「子どもはいらない」と回答した若者5割超の衝撃…人の基本的欲求に「出産欲があるとは思えない」

2024年3月10日(日)22時5分 All About

18歳から29歳の若年未婚男女は、全体の55.2%が今も将来も子どもが「欲しいと思っていない」という衝撃の調査結果が出た。当事者である若者たちの率直な声を聞いた。

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ロート製薬が「妊活白書2023」を発表した。「現在子どもを欲しいと思っていないし、将来も欲しいとは思わない」と回答した18歳から29歳の若年未婚男女は、全体の55.2%。男性59%、女性51.1%だった。
今回6回目の調査で、この質問の答えが半数を超えたのは初だという。
若年層ということもあり、「結婚」や「子ども」がまだ身近ではないのかもしれないが、それでも大人なのだから、ある程度の人生設計は考えているはず。
だとすれば半数以上が子どもをほしいと思っていない人が半数を超えたのは衝撃的だ。国の少子化対策が見当違いと言われるゆえんは、こういう結果にも出ているのかもしれない。

今の状態では子どもを産み育てられない


アンケートに応じた当事者ではないが、「子どもをもつなんて考えられない」と言っている男女は周りにも大勢いる。
「わかりますよ、このアンケート。私は非正規で仕事をしていて、今付き合っている彼もフリーランス。家賃を節約するために同棲しているけど、結婚して子どもを産むなんて、そもそも経済的に無理。
さらにお互いになんとかこの不遇な状態から抜け出そうと、まずは自分のことしか考えられないんです。少し前の世代のように20代で結婚なんてむずかしいですね」
アカリさん(30歳)はそう言う。同い年の彼と付き合いはじめて2年ほど、彼のアパートの更新があった半年前に同棲に踏み切った。
一緒にいると楽しいと思ってはいるが、アカリさんが住む広めの1LDKでも「ふたりだと狭い」と感じることは多い。ここで子どもを育てるのはもちろん不可能だし、新居へ越したり購入したりすることもできない。

すんなり結婚していく人たちの条件

「本人が大企業勤めで、なおかつそれなりに資産運用していて将来が明るいとか、あるいは親がいろいろ援助してくれるとか。周りを見てもすんなり結婚していくのは、そういう人たちですね。
私も彼も地方出身で、夢を抱いて上京したもののあっさり夢が叶うわけでもなくて。でも自分のやりたいことに固執してる。結婚さえすれば幸せになれるわけではないことは周りを見てわかっているから」
有名になりたいのではない、お金がたくさんほしいのでもない。自分の「小さな夢」を着実に叶えていきたいのだとアカリさんは言う。そのための苦労は引き受ける、と。彼も同じように考えているそうだ。
「もうちょっと器用に生きる道もあるのかもしれませんが、それができない。だから結婚して子どもをもって、自分の人生や時間を犠牲にしながら生きて、結局、あとで後悔して愚痴を言ってという人生だけは避けたいと思っているんです」
夢破れて故郷に帰った友人たちもいる。家庭を持ってそれなりに楽しく暮らしているようだが、「自分にはできない」と思ってしまうそうだ。

私たちは「出産欲」を持っているのか

「実は私の姉が、子どもを産んでから義兄に浮気されて離婚したんです。今は3歳の子を育てながらシングルで頑張っているけど、私とふたりきりになると『子どもをもつ責任が重すぎるよ。人ひとりどうやって育てるのよ、この世の中で』と嘆いています。
義兄からの養育費は途絶えているみたい。頑張って働いても収入は低いから、姉は今、夜の飲食店で働いています。それはそれでしんどそう。それでも子どもは生きる支えにはなっているとは言うんですが、支えにされている子どもはどうなんだろうと思ったりもするんですよね」
この先も、子どもはずっと「母を支えて」いかなければならないのだろうか。それがその子の幸せに通じるのだろうか。姉を見ていると、そんなふうに考えてしまうという。
「自分の人生を自分の思うように生きたいと考えたとき、子どもを産む意味がわからないですよね。人には生存欲求とか食欲とか基本的な欲があるとは思うけど、そこに出産欲は入ってないと思う。
これは個人差が大きいし、女性なら誰もが産みたいと思っているわけではない。私自身、誰かに『子どもを産むことを考えている?』と聞かれると、強制されているような気持ちになります」

「誰もがするから、するべき」時代は終わった

好きな人ができて、お互いを必要として結婚し、自然な流れでも子どもをもうけて家庭を築く。それを「誰もがしていることだからするべきだ」という考え方は、すでに現在、崩壊しているのだろう。
もちろん、家族を持とう、持ちたいとする人々がいるのも当然だ。どちらがいいとかどちらが新しいとか、そういう問題ではない。ただ、もはやひとつの価値観しかなかった時代ではなくなっているのは明らかだろう。
「わからないですよ。もしかしたら2年後に私、必死で婚活しているかもしれないし。自分の気持ちが変わったなら柔軟に対処していくしかない。ただ、そんな先の見えない状況で、がんばって生きてみることしか、今はできないと感じています」
それがアカリさんの率直な「今」なのだろう。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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