「パワーカップル」なら都内に新築マンションを買えるのか?

2024年2月19日(月)8時30分 マイナビニュース

近年、住宅価格の高騰が続いています。特に、首都圏の中でも東京23区のマンションは飛び抜けて高く、新築マンションの場合、平均価格が1億円に迫るほど高額です。こうなると、「いくら共働きでも都内に新築マンションを買うのは難しい」と感じますが、高収入家庭である「パワーカップル」なら購入は可能なのでしょうか。
今回は、マンションや戸建ての価格について最新情報をご紹介するとともに、都内に新築マンションを購入するなら世帯年収がどのくらいあれば可能なのか、シミュレーションを交え解説します。
■パワーカップルの定義や世帯年収
パワーカップルとは、夫婦ともに収入の高い共働き家庭を指す言葉です。明確な定義はなく、それぞれのメディアや研究機関により、
・「夫の収入が600万円以上、妻の収入が400万円以上で、世帯年収が1,000万円以上の夫婦」(三菱総合研究所)
・「夫婦とも年収700万円超の世帯」(ニッセイ基礎研究所)
のように定義されています。
パワーカップルは、世帯収入の多さだけでなく、消費意欲が高いことでも注目を集めています。たとえば、日々の食材や子どもの教育費、住まい、家電、ファッション、旅行などあらゆるものにお金をかける傾向にあります。
中でも住まいについては、通勤に便利な都心のマンション、特にラグジュアリーな雰囲気を味わえるタワーマンションを選ぶカップルが多くいるようです。
■新築・中古マンション、戸建ての平均価格はどのくらい?
実際、富裕層だけでなく、多くのパワーカップルが都内の高額マンションを購入しているといいます。しかし、首都圏の新築マンションの価格は、東京23区を中心に高騰が続いており、「パワーカップルでも新築マンションの購入は負担が大きい」という状況になりつつあります。
不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023年12月」によると、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県)の新築マンション平均価格は、1戸当たり6,970万円。東京23区の平均価格は、1戸当たり9,041万円でした。
特に、東京23区の価格の高さが際立っていますが、この傾向は新築マンションだけでなく、中古マンション市場においても見られるようです。アットホームの「首都圏における『中古マンション』の価格動向(2023年12月)」によると、首都圏の中古マンション1戸当たり平均価格は3,883万円、東京23区の平均価格は5,097万円でした。
一方、戸建ての相場はというと、アットホームの「首都圏における『新築戸建』の価格動向(2023年12月)」によると、首都圏の新築戸建ての平均価格は4,555万円、東京23区の平均価格は6,774万円でした。
実際、マンションや戸建ては以前と比べて、どのくらい価格が上がっているのでしょうか。国土交通省の「不動産価格指数(住宅)(令和5年10月分・季節調整値)」によると、2023年10月の不動産価格指数は、戸建住宅が115.6、マンション(区分所有)が193.9でした。不動産価格指数とは、2010年平均を「100」とした時の価格変動の推移を表した数値のことです。
この不動産価格指数を見ると、特にマンション価格は2010年と比べて高くなり、2倍近くに跳ね上がっていることがわかります。また、戸建住宅は115.6とマンションに比べれば値上げ幅は小さいですが、たとえば、3,000万円の建物が3,468万円になるイメージですので、決して軽視はできません。
■パワーカップルは、都内に新築マンションを買える?
では、都内(東京23区)に新築マンションが欲しい場合、パワーカップルは無理なく購入できるのでしょうか。先ほどのデータから、新築マンションの価格は9,041万円、パワーカップルの定義は「世帯年収が1,000万円以上の夫婦」とし、2つの収入パターンでシミュレーションしてみます。
<世帯年収1,000万円の場合>
住宅を購入する場合、一般的には住宅ローンを組みますが、そこで考えたいのは「返済負担率」です。返済負担率とは、「年収に占める年間返済額の割合」のことを指し、無理なく返済していける割合は収入によって異なるものの、大体年収の25%くらいまでといわれています。
年収1,000万円の返済負担率25%は「1,000万円×25%=250万円」となり、無理のない年間の返済額は250万円です。
この返済額をもとに、以下のような条件でシミュレーションしてみました。
・毎月18万円返済
・年2回のボーナス時に17万円ずつ返済
・住宅ローン金利は3.0%
・頭金800万円
・返済期間35年
この場合、購入可能な物件額は6,217万円でした。新築マンションの価格は9,041万円ですので、シミュレーションでは、世帯年収1,000万円ですと都内で新築マンションの購入は難しいという結果になります。
<世帯年収1,600万円の場合>
では、年収が上がり、世帯年収1,600万円の場合はどうでしょうか。
年収1,600万円の返済負担率25%は「1,600万円×25%=400万円」となり、無理のない年間の返済額は400万円です。
この返済額をもとに、同じく以下のような条件でシミュレーションしてみました。
・毎月30万円返済
・年2回のボーナス時に20万円ずつ返済
・住宅ローン金利は3.0%
・頭金800万円
・返済期間35年
この場合、購入可能な物件額は9,466万円となり、都内で新築マンション購入は可能という結果になりました。
これはあくまでもシミュレーションの1つであり、頭金の額や実際に返済できる金額など、さまざまな条件によって購入できるマンションの価格は変わります。そのうえで、本シミュレーションによると、都内に新築マンションを無理なく購入できる現実的な世帯年収は、1,500〜1,600万円程度であることがわかります。
共働きで稼いでいても、都内に新築マンションを購入となると、負担は想像以上に大きくなります。世帯年収が1,000万円を超えるようなご家庭でも、返済プランや将来のキャッシュフローについては緻密にシミュレーションし、慎重に住宅購入を判断する必要がありそうです。
(※)シミュレーション結果はいずれも、大京穴吹不動産「買える額シミュレーション」参照
■パワーカップルでも、住宅購入は無理せず慎重に
パワーカップルは一般的な家庭より収入が多いため、「自分たちなら高い物件でも問題なく買えるだろう」という自信があるかもしれません。しかし、特にマンション価格は高くなっているうえ、住宅購入では、無理なくローンを返済できる現実的な物件額を考える必要があります。
そうなれば、たとえパワーカップルであっても、都内に新築マンションを買うことは難しいケースもあるでしょう。それに、今は収入が多くても、長い人生では、収入減などに直面することがあるかもしれません。そうした点も踏まえ、住宅購入は決して無理のない金額で慎重に決めましょう。
武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら

マイナビニュース

「マンション」をもっと詳しく

「マンション」のニュース

「マンション」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ