アメリカとドイツで起こった「ドッペルゲンガー殺人事件」が薄気味悪い… 似ているだけで殺害対象になる恐怖
2023年2月4日(土)18時0分 tocana
自分と瓜二つの人間「ドッペルゲンガー」。日本語では“歩くコピー”という意味だ。ドッペルゲンガーの特徴としては、自分の生き写しとしか思えない姿、周囲とほとんど会話をしない、自分に縁の深い場所に現れる、などが挙げられる。古今東西、目撃例は枚挙に暇がなく、リンカーンや三島由紀夫、芥川龍之介なども遭遇していたと考えられている。
また、ドッペルゲンガーに遭遇すると死ぬという噂もあるが、実際に殺人事件に発展したケースが報告されている。どうやら人を殺すのは超常現象ではなく同じ人だったようだ。
ドッペルゲンガー殺人事件:ドイツ
最近、ドイツを中心に海外で波紋を広げているのが「ドッペルゲンガー殺人事件」だ。社ラバン・Kというイラク系ドイツ人の女性が家族から身を隠すために、自分と瓜二つの人物を50回も刃物で突き刺し殺害。シャラバンの家族が本人だと誤認するよう顔は執拗に損壊されていたという。
シャラバンはInstagramを使用し、自分に似た人物を探した。当初は5人ほどその候補を見つけたものの、会うことができなかったという。その後、アルジェリア系ドイツ人のカディージャさんにシャラバンは狙いを定めた。
接触を図った方法としてInstagramで20万人のフォロワーを持つ有名ラッパーLuneからの依頼だと騙り、カディージャに接触を図った可能性が指摘されている。不審に思ったハディージャはLune本人に確認を取り、事実でないことを確認したという。ただこのことについて警察はシャラバンとの関与を確立できていないとのことだ。
いずれにしろ、シャラバンは「化粧品を提供する」という名目でカディージャとの接触に成功。交際相手のシェキールとともに車でカディージャの自宅まで迎えにいった。その後、ハイルブロンとインゴルシュタットの間にある森で凶行に及んだという。彼女の遺体は後部座席に載せられ、インゴルシュタットに放置された。
その後8月16日にシャラバンの両親が車と遺体を発見。あまりにも損傷が酷かったため、シャラバンと誤認したが、彼女のDNAと指紋はシャラバンのものと一致せず、カディージャであることが判明する。
警察は、彼女が車を運転しているところを見知った人物に目撃され、さらにピザ屋にいるところが防犯カメラに映っていたことから、8月19日にシャラバンとシェキールは過失致死の疑いで逮捕された。1月30日のドイツ紙「Bild」の報道によると、現在は過失致死ではなく殺人罪に問われているという。
ただ自分に似ているというだけで無関係の人物を殺害する身勝手さには驚くばかりだが、同様の事件はロシアでも起こっている。
ドッペルゲンガー殺人事件:アメリカ
ロシア出身の47歳、ビクトリア・ナシロワは、2016年にスタイリストの身分を奪うため、毒を盛ったチーズケーキで殺害しようとした疑いで起訴され、現在裁判が進められている。
2014年11月、ロシアに住んでいたナシロヴァは隣人であるアラ・アレクセンコさんを殺害。アレクセンコさんが実母の家を売却したことを知り、その金を奪おうとしたとみられている。その後ナシロワは米ブルックリンに逃亡し、SMの女王として働いていた。
そうした中、彼女は自分が通うサロンで働いていた同じくロシア人のオルガ・ツヴィックさんが、まるで姉妹のように自身にそっくりだということに気づく。そこで逃亡生活に終止符を打つため、ナシロワはツヴィックさんの身分を奪おうと画策。
2016年8月28日、ナシロワはスケジュールの都合でサロンに行けないため、ツヴィックさんの自宅でまつ毛のタッチアップをしてほしいと依頼。ナシロワはブルックリンで一番おいしいと評判のチーズケーキを持参して現れたという。
ケーキを食べてから20分ほどでツヴィックさんは嘔吐し、体調を崩した。翌日、ナシロワは、ツヴィックさんの体調を気遣うようにチキンスープを持って、再び訪問。これを食べたツヴィックさんは昏睡状態に陥った。その後、寝間着姿の彼女が発見され、ベッドには薬が散乱していた。検察は、ナシロワがチーズケーキとスープの両方にフェナゼパムを混入し、自殺を図ったように見せかけたと主張している。幸いなことにツヴィックさんは一命を取り留めた。
フェナゼパムは1970年代に旧ソ連で開発された向精神薬で、一般に発作、不安、筋肉の痙攣の治療に使用されているが、過剰摂取により「深い鎮静」「呼吸抑制」「死」につながる可能性があるという。
ナシロワは2017年3月、アレクセンコさんの娘が雇った私立探偵の協力もあり、アレクセンコさんの殺人事件で逮捕された。そして2018年2月、ツヴィックさんの毒殺未遂で第2級殺人罪でも起訴された。有罪になれば、彼女は最高で25年の禁固刑に直面する。
これに加えて、2016年に出会い系サイトでナシロワに会った後、薬物を投与されたと主張する男性もいる。この男性はナシロワが調理した魚と野菜を食べ、3日後に入院したという。さらに、出会い系サイトで知り合ったほかの男性2人にも薬物を盛った疑惑があるそうだ。
しかし、薬物混入疑惑を証明するのは「非常に困難」だと元マンハッタン検事のジョン・バンドラー氏は指摘しており、今後の裁判が長引く可能性もありそうだ。ナシロワが本当に自分と似ているという理由だけで殺害を企てたのだとしたら、その身勝手さに同情の余地はない。その時は正義の鉄槌が彼女に下ることになるだろう。
参考:「The Sun」「Bild」「New York Post」ほか