30分、僅かに開いた最終ラインと中盤の間を新潟にパスワークで突かれると、高木のミドルシュートを浴びて失点。中盤3人の横方向のスライドも間に合っておらず、この時点で湘南の守備は崩壊していた。


迎えた後半アディショナルタイム、湘南は致命的な守備エラーで勝利を逃す。センターサークル付近でボールを受けた新潟DF新井に、平岡が突如プレスをかけたため、MF田中の隣が空く形に。ここを埋めるためにセンターバックの大野が最終ラインから飛び出したが、今度はこの背後にスペースができてしまった。ここへ走り込んだ新潟FW鈴木のラストパスを、高木に物にされている。


逃げきり策を見失っていた湘南の失点は、必然だったと言わざるを得ない。新潟に追撃のゴールを奪われた段階で[5-4-1]の守備隊形を敷き、MF田中や最終ラインの選手の守備の負担を減らすなどの工夫も見られなかった。


特に高温多湿の夏場の試合では体力の消耗が激しく、ハイプレス一辺倒で守りきるのは無謀だろう。湘南の選手たちや山口智監督に、試合の終わらせ方という新たな課題が突きつけられた。

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