大型補強が話題のチェルシー、3回の市場で1660億円以上の支出も…会計上問題がない理由とは?

2023年8月16日(水)15時14分 サッカーキング

大型補強に注目が集まるチェルシー [写真]=Getty Images

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 直近3回の移籍市場での大型補強が話題となっているチェルシーだが、多大な金額を投資しているにもかかわらず、ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規則の範囲内だと考えられているその理由が明らかになった。15日、イギリスメディア『アスレティック』が報じている。

 チェルシーは今年1月にアルゼンチン代表MFエンソ・フェルナンデスを英国史上最高額となる1億2100万ユーロ(当時のレートで1億700万ポンド/約170億円)で獲得すると、今月14日にはわずか半年で再びプレミアリーグの移籍金記録を塗り替える総額1億1500万ポンド(約212億円)でエクアドル代表MFモイセス・カイセドを獲得するなど、巨額の移籍金での選手獲得を含め、大型補強を実施している。

 この結果、2022年5月30日に買収を完了したチェルシーの新しいオーナーグループは3回の移籍市場だけで、総額9億ポンド(約1663億円)を超える金額を投資して選手補強を行なっているが、さらに現在はサウサンプトンに所属しているベルギー代表MFロメオ・ラヴィアやクリスタル・パレスに所属するU−21フランス代表FWマイケル・オリーセの獲得にも迫っていることが明らかになっている。

 このような大型補強を実施しているクラブが他にないことから、プレミアリーグに所属する他クラブからリーグに対してチェルシーに対する苦情が寄せられていることも噂されているほか、FFPに準拠していないのではないかと指摘する声も上がっているものの、チェルシーとしてはルール内での財政管理を行なっているとの自信を持っていることが伝えられている。

 そんななか、『アスレティック』はチェルシーの補強戦略がどのように進んでいるかを分析。移籍金の金額だけではなく、その仕組みを理解することが重要であることを強調した。

 まず初めに例として、クラブがA選手と5000万ポンド(約92億円)で契約して週給10万ポンド(約1850万円)で5年契約を締結した場合と、B選手をフリーで獲得して週給40万ポンド(約7390万円)の契約を結んだ場合、どちらが会計上では年間高額になるか。

 B選手は移籍金がかかっていないが、週給40万ポンドを支払っているため、年間2000万ポンド(約37億円)以上が帳簿に計上される。一方、A選手は5年契約を締結しているため、移籍金は契約年数に応じて各年度に分割して費用計上(減価償却)でき、それに週給を合わせた年間総額は1500万ポンド(約28億円)相当となる。このことから、実際にはフリーで加入したB選手の方が会計上は高額に記載されるようになり、移籍金だけを焦点にすることは間違っていると指摘している。

 特にチェルシーは今冬の移籍市場で7年半や8年半契約での選手獲得を行なっており、帳簿上の年間コストはさらに削減されている。すでに欧州サッカー連盟(UEFA)は今年7月から契約期間にかかわらず、移籍金が減価償却できるのは最長5年までとルール変更を行なっているものの、ルール変更前に獲得した選手にこれは適応されないため、今冬までの補強には影響はない。

 また、プレミアリーグでも来夏からはUEFAのルールと同様に最長5年までとすることが議論されているものの、現時点では以前と変更がなく、今シーズンはUEFAの大会の出場権がないことから、チェルシーは来夏までに改めて帳簿を調整すれば問題がないとも考えているようだ。

 さらに、支出にばかり注目が集まっているチェルシーだが、今夏は10人以上を売却するなど、過去3回の移籍市場で2億5000万ポンド(約462億円)以上を得ることに成功している。移籍金支出と釣り合う金額ではないものの、帳簿上ではあまり関係がないという。選手を売却した際の移籍金は、残りの減価償却費を差し引いた金額がすぐに帳簿には記載されるほか、下部組織出身選手は売却費がそのまま純粋な利益として計算されることにもなる。

 このことから、新しいオーナーグループになって以降のチェルシーの推定減価償却費は1億5720万ポンド(約290億円)となる一方で、同期間に選手売却によって記録される会計上の利益は1億4960万ポンド(約276億円)と現時点ではほぼ相殺されている状態であり、FFPには違反していないと見られている。

 さらに、選手の入れ替えを多く行なったことで、新しいオーナーグループは前政権のロシア人実業家のロマン・アブラモヴィッチ氏が所有していた時代から選手の給与体系を改善することにも成功したという。

 前政権では選手の基本給は市場価値を大幅に上回り、チャンピオンズリーグ(CL)出場などの成果に基づくインセンティブはほとんどなかった模様。この状態を改善させるために新しいオーナーグループは年齢が上がると比較的高額な週給が必要となることから、一部例外を含めながら、基本的には23歳以下の選手を獲得する方針に変更し、手頃な価格で始まる基本給な一方で、優秀な成績を残した選手たちは昇給となる仕組みを構築したようだ。

 これにより、クラブ全体の給与総額が減り数千万ポンドの支出を削減できたほか、前政権時代に獲得したベルギー代表FWロメル・ルカクやモロッコ代表FWハキム・ツィエクらのように高額な給料により移籍先が見つからない事態を避けることにも繋がることが期待されている。

 なお、チェルシーの方針にはリスクがないわけではなく、獲得した若手選手たちが成長しなかった場合には大きな損失となる可能性もある。それでも、新しいオーナーグループは世界各地から才能発掘と育成に優れた優秀な人材を上層部に招へいしていることから、成功が失敗を上回るように補強する選手を選定できていることも指摘している。

 このように1905年に設立された歴史のあるチェルシーが、新しいオーナーグループによってモナコやライプツィヒ、ブライトンが採用しているようなクラブモデルへと大きく転身を果たした。これほどの規模と優勝経験のあるクラブがここまでの大改革を実施したことがなく、若手選手たちが多くを占めるチームでプレミアリーグやチャンピオンズリーグ(CL)で優勝できるかは未知の世界となっている。そのため、この大改革が成功するのか、今後のチェルシーにはさらなる注目が集まりそうだ。

サッカーキング

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