仕事力アップ! ビジネスメールのいろは 第64回 【ビジネスメール】「取り急ぎ」の落とし穴! 相手を不快にさせないための心得とは

2024年3月7日(木)15時13分 マイナビニュース

仕事は円滑に進めたいと誰もが思いますよね。仕事上のコミュニケーションもまたしかり。互いに気持ちよく、滞りなく進めたいと願いこそすれ、わざわざ相手を不快にさせようなどとは考えもしないはず。しかし、普段から使用しているフレーズが、無意識のうちに相手を不快にさせてしまうこともあります。
「取り急ぎ」というフレーズもその一つ。「取り急ぎメールにて失礼いたします」「取り急ぎお礼まで」など、締めの一言でよく目にします。何気なく使用している人も多いフレーズですが、場面にそぐわない使用をすると相手を不快にしてしまう可能性があるので注意が必要です。
○「取り急ぎ」が相手を不快にする火種に
「取り急ぎ」とは、差し迫ったことに急いで対応する状況を表します。急を要する場面で使用されることが一般的。現段階で十分な情報を伝えることはできないが、急いでいるため現状で報告できることを伝えるというニュアンスを含んでいます。つまり、「取り急ぎ」と書かれたメールは、情報が不足した状態で送られている大前提があります。情報不足のメールは、相手を不快にする火種にさえもなりかねません。
「取り急ぎ」と書かれたメールからは、また別の機会に詳細な連絡があることがうかがえます。近年、働き方の変化やコロナ禍を経て、メールが増えたと感じている人も少なくありません。相手が「初めから詳細を送ってくれればいいのに」と思えば、それが不快感につながる可能性は十分に考えられます。一度で必要な情報が得られるのであれば、それに越したことはありませんよね。同じ用件で何度もメールが届くことを快く思わない人もいるのです。
何気なく「取り急ぎ」というフレーズを使用している人からは、その後の連絡がないことも珍しくありません。情報に不足があるのなら、それを知りたいと願うのは当然のこと。相手は「いつになったら詳細を送ってくれるのだろう」とやきもきしているのではないでしょうか。忙しいから一旦「取り急ぎ」のメールをくれたのだろうと思えば、急かすのも気が引けるもの。用件が完結しないままの状態が続けば、相手がいら立ちを覚えるのも無理はありませんよね。
○印象の悪化や誤解を招くリスクも
「取り急ぎ」というフレーズを使用する人は、それを多用する傾向があるのも特徴の一つ。特に返信において顕著に見られます。例えば、投げかけた質問に対して回答が得られた際に、次のような返信をすることが習慣化されているのです。
ご回答ありがとうございます。取り急ぎお礼申し上げます。
時に、メールを受信したら間髪を入れずにこうした返信をすることもあり、まるで条件反射のようなレスポンスにも感じられます。
早いレスポンスが喜ばれるとはいえ、果たして、それは本当に相手が望む対応でしょうか。質問に回答した相手は、それで疑問が解消されたのかを何より知りたいはず。疑問が解消されたことを知ればこそ安心につながるし、やりとりが完結したとも認識できます。「取り急ぎ」のお礼からはその判断がつかないため、追加の質問が来る可能性も拭い切れないままです。
情報不足を前提に送る「取り急ぎ」のメールは、相手に雑な印象を与えかねません。少し時間があれば詳細な連絡ができるはずなのに、自分への対応を後回しにしているのではないかといった誤解を招くことすら考えられます。締めの一言に「取り急ぎ」と書くことが習慣になっているとしたら見直した方が良いでしょう。
○自分の気持ちよりも優先すべきは
「取り急ぎ」というフレーズが悪いのではありません。適切な場面で使用されないことが問題なのです。時には、情報不足と知りながらも連絡が求められる場面もあります。詳細な情報よりも緊急性が優先されるケースがそれです。
クライアントとの製品パンフレットに関する打ち合わせを翌日に控えたAさん。担当するデザイナーも同席の予定です。ところが、クライアントの都合で打ち合わせの日程が数日延期されることに。こうした状況であれば、次の日程を決めるより先に、翌日の打ち合わせが延期になったことをAさんはデザイナーに伝えるべきですよね。
明日の〇〇社との打ち合わせは、クライアントの都合で延期になりました。
今後の日程はあらためてご相談しますが、取り急ぎご連絡いたします。
差し迫った予定だからこそ、いち早く延期の事実を伝えることが先決。デザイナーも、空いた時間を別の業務に振り替える調整がしやすくなるというものです。
優先されるのは、単に物理的な時間だけではありません。クライアントへ納品した製品にトラブルが発見されたことを上司に報告するのであれば、発生の原因や今後の対応といった詳細よりも、まずトラブル発生の一報を伝えることが重要な場面もあります。詳細を伝えることを優先するあまり対応が後手に回ってしまえば、より大事に発展してしまう可能性も否定できません。
「取り急ぎ」とは、差し迫ったことに急いで対応する状況を表すフレーズです。緊急性が高い内容であればこそ相手も状況を受け入れ、ひとまずのメールとして理解してくれるはず。大切なのは、自分自身が急いでいる気持ちの強さではなく、客観的に見て急ぐ内容なのかどうかということ。場面に応じた適切な言葉選びが、円滑なコミュニケーションをもたらします。
井上賢治 一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。 1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を生かし、印刷の新会社立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、移籍した会社では東京支社長、営業本部長を歴任。30名の部下を統括するかたわら、ウェブサイトを活用した印刷サービスの運営を行う。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を生かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。 この著者の記事一覧はこちら
日本ビジネスメール協会 日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、メールに関する書籍を中心に35冊出版(内3冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,500回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信している。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行い、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールやビジネス文章、ビジネスマナーなどの集合研修(講師派遣)や講演(公開講座)を会場とオンラインで実施中。 日本ビジネスメール協会サイト この著者の記事一覧はこちら

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