ブルーノ・スペングラーに聞くBMW M4 GT3エボモデルの改良点、そしてスーパーGT活動

2023年9月15日(金)14時53分 AUTOSPORT web

 BMWワークスドライバーであり、今シーズンはBMW M Team StudieからスーパーGT GT300クラスに挑戦しているブルーノ・スペングラー。並行してイタリアGT選手権にも参戦しており、多忙なシーズンを送っている。また今季はM4 GT3のエボリューションパッケージの開発テストドライバーの役割も担っているが、開発テストが行われていたスパ・フランコルシャンで、スペングラーにテストの様子とスーパーGTでの活動について聞いた。


──M4 GT3のエボパッケージの2024年のホモロゲ取得、2025年デビューを目標に、精力的にテストを重ねていると思いますが、高いポテンシャルが求められるスパでのテストで、ドライバーとしてはどんな感触を得ていますか?
ブルーノ・スペングラー(以下BS):
今日は典型的なスパウェザーの日で、早朝から雨が降り続けてコンディションが非常に厳しかった。気温は一日中16度前後と低かったが、湿度は90%を超えてまるで日本のような湿気だったね。しかし、今までのテストでは雨が降ることがほとんどなかったからね。ウエットコンディションのテストが皆無に近かっただけに、厳しい天候の中でもウエットのテストができて、有意義な時間だったよ。


 特にドライバビリティやタイヤの消耗に関しての改善を目標としているエボパッケージだが、いまのところ、まだ特にタイヤの消耗の関しての課題はポジティブに少しずつ向上している。スパウェザーの特徴を活かして、この3日間のテストでさまざまなコンディション下でテスト走行を重ねられたので、非常に有意義だった。


──あなたはこのポジションにはいつから携わっていたのですか?
BS:
開発段階から参加している。このエボパッケージの開発ドライバーは、イタリアGTに一緒に参戦するイェンス・クリングマンと僕、そして今回のスパのテストに加わったアウグスト・ファーフスの3名だ。


 僕はレーシングドライバーとしての活動はもちろん、DTMに参戦していた頃から開発ドライバーも務めており、そのプロセスを自らすべて体験できることにやりがいと充実を感じている。そして、長年培ったレーシングドライバーとしての数多くの経験を、より良いマシン作りに活かせることを光栄に思っているよ。


 このエボパッケージの開発テストチームの素晴らしいところは、いつも同じチーム(RMG)、同じエンジニアと仕事をする環境が作られていることだ。それによって意見交換がしやすく、素晴らしいチームワーク=よいクルマへのカギとなっていると実感している。

スパ・フランコルシャンで行われた開発テストでのBMW M4 GT3
スパ・フランコルシャンで行われた開発テストでのBMW M4 GT3


■エボモデルの改良点はドライバビリティとタイヤ消耗


──このエボパッケージは2024年にホモロゲ取得を目指すということですが、現在の開発状況はどこまで進んでいるのでしょうか?
BS:
大きな改善点はすでにだいたい終わっている。いまはディテールをテストして改善改良を試みている段階だ。いちばん大きな改善、改良のポイントはやはりドライバリティ。ここはずいぶん良くなってきていると感じる。それとタイヤの消耗の軽減。そして、いまディテールをひとつずつチェックし、どこをどれだけ改善、改良すべきなのか、探っているところだ。


──テストには2台の車両が使用されていますね。ワークスカラーのM4 GT3はフロントバンパーとリヤバンパー、そしてサイドミラーにカモフラージュのラッピングが施されていますが、これとBMWジュニアチームのM4 GT3にはカモフラージュのラッピングがありません。2台の違いはなんですか?
BS:
このカモフラージュ模様は量販車の開発車両に使用される模様とまったく同じなんだ。現時点ではこのカモフラージュのラッピング部分がどう変わるのかは、僕の口からは述べられないが、サイドミラーを例に挙げると、現行モデルとは形状が変わっているのが見て分かると思う。


 ジュニアチームの車両は現行モデルなので、ソフトウェアの開発やトラクションコントロール、ABSなどのテストもしており、エボパッケージの開発車両との比較もしやすいし、別々の課題もこなせるので、2台用意されているのは、ドライバーとしても助かる。


 スパの1日目にはカモフラージュのエボ車両をドライブし、今日の3日目のテストは一日中ジュニアチームのマシンをドライブしたんだ。

スパ・フランコルシャンで行われた開発テストでのBMW M4 GT3
スパ・フランコルシャンで行われた開発テストでのBMW M4 GT3


──今後はどれくらいのテストが予定されているのですか?
BS:
2024年の春にホモロゲを取得する予定なので、それまでにさまざまなサーキットでテストを重ねて煮詰めていく予定だ。


■来年もぜひスーパーGTで乗せて欲しいと思っている


──ところで、今シーズンはスーパーGTに参戦していますが、日本をエンジョイしていますか?
BS:
とんでもなくエンジョイしているよ! まだ来年のことなんてまったく決まっていないけど、すでにBMW M Team Studie のBOBさん(鈴木康昭監督)には、来年もぜひ僕をスーパーGTに乗せて欲しいとお願いしているんだ。大好きな東京をはじめ、日本の美しい風景、礼儀正しい人々、僕を歓迎してくれる優しいファン、コンペティションあふれるエキサイトなスーパーGT。そして、チームメイトのセイジ(荒聖治)との仕事もとても楽しく、自分の居場所はここだと実感している。その環境下にいられることにとても満足し、感謝しているんだ。


──BMWではLMDhのワークスプロジェクトが精力的に行われていますが、あなたもそちらをドライブすることを望んでいますか? また、その可能性はありますか?
BS:
プロのレーシングドライバーなら、恐らく乗りたくない人はいないと思うし、とても興味はある。だけど、BMWのワークスドライバーのラインアップを見る限り、僕には恐らくチャンスは巡ってこないだろうと感じている。


 一方でイタリアGTやスーパーGTは僕がいま最もドライブしたいシリーズであり、とてもやり甲斐を感じているので、来季も継続してGTプログラムに集中することになるだろう。この両シリーズともに今季はチャンピオン争いをしている良いポジションにいるだけに、ダブルでチャンピオンになれるように後半戦をしっかり戦っていたい。数多くの日本のファンとサーキットで会えるのを楽しみにしているよ。


 今、ひとり息子はまだ2歳で、手がかかる年齢だし、ロングフライトもあるから、スーパーGTのレースに連れていけないんだけど、もう少し成長したら、僕の大好きな日本とチームを是非妻と息子にも見せてあげたいと願っているよ。

2023スーパーGT第5戦鈴鹿 Studie BMW M4(荒聖治/ブルーノ・スペングラー)
今季はイタリアGTにも参戦しているブルーノ・スペングラー

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