ケニアから「一夫多妻制」が消えつつある理由 / カンバ通信:第353回
2024年1月21日(日)9時0分 ロケットニュース24
「チャオスさんちのような “子供2人と両親” という家族構成は、ケニアでは一般的なのでしょうか?
現在日本では、子供は1人〜3人程度の場合が多いと思います。しかし、私の祖父母の世代では、子供が10人とかはザラだった時代もあったかと。
ケニアの都市部では、現在、そして過去の家族構成はどのような感じですか?」
うん、答えられる範囲で答えよう。
・一夫多妻制を実現できる男は……
まず。マサイ族の戦士ルカも記事に書いていたかもしれないけれど、ケニアでは一夫多妻制が認められている。
そしてそこには、妻の制限などは存在しない。夫が新しい妻を迎え入れたいとなれば、それに従うのが普通。
ただし。
マサイ族でも、カンバ族でも、ケニア人の中で一夫多妻制のルールに乗れるのは、ごくごく限られた人たちだけ。
どんな人たちが一夫多妻制を実現できるのか。
それは……
お金をたくさん持っている男性、だけだ。
なぜなら夫となる男性は、妻はもちろん、子供たち全員を経済的に養わなければならないからだ。
お金でカバーするだけではなく、しっかりと教育も受けさせなければならない。
これは非常にディフィカルトなミッションだ。
遠い昔。私たちの祖父母には、2人以上の妻がいるのが普通だった。
それはなぜか? 答えはシンプル。
彼らの時代、ケニアにはほとんど人がいなかったから、だ。
さらに当時、祖父母たちが仕事に就くのは非常に簡単だったというのもある。
つまり金を稼ぎやすかったのだ。なので子供の人数が増えてもヘッチャラだった。
たとえば妻が2人いた私の祖父母の場合だと、妻1人に対し、9人以上の子供を授かっていた。
単純計算で、妻が2人、そして子供が最低でも18人となるので、1家族21人。
しかし金を稼ぎやすい時代だったので、21人いてもなんとかなった。祖父母の時代は、そんな感じ。
一方、私の両親の時代になると話は少し変わってくる。
一夫多妻制は認められつつも、私の父は、1人の妻(つまり私の母親)としか結婚しなかった。
理由は詳しく聞いていないが、祖父母の時代よりも稼げなくなったのだと思う。
しかし子供は、男2人の女7人。私もその中に入っているが、合計9人の子供を育て上げた。わりと大変だったんじゃないかな。
そして今──。
私たちの世代は生活費が昔に比べて非常に高くなったため、だいたいの男が「妻1人」とだけ結婚している。
もちろん、両親が共働きで、経済的に余裕がある家族もいる。
彼らは良い仕事と良い暮らしを謳歌しているし、子供も2人〜4人くらいは育てる余裕があるだろう。
しかしながら、ケニアで最も多いと思われる私くらいのサラリー(中流階級)の家族だと、金銭面でも、そして教育面でも、子供2人が限度かなと思う。
それ以上の子供がいたら、きっと1人1人をケアしきれない。子供たちにも悲しい思いをさせてしまうことになる。
とはいえ、これは都市部に住む私のようなケースの場合。
家賃や生活費が安い「村(田舎)」に住む人たちは、また話が変わってくる。
彼らのマインドは、基本的に「働きたくない」。
しかし結婚はしている。
さらに子供も非常に多い。だいたい5人〜6人くらいが、田舎に住む夫婦の標準的な子供の数だと私は思う。
しかしながら、もしも彼らの生活を覗くことができたなら、容易に「食べ物が足りなくて苦しんでいる姿」を見ることができるだろう。
さらに教育に関しても、5〜6人だと十分なカバーができず(教育がおろそかになり)、結果的に子供達に悲しい思いをさせてしまう。
なので、本当に子供達の将来を考えるのであれば、そしてお金に余裕がありまくるわけではない場合は、2人くらいが限度かなと思うのだ。
ケニアの家族の稼ぎ手は、ほぼ100%が父親だ。そして家事は母親が担当。そして子供の世話をするのも母親の責任。共働きをする余裕もない。
今現在のケニアの多くの家族が直面している大きな課題は、貧困、失業、そしてHIV(エイズ)だ。
子供達の世代になったら、ケニアの家族はどうなっていくのだろうか。都市部と田舎では状況は違うけど、だいたいそんな感じかなぁ。では、クワヘリ!
執筆:チャオス(カンバ族)
超訳:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.