【技術特集】ホンダPUは、なぜあれほどに壊れ続けたのか(5):振動問題でライバルが実施していた対策

2017年12月29日(金)7時30分 AUTOSPORT web

 2017年のホンダ製F1パワーユニットは、まるでガラスのように脆い存在だった。フェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンは、PU由来のトラブルで計9回のリタイアに見舞われ、合計390ものグリッド降格ペナルティを科された。これほどの信頼性の低さを、いったいどう理解したらいいのだろうか。F1i.comで技術分野を担当するニコラ・カルペンティエが分析する。


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 低回転域での急激なトルク低下は、異常振動を発生させた。しかしその問題は、シャシーに組み付けて初めて顕在化した。


 ホンダはこの不具合に対する解決策を、第5戦スペインGPまで提示できなかった。その間フェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーンは異常振動を防ぐため、常識からかけ離れた回転域でのシフトチェンジを強いられた(シフト時のマクラーレン・ホンダの奇妙な音はまさにそれゆえだったわけだが、シフトアップとクラッチのバイトに特殊なシステムを採用していたマクラーレン製ギヤボックスにも、原因の一端はあった)

2017年ホンダF1の総責任者を務めていた長谷川祐介

 それにしてもなぜホンダの技術陣は、このトラブルを予見できなかったのだろう。パワーユニットが車体に搭載され、さらにギヤボックスからドライブシャフト、サスペンション、タイヤに至るまでの駆動系すべてを組み合わせた状態でのF1マシンは、テストベンチでパワーユニットが固定されている時よりはるかに剛性が低い。さらにパワーユニットの振動による予想外の共鳴も、さまざまなパーツを組み合わせることで起こり得る。


 それらを事前に予測して対策を立てるため、メルセデスやフェラーリ、レッドブル、そしてその後はルノーも、AVLと呼ばれるダイナミックベンチを導入した。ここではパワーユニットに駆動系が装着され、さらにシャシーに組み付けた状態で、テストが行われる。実走行での振動を、できるだけ忠実に再現するためだ。


 新コンセプトのパワーユニット導入を決めた際、待ちかまえる困難がいかに大きいものか、ホンダが正確に把握していなかったことは間違いない。こうしてマクラーレンとの幻想と幻滅に満ちた3年間の提携は、終焉を迎えたのだった。

最終戦アブダビGPでマクラーレンとお別れのパーティ


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