井上尚弥が去った後のバンタム級戦線が熱い! あるか!? 日本人ファイターによる「4団体世界王座独占」─。

2024年2月24日(土)7時30分 マイナビニュース

いま、日本ボクシング界においてもっとも熱い階級は「バンタム」だろう。昨年1月に井上尚弥(現世界スーパーバンタム級4団体統一王者/大橋)がバンタム級4本のベルトを返上して以降、4つの世界王座を巡っての熾烈な闘いが繰り広げられているのだ。
井上尚弥の弟・井上拓真(大橋)は現WBA世界バンタム級王者。さらに今後、WBC、IBF、WBOのベルトに続々と日本人ファイターが挑む状況にある。日本人選手によるバンタム級「4団体世界王座独占」の可能性も出てきた。
○■主役は井上拓真と中谷潤人
2018年から一昨年にかけての5年間、世界バンタム級戦線において突出した実力を有した「ひとり」を除いては日本人ボクサーに出番はなかった。その「ひとり」とは、言うまでもなく“モンスター”井上尚弥である。
コロナ禍でマッチメイクも思うように進まぬ状況下で、ファンは井上の「4団体世界王座統一」へのストーリーを注視し続けた。そして彼は、WBO世界スーパーフライ級王座返上から約5年の歳月をかけて日本人初の快挙を成し遂げる。
井上はその後、階級アップに伴いコレクトした4本のベルトを手放すのだが、そこから世界バンタム級の新たなストーリーが始まった。
WBA、WBC、IBF、WBO各団体の新王者は昨年に決定。そして今日(2月24日)、東京・両国国技館で開催の『Prime Video Presents Live Boxing 7』で2人のバンタム級世界王者の初防衛戦が行われる。
▶WBA世界バンタム級タイトルマッチ
井上拓真(王者/大橋)vs. ジェルウィン・アンカハス(7位/フィリピン)
▶WBC世界バンタム級タイトルマッチ
アルハンドロ・サンティアゴ(王者/メキシコ)vs.中谷潤人(1位/MT)
井上の相手アンカハスは、ランキングこそ7位だが、IBF世界スーパーフライ級王者時に9度の防衛を果たした強者。34勝(23KO)3敗2分けの戦績を誇り乱打戦にも強いタイプで井上にとって、キャリア最強の相手となる。
それでも王者は強気だ。
「過去イチ(これまでで最高の)の仕上がり。目標は『4団体(世界王座)統一』なので、ここで負けるわけにはいかない。まずは自分のボクシングをしっかりやること。最後は気持ちの勝負になると思うが、絶対に勝ちます!」
本人の言葉通りコンディション良好で、さらに勢いもある。
私の予想は「拓真の判定勝ち」だ。
中谷潤人は、バンタム級転向初戦でいきなりタイトル挑戦のチャンスを得た。
これまでにWBO世界フライ級、WBO世界スーパーフライ級のベルトを獲得しており、今回の試合に勝てば無敗での「3階級制覇」達成となる。
対峙するサンティアゴは、昨年7月にノニト・ドネア(元5階級制覇王者/フィリピン)を破り王者となった男だが、28勝(14KO)3敗5分けの戦績が示す通り一撃で相手を倒すタイプではない。ディフェンスは巧いが、それでも中谷とは総合的に見て実力に開きがあるように思う。
精度の高い攻防ができる中谷が徐々にペースを摑み、5〜8ラウンドでKO勝利を収めると見ている。
○■西田凌佑がIBF王座に挑戦
井上が王座初防衛に成功し中谷の「3階級制覇」が達成されたなら、日本人がバンタム級世界王座の2つ(WBA&WBC)を占めることになる。
そして5月4日には大阪で、IBF王座に日本人ファイターが挑むことになりそうだ。
▶IBF世界バンタム級タイトルマッチ
エマニュエル・ロドリゲス(王者/プエルトリコ)vs. 西田凌佑(1位/六島)
これはIBFが公式サイトで報じているもの。
ロドリゲスは、2019年5月・英国グラスゴーで井上尚弥に2ラウンドKOで敗れIBF王座を失った。だが、昨年8月に米国メリーランド州でメルビン・ロペス(ニカラグア)を判定で下しベルトを腰に戻している。
西田は、これまで8戦(全勝)とプロキャリアは浅いが近畿大学ボクシング部出身でアマチュア実績は豊富。KOパンチャーではないものの卓越したテクニックを有し試合を支配することに長けたボクサー、ロドリゲスとの技術戦は見応えがありそうだ。
最後の一つ、WBO王者はジェイソン・モロニー(オーストラリア)。ロドリゲス同様、井上尚弥に敗れベルトを失うも、その後に王座返り咲きを果たしている。
現在、日本人のWBO(15位以内)ランカーは5人いる。
西田凌佑(2位/六島)、石田 匠(3位/井岡)、比嘉大吾(5位/志成)、武居由樹(10位/大橋)、そして那須川天心(14位/帝拳)。
西田はIBF王座挑戦が決まっている。石田も、2・24両国での井上vs.アンカハスの勝者に挑むことが内定。那須川のマッチメイクには帝拳ジムが慎重であることを考えると、モロニーとの対戦を求めるのは比嘉か武居となる。
おそらく、コネクションがあり交渉力に長ける大橋ジムは、すでに動いていることだろう。今年後半にWBO世界バンタム級タイトルマッチ「モロニーvs.武居」が実現するのではないか。キャリア以外の部分で武居がモロニーに劣っているとは思えない。日本のリングで試合が行われる可能性が高いことも考え合わせれば勝算ありだ。
簡単ではないが、日本人選手によるバンタム級「4団体世界王座独占」は夢ではない。その先に日本人世界王者4人による王座統一トーナメントが実現すれば、さらにバンタム級戦線を堪能できる。
まずは今日(2月24日)だ、井上拓真と中谷潤人の闘いに注目したい。
文/近藤隆夫
近藤隆夫 こんどうたかお 1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等でコメンテイターとしても活躍中。『プロレスが死んだ日。〜ヒクソン・グレイシーvs.高田延彦20年目の真実〜』(集英社インターナショナル)『グレイシー一族の真実 〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文藝春秋)『情熱のサイドスロー 〜小林繁物語〜』(竹書房)『ジャッキー・ロビンソン 〜人種差別をのりこえたメジャーリーガー〜』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。
『伝説のオリンピックランナー〝いだてん〟金栗四三』(汐文社)
『プロレスが死んだ日 ヒクソン・グレイシーVS髙田延彦 20年目の真実』(集英社インターナショナル) この著者の記事一覧はこちら

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