スーパーGT:大不振くぐり抜けたBRZの“紙一重”。「不安はゼロじゃなかった」

2018年9月22日(土)7時12分 AUTOSPORT web

「SUGOはすごく好きです」


ポールポジション会見での山内英輝の言葉に、GT500のポールシッターとして同席していた山本尚貴が、「ちゃんと言わないと通じてないと思うよ」と声をかける。「SUGOはSUGO〜く好きです」と山内が言い直すと、会見場は記者たちの笑いに包まれた。


 井口卓人と山内は、取材陣やファンにいつも笑顔で応対している。しかし今季のふたりはここまで、沈んだ顔を見せることも多かった。第3戦鈴鹿では3位表彰台を得ているが、5戦中で完走できたのは2回だけ、3回はマシントラブルでリタイアを喫していた。


 SUBARU BRZ R&D SPORTのエンジンは、GT300車両のなかで最小排気量となる2リッター。それをシングルターボの高い過給圧で、大排気量のGT3勢に挑んでいる。開発、進化はつねに続けているが、すでに馬力は頭打ち状態。燃焼効率の向上やフリクションロスの低減、高い過給圧のために燃費が悪く、給油時間を少しでも短縮しようと空燃比を調整したりと、わずかな伸び代に期待を込める。


 しかし、ベンチテストではいい結果が出ていても、負荷が大きくなる実戦ではトラブルに泣かされてきた。そこまで攻めないといまのGT300では戦えない。それほどに、BRZの戦いは紙一重だ。


 第6戦富士後、SUGOとオートポリスでのテストで、自信はつかんでいた。いずれもラップタイムは速い。オートポリスのテスト初日にはトラブルによりエンジンを載せ換えたが、2日目には300kmを走破した。第6戦SUGOでは、公式練習、Q1、Q2のすべてでトップタイム。流れはいい。


 決勝も、スタートから後続を引き離していく。タイミングモニターで徐々に広がる後続とのギャップを見る限り、余裕が感じられた。しかし、ステアリングを握っていた山内は、ピックアップによってタイヤが振動するなど、不安がよぎることもあったという。


 無線では、早い段階で「タイヤがきつい」という情報もチームに入っていた。硬めのタイヤで第2スティントを担当した井口のときには、後続に大差をつけていた状態でセーフティーカーが入りマージンを失う。

SUGOは2014年、山内がSLS AMGで自身初のPPを獲得した地。その速さが認められてスバル入りしたともいえる。そしてQ2を任され、結果を残した。


 井口はそれまでペースをコントロールしており、プッシュすれば抜かれない自信はあったというが、やはりトラブルの不安はあったそうだ。ピットで見守る渋谷真総監督もまた、「安心はしていたけど、不安はゼロじゃなかった」と話す。


 結果は、ファステストラップも刻む完勝。優勝会見で井口と山内はともに「開発陣、メカニックの努力、懲りずに応援してくれたファンのみんなに恩返しできた」と語った。


 そして昨年子供を授かった井口は、「いつもパパは暗い顔して帰ってくるって思っているかもしれないので、笑顔で帰れてホッとしている」。「あらためて、やっぱり僕はSUGOがSUGO〜く好き」と山内。

次戦のオートポリスは井口とBRZが得意とするコース。2連勝すればタイトルも見えてくる。「タイトル、まだ諦めませんよ」とは渋谷総監督だ


 ふたりがピットに戻ると、チームスタッフとファンが待ちわびていた。その全員での記念撮影、写真に収まるみんなが今季一番の笑顔を見せた。「速くて強いBRZが戻ってきた」。そう確信できた瞬間だった。



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