「89分からの逆転劇」…ブンデスリーガ史に残る劇的な“カムバック”を振り返る

2022年8月24日(水)15時59分 サッカーキング

劇的な展開となったドルトムントとブレーメンの一戦 [写真]=Getty Images

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 第3節のブンデスリーガでは新たな記録が誕生した。今月20日に行われたドルトムント対ブレーメンで、0−2とリードを奪われて敗色濃厚となったアウェイのブレーメンが、89分から3ゴールを奪って逆転勝利を収めたのである。

 途中出場のイングランドU−21代表DFリー・ブキャナンが、89分に左足アウトサイドでブンデスリーガ自身初ゴールを決めたときは単なる慰めの1点に思えた。だが90+3分、今度はMFニクラス・シュミットがクロスを頭で合わせてブレーメンが「2−2」の同点に追いついて見せたのだ。そして90+5分、こちらも途中出場のFWオリヴァー・バークが裏に抜け出して右足で豪快なシュートを叩き込み、ブレーメンが逆転に成功。交代出場の3名が6分間でそれぞれ1点ずつ決めてチームを逆転勝利に導いたのだ。



 今年で59年目となるブンデスリーガの歴史において、89分まで2点差でリードされていたチームが逆転勝利を収めるのは初めてのこと。もちろんブレーメンが89分から3得点するのもクラブ史上初の快挙だ。

 決勝ゴールのバークに関しては2試合連続での大仕事。第2節のシュトゥットガルト戦では1−2とリードを許した状況で投入されて90分に同点ゴールを決めていたのだ。2戦連続で終了間際にネットを揺らしたバークは「ベンチスタートが好きとは言えないけど、こうやって途中出場からゴールを決めてチームを勝利に導けるなら悪くないね」と試合後に語った。スコットランド人ストライカーは、今季ここまで3試合に途中出場し、シュート2本で2ゴールという「決定率100%」を発揮している!

 さて、こんな劇的な“カムバック”は滅多に見られないと思うが、ブンデスリーガでは過去にもドラマチックな“カムバック劇”があったので、それをいくつか紹介しよう。

■ドルトムント4−4シャルケ(2017年11月25日)

 ドイツで最も熾烈なライバル関係にあるドルトムントとシャルケによる“ルールダービー”は、時に思いもよらない展開を演出する。それが5年前のジグナル・イドゥナ・パルクでの一戦だ。ホームのドルトムントは当時エースのピエール・エメリク・オーバメヤンが先制ゴールを決めると、続いて敵のオウンゴールでリードを広げ、さらにマリオ・ゲッツェとラファエル・ゲレイロまでネットを揺らし、気づけば開始25分間で「4−0」とリードしていた。

 誰もがホームチームの勝利を確信するなか、61分にギド・ブルクシュタラーのゴールでシャルケが1点を返す。それでも残り30分で3点のリードを奪っていたドルトムントだったが、65分に2点目を奪われると、72分にFWオーバメヤンがこの日2枚目のイエローを貰って退場になり、徐々に雲行きが怪しくなる。すると急に息を吹き返したシャルケが、86分にMFダニエル・カリジューリのゴールで1点差まで詰め寄った。それでもドルトムントが逃げ切るかに思われた93分、CKからDFナウドが豪快なヘディングシュートを叩き込んで「4−4」のドロー決着。ルールダービーが「全てのダービーの母」と呼ばれる所以を垣間見たゲームだ。

■ボーフム5−6バイエルン(1976年9月18日)

 ブンデスリーガの歴史において4点差のリードを守り切れなかった試合は2つだけ。前述のルールダービーと、もう1つがこの試合だ。前年の1975−76シーズンにチャンピオンズカップを制していた欧州王者バイエルンは、フランツ・ベッケンバウアー、カール・ハインツ・ルンメニゲ、ゲルト・ミュラーといったドイツ史上最高のタレントを揃えてボーフムの本拠地に乗り込んだ。大方の予想ではバイエルンが勝つはずだったが、前半のうちに前年度14位のボーフムが3点を奪うと、後半に入ってもゴールを加えて「4−0」とリードしたのだ。

 だが、そこから名門バイエルンが“ゲルマン魂”を発揮する。55分にルンメニゲのゴールで1点を返すと、ハンス・ゲオルク・シュヴァルツェンベック、さらにミュラーの2得点などを加え、19分間で4ゴールを奪ってあっさりと追いついて見せたのだ。さらに、後にクラブの会長を任されるウリ・ヘーネスがゴールを決めてバイエルンが「4−5」の逆転に成功。だが、それだけでは終わらず、80分にボーフムが意地のゴールで「5−5」に追いつく。それでも終了間際の89分、ヘーネスがこの日2点目を奪って、ようやく勝負あり。バイエルンが「5−6」で11ゴールも飛び交う乱打戦を制した。

 ちなみにボーフムとバイエルンの対戦は「ハイスコア」が期待できるカードとなっており、昨シーズンは「バイエルン7−0ボーフム」と「ボーフム4−2バイエルン」。そして今シーズン第3節の対戦も「ボーフム0−7バイエルン」という“ゴールショー”となった。

■カイザースラウテルン7−4バイエルン(1973年10月20日)

 幾度となく逆転劇を演じてきたバイエルンだが、反対に大逆転で苦汁をなめさせられたこともある。それが1973年のこの一戦だ。敵地で早々にゴールを奪ったバイエルンは、ゲルト・ミュラーの2得点などで57分を迎えた時点では「1−4」とリードしていた。しかし、そこから立て続けに失点を重ねて追いつかれると、その日2得点していたバイエルンのベルント・ゲルスドルフが退場になって数的不利に。そうなるとカイザースラウテルンの勢いを止めることはできず、結局、残り30分間で6ゴールも奪われて「7−4」の大敗を喫するのだった。

 ちなみに、最終的に優勝することになる当時のバイエルンは大味な試合が多く、同じシーズンにシャルケを相手に3点ビハインドから追いついて「5−5」の激闘を演じるなど、乱打戦で観客を沸かせていた。

■その他

 今季のドルトムント2−3ブレーメンを含め、ブンデスリーガでは「3点差」を跳ね返したゲームが43試合あり、2019−20シーズンにはそんな試合が2度も見られた。第12節には、最下位で降格することになるパーダーボルンが敵地でドルトムント相手に大健闘。前半5分に幸先よく先制すると、FWストレリ・マンバの2ゴールなどで前半だけで3点をリード。しかし、実力で勝るドルトムントも諦めておらず、後半立ち上がりにジェイドン・サンチョのゴールで1点を返すと、84分に1点差まで追いつき、92分に主将マルコ・ロイスが同点ゴールを奪って「3−3」の引き分けに持ち込んだ。

 同シーズンの第24節も似たような展開に。ヘルタ・ベルリンをホームに迎えたフォルトゥナ・デュッセルドルフが前半だけで3点を奪って勝負あり…かに思えたが、後半途中からヘルタが息を吹き返す。マテウス・クーニャやクシシュトフ・ピョンテクなどがネットを揺らし、64分からわずか11分間で3点を奪って同点に持ち込んだ。

 短時間で3点差を追いつたと言えば、1994年10月1日のカールスルーエ対カイザースラウテルンである。前半のうちに3失点を喫したホームのカールスルーエが、74分からわずか5分間で3点を決めて「3−3」に追いついて見せたのだ。

 さてさて、昨シーズンの欧州5大リーグで最多となる1試合平均「3.11ゴール」が生まれたブンデスリーガでは、今シーズンもまだまだ劇的な“カムバック”が期待できそうだ!

(記事/Footmedia)

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