ついに“プレーオフ”ドライバーが制圧。チェイス・エリオットが今季最多5勝目/NASCAR第31戦

2022年10月4日(火)15時53分 AUTOSPORT web

 10月1〜2日の週末に、アメリカはアラバマ州タラデガ・スーパースピードウェイで開催された2022年NASCARカップシリーズ第31戦、プレーオフ“ラウンド・オブ12”の2戦目ともなる『イェラウッド500』は、ラストラップ・バトルでライアン・ブレイニー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)を退けたチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、今季最多となるシーズン5勝目を獲得。


 プレーオフ突入からここまでの4戦すべてで“非進出ドライバー”が勝利を挙げる前例のない展開を打ち破ったエリオットは、自身にとっても前戦のクラッシュで失ったポイントリーダーの座をわずか1戦で取り返す、起死回生のトップチェッカーとなった。


 このタラデガでの週末を前に、パドックではいくつかのトピックが飛び交い、ワンメイクタイヤのバーストによるクラッシュ多発、アクシデント満載のレースとなった前戦テキサスを受け、デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)に対し遺恨を残す動きをみせたとして、ウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)に5万ドル(約720万円)の罰金と25ポイントのペナルティが課された。


 また、テキサスの97周目にタイヤ不具合による“ハードヒット”を強いられたアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)は、脳震盪のような症状に対処するためこの週末の欠場を発表。同様の症状でピットウォールに激突し、車両前方を大破させていたコディ・ウェア(リック・ウェア・レーシング/フォード・マスタング)は足首の骨折と診断されたものの、タラデガへの「強行出場」を宣言した。


 主にタイヤにまつわる安全性懸念から、パドックでは新規定車両“Next-Gen”の対衝撃性に対する見直しの機運も高まるなか、主催のNASCARは週明けにもオハイオ州の衝突試験施設で、リアバンパーの更新に関するクラッシュテストを実施すると表明した。


 こうして始まった週末は、各陣営ともプラクティスを実施せず“ぶっつけ本番”で予選セッションに臨むと、今季カップ戦キャリア初ポールから通算獲得数を伸ばして来たクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が4回目のポールポジションを奪取。ベル自身も、前戦では序盤からタイヤ信頼性の犠牲になっていただけに、こちらも雪辱のポールウイナーとなった。


 迎えた決勝レースは序盤の25周目で早くも“ビッグワン”発生となり、ターン1のハイラインでリッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)にプッシュされたオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がルーズに。これで後続は混乱に陥り、カート・ブッシュからクルマを預かるタイ・ギブス(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)や、ボウマンから48号車のアリー・シボレーを託されたノア・グラグソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)ら、都合8台が巻き込まれる。

欠場のアレックス・ボウマン(Hendrick Motorsports/シボレー・カマロ)に代わり、Xfinityで破竹の連勝劇を見せたノア・グラグソンが起用された
迎えた決勝レースは序盤の25周目で早くも“ビッグワン”発生。そのグラグソンもここで巻き添えに
ポールシッターのクリストファー・ベル(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリ)は、ピットエントリーで姿勢を乱し、あわや同士討ちの場面も
デニー・ハムリン(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリ)やエリオットを最上段から“捲った”ブレイニーがステージ1を制覇


■勝利への“後押し”に感謝の言葉を述べたエリオット


 その後、ハムリンやエリオットを最上段から捲ったブレイニーがステージ1を制し、ステージ2では僚友のディフェンディングチャンピオン、カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を利用したエリオットが勝利を奪ってやり返すと、迎えたファイナルステージ。 


 エリック・ジョーンズ(ペティGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)が隊列を率いて残り7周に差し掛かったところで、ダニエル・ヘムリック(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)がピットレーンで止まり、この日6回目最後のコーションとなる。


 残り3周でリスタートを迎えると、ブレイニーと元デイトナ500勝者マイケル・マクダウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)の背後から上段に移ったエリオットが、リードラップを奪われていたジョーンズからの“後押し”を受けて伸び、最終ラップのミドルレーンから0.046秒差の逆転劇で、キャリア通算18勝目を飾る結果となった。


「最後の数周はワイルドで、典型的なスーパースピードウェイのエンディングだったね。ボトムラインに居ることに関してはこだわっていなかったし、幸いターン2でスイッチしてエリックの前にスライドすることができた。彼のお陰もあってライアンの前へ出ることができたよ。勝つのがとても難しいトラックだし、今日のような瞬間を本当に大切にしなければならないね!」と、やはり周囲への感謝を語った26歳のエリオット。


 一方、ここまで31周のリードラップを記録して、最後はボトムからジョーンズをパスしていたブレイニーは、勝利のシナリオについて「考えてみたんだ」と、リードのために別の動きをする必要があったかどうかの可能性を明かした。


「(自身より上段の)セカンドレーンは、終盤において間違いなく最速だった。もちろん(エリオットをブロックしに)クルマを投げる可能性も考えたが、後ろにフォードのチームメイトがいない状態でチェンジすると(車列が)分断する可能性が非常に高くなるんだ」と続けたブレイニー。


「僕はチェイスを信頼しているけど、もし仮にそう(上段へ移行)した場合、さらに彼がスリーワイドを選択して僕を置き去りにしないとも限らないし、そこまでは信用できないからね(笑)。だからマイケル(・マクダウェル)の前に留まることにしたんだ」


「マイケルはリスタート後に僕をプッシュしてくれたけど、それはちょっとばかり遅すぎたようだ……。全体的に悪い日ではないけれど、おそらく頭の中では『こんな筋書きがあったはずじゃ』と、少なくとも5パターンぐらいは再生され続けてるよ」


 併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズの第28戦は、大ベテランのA.J.アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)が0.015秒差の“フォトフィニッシュ”で今季4勝目をマーク。


 さらにNASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズの第21戦も、最後の最後でアクシデントが発生し、その時点で「誰がラップリーダーだったか」をまさにビデオ検証する事態となり、最終的にマット・ディベネデット(ラックリーWAR/シボレー・シルバラードRST)が念願のシリーズ初優勝。服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズは、16号車タイラー・アンクラムが10位、チェイス・パーディの61号車が7位と、今季初の“ダブルトップ10”を決めている。

最終ラップの”ミドル”レーンから0.046秒差の逆転劇を演じたエリオットが、キャリア通算18勝目を飾る結果となった
「全体的に悪い日ではないけれど、おそらく頭の中では『こんな筋書きがあったはずじゃ』と、少なくとも5パターンぐらいは再生され続けてるよ」と2位に敗れたブレイニー
NASCAR Xfinity Seriesの第28戦は、大ベテランのA.J.アルメンディンガー(Kaulig Racing/シボレー・カマロ)が0.015秒差の”フォトフィニッシュ”で今季4勝目をマーク
NASCAR Camping World Truck Seriesの第21戦は、マット・ディベネデット(Rackley WAR/シボレー・シルバラードRST)が念願のシリーズ初優勝を手にした

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