【コラム】もう一度世界の頂点へ…“無敵艦隊”を復活させた名将・ロペテギ

2017年10月12日(木)13時37分 サッカーキング

2016年からスペイン代表を率いるロペテギ監督 [写真]=Getty Images

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 フレン・ロペテギ監督が、称賛されている。

 まず戦績だ。スペイン代表は6日に行われたアルバニア代表戦に勝利し、ロシアで開催される2018 FIFAワールドカップ本大会の出場を決めた。イタリア代表と同組の欧州予選グループGで10試合9勝1分け無敗・36得点3失点と文句のつけようがない1位通過だった。

 結果を出しながら、世代交代も成功させた。

 カッコ内はスペイン紙『アス』に掲載されたW杯予選10試合における出場時間だ。セルヒオ・ブスケツ(810分)、ダビド・シルバ(726分)、セルヒオ・ラモス(709分)、ジェラール・ピケ(599分)と10年南アフリカW杯、12年の欧州選手権優勝メンバーはチームの主軸であり出場時間も多いが、彼らと同様にダビド・デ・ヘア(810分)、コケ(566分)、チアゴ・アルカンタラ(474分)、ダニエル・カルバハル(450分)、イスコ(400分)とロペテギ監督とともに13年のU−21欧州選手権を制覇した選手たちも予選の過程でA代表の顔となっていた。予選で起用された34選手の内10人は、13年のU−21欧州選手権優勝メンバーだった。世代別代表で仕事をした勝手知ったる選手たちをA代表に吸い上げ、メジャー大会制覇の経験があるベテランとこれ以上ないほど見事な形で融合させた。

 スペインのアイデンティティも復活させた。

 08年の欧州選手権でルイス・アラゴネス監督は、メジャータイトルを獲得したことで、一つのスペインサッカーのスタイル、信条を確立させた。身体能力ではなく技術にプライオリティを置き、シャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタを筆頭に高いスキルを持つ選手を並べることでボールポゼッションを高め、試合を制圧した。08年欧州選手権後にチームを引き継いだビセンテ・デル・ボスケ監督もそのスタイルをなぞりながらも進化させ、W杯制覇と欧州選手権連覇をなし遂げた。

 当然ながら成功はずっとは続かない。また成功が大きければ大きいほど、反動も大きい。スペインもそうだった。その後のブラジルW杯、欧州選手権ではスペインらしいパフォーマンスを発揮できず。特にブラジル大会はグループリーグ2戦目で敗退が決まるという悲惨な結果だった。

 ロペテギ監督は成功の反動に苦しみ、低迷したスペインをW杯優勝が狙えるチームへと立て直した。と同時にアイデンティティも取り戻した。今の代表チームの中盤には世界中の誰も羨むような人材が揃い、そして彼らは素晴らしいパフォーマンスを示している。ブスケツ、コケ、シルバ、チアゴらが対戦相手の強度の高いプレスに屈しずにパスを回し、試合の主導権を握るとイスコがそのタレントで違いを生み出す。決定機を演出し、アルバロ・モラタやジエゴ・コスタらが決めた。

 予選ではホームでイタリア代表に自分たちのスタイルを貫き、3−0と完勝した。スペインがW杯優勝候補に値することを実証したゲームだった。

「セルヒオ・ラモス、ピケのバックアッパーが不足している」
「ジエゴ・コスタは間に合うのか」
「モラタとジエゴ・コスタのどちらを本大会では起用するのか」

 このように不安や論点もある。その一方で、ジェラール・デウロフェウ、マルコ・アセンシオ、サウール・ニゲス、ミケル・オヤルサバルといったイスコらよりもさらに若い世代もA代表に招集され、結果を残している。不安よりも希望が勝っているのだ。

 ロペテギ監督が就任した際、ポルトなどクラブでは大きな戦績を残せかなかった彼に多くの疑念が向けられたが、今では誰もこの代表監督を認め、大きな期待を抱いている。

文=座間健司

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