完全EV化の氷上戦『アンドロス・トロフィー』開幕。第1戦にはセバスチャン・ローブもスポット参戦

2019年12月12日(木)17時42分 AUTOSPORT web

 2019/20年シリーズから完全電動化されたフランスが誇る氷上のラリークロス・シリーズ『アンドロス・トロフィー』のシリーズ開幕戦が12月7〜8日に開催され、完全電動化された新時代の土曜オープニングラウンドをヤン・エルラシェール(デュペッセイAS01/イバン・ミューラー・レーシング)が、続く日曜のラウンドはオーレリアン・パニス(エネディス・アウディA1/セインテロック・レーシング)が制し、WTCR世界ツーリングカー・カップ参戦組がEV時代の緒戦を制した。


 これまで内燃機関搭載の4WS(四輪操舵)機構を持つオリジナルのアイス・レーシング・マシンを使用したエリート・プロクラスがトップカテゴリーに据えられてきたアンドロス・トロフィーは、時代の流れを受け2010/11年シーズンから“アンドロス・エレクトリック”という電動マシンクラスを新設し、段階的にEV化の方向性を探ってきた。


 そして、この2019/20年シリーズから上位2クラスも完全電動化され、完全EVシリーズとして争われることになった。


 新たに“e-Trophee Andros(アンドロス・e-トロフィー)”へと生まれ変わったシリーズでは、これまでのV6エンジン搭載時代と同様に四輪駆動、四輪ステアの構造は維持しつつ、エキサゴン・エンジニアリングによって開発されたワンメイクシャシー“アンドロス・スポーツ”を採用。350馬力を発生する2基の電気モーターを搭載したEV車両クラスが頂点に据えられた。


 このアンドロス・スポーツ01を使うエリート・プロクラスの勝敗は、予選スーパーポール、2回のクオリファイ・ヒート、そして6周で争われるスーパーフィナーレの順位に応じた総合獲得ポイントで勝者が決まる仕組みが採用され、同じフォーマットで争われる土曜、日曜それぞれの最多得点者がウイナーとなる。


 そのため標準的なラリークロス競技のように決勝ヒートでトップチェッカーを受けたドライバーが週末全体のウイナーとなるわけではない。


 迎えた開幕戦土曜日では、叔父イバン・ミューラーのチームからエントリーしたエルラシェールが共通ボディキットのアンドロス・スポーツを採用したマシンで65点を稼ぎ出し、開幕初日の主役となった。


 フランス・アルプス地方で世界的な知名度を誇るヴァル・トランスのスキーリゾートに設けられたトラックで、初日の予選ポールタイムを叩き出したエルラシェールは、続く2回の予選レースを1位と6位でフィニッシュする。

Sebastien Loeb Racingとしてエントリーするも、代表のセバスチャン・ローブ(左)は開幕と最終戦のみのエントリーに
共通ボディキットの”Andros Sport”を採用したマシンで65点を稼ぎ出し、開幕初日の主役となったヤン・エルラシェール
WTCRでもともに戦う叔父、イバン・ミューラー”代表”(左)とともに表彰台に上がった


 この結果、スーパーフィナーレにはエルラシェールのほか、エリート・プロクラス4連覇中のジャン-バティスト・デュブール(ルノーZOE/DAレーシング)、元F1ドライバーでアイスレーシング界の盟主でもあるオリビエ・パニス(プチ・フォレスティアAS01/SLR)が進出。


 そのほか、オリビエの息子で2017/18年のアンドロス・エレクトリック王者のオーレリアン・パニス、パニスのチームメイトである2019年WorldRX世界ラリークロス選手権2位のアンドレアス・バッケルド(アウディA1/セインテロック・レーシング)、2018/19年のWEC世界耐久選手権でレベリオンに所属したナタナエル・ベルトン(プジョー208/シルヴィアン・プーシャー・コンペティション)もスーパーフィナーレへ駒を進めた。


 このスーパーフィナーレでも首位から逃げを決めたエルラシェールと対照的に、レース中盤には2〜3位を争っていたデュブールとオリビエ・パニスが接触。父オリビエがリタイヤに追い込まれたことで息子のオーレリアンが2番手に浮上し、そのままエルラシェール、オーレリアン、デュブールの順でチェッカーを受けた。


 土曜日のレースで優勝したエルラシェールは3位に入ったデュプールに対し、5ポイント差をつけてEV時代初の選手権首位に立ったが、続く日曜に活躍したのは、アウディA1のシルエットカーをドライブするオーレリアンと、前日のスーパーフィナーレ進出を逃していたWRC世界ラリー選手権9冠のセバスチャン・ローブ(SLR AS01/SLR)、そしてABBフォーミュラE選手権元レギュラーのニコラ・プロスト(ルノーZOE/DAレーシング)だった。


 今季の全5戦中、開幕と最終戦の2ラウンドにエントリーする計画のローブは、前日9位でスーパーフィナーレ進出を逃したうっぷんを晴らすかのようなアタックをみせ、スーパーポール・セッションで最速タイムを記録。


 一方、前日同7位で惜しくもフィナーレに進めなかったプロストも気を吐き、パニス、デュブール、エルラシェール、そしてバッケルドとの最終決戦に挑んだ。


 この最終ヒートで優位に立ったのは、午前の予選ヒート2回とスーパーポールで最多得点を獲得したオーレリアンで、最前列からスタートしたスーパーフィナーレでは前日エルラシェールが見せた走りを再現するかのようにトップを堅持してフィニッシュ。


 これにより67点を稼ぎ出し、オープニングラップでプロストを出し抜いて2位に上がり、最後まで追いすがってきたローブを抑えきって日曜のウイナーに輝いた。


 冬の風物詩として2カ月の短期決戦によって全5戦が争われるアンドロス・e-トロフィー。続く第2戦はピレネー山脈の麓に位置するアンドラ公国で、12月20〜21日に開催される。

ワークス・ルノーで参戦のニコラ・プロストは土曜7位で、ファイナル進出を惜しくも逃していた
日曜に活躍を演じたオーレリアン・パニスが、土曜の成績も加えて最初の選手権リーダーに立った
日曜はセバスチャン・ローブ(左)、ニコラ・プロスト(右)も並び、両日とも実力者ぞろいの表彰台となった




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