F1技術解説:ハンガリーGPでタイヤの摩耗以上にブレーキ加熱に苦しんでいたメルセデス

2019年8月21日(水)12時6分 AUTOSPORT web

 F1第12戦ハンガリーGPでメルセデスが二度目のピットストップに向かったのは、言うまでもなくレッドブル・ホンダに勝つためにその選択肢しかなかったからだった。しかしその伏線としては、ブレーキディスクのオーバーヒートがあった。


「ハードタイヤに履き替えてからのルイス(・ハミルトン)のペースはマックス(・フェルスタッペン)よりはるかに良く、首位を奪い返すのは時間の問題だった」と、トト・ウォルフ代表は当時の状況を語る。


「ところがブレーキが限界まで加熱してしまい、ハードタイヤで走り続けてもこれ以上のペースは無理だった。それでミディアムタイヤに履き替えて、レース終盤に抜き返す可能性に賭けたんだ」


 タイヤの摩耗やエンジンのオーバーヒート以上に、カーボンディスクのオーバーヒートを、メルセデス技術陣は心配していた。それはハンガリーGP週末を通じての懸案で、決勝レース当日になっても解消されることはなかった。

メルセデスのブレーキダクトの開口部(左:旧仕様、右:新仕様)


 ちなみにメルセデスは前戦ドイツGPで、ブレーキダクトの開口部を大きく広げる改良を加えている(黄色矢印参照)。にもかかわらず、改善効果はなかったことになる。


 それは、なぜか。細部を観察すると明らかだが、この開口部はディスクの冷却よりもむしろフロントタイヤの回転で生じる乱流を、できるだけ抑えることが目的だったようだ。


 なのでディスクのオーバーヒートをこれ以上悪化させないためには、ドライバーの走り方に期待するしかなかった。その間の事情を、ハミルトンはこう説明している。


「週末ずっと、僕らはこの問題に苦しめられていた。セッティングやブレーキバランス調整でなんとかしようとしたけど、ほとんど改善は見られなかった」


「あとは運転の仕方を変えることで、温度を下げるしかなかった。具体的には、減速時間をできるだけ短くする。それだけだった。レースの少なくとも半分は、そういうブレーキングだったよ。マシンバランスにも少なからぬ影響があって、その状態でマックスを追い上げるのは決して簡単じゃなかった。だからこそ、最高の達成感を感じたわけだけどね」


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