女性が発症しやすい帯状疱疹、4月1日から65歳以上を対象にワクチン定期接種化。79歳女性「巨大な水疱が顔の右半分に広がった」頭部に症状が出ると視力や聴力に影響が出る可能性も

2025年3月31日(月)12時59分 婦人公論.jp


(写真:stock.adobe.com)

50歳前後で発症率が上がり、日本人の3人に1人が80歳までにかかるといわれる帯状疱疹。女性が発症しやすいこともあって本来は身近な病気だが、症状や後遺症についてよく知らない、という人が多いようだ。治療が遅れると帯状疱疹後神経痛(PHN)に移行する可能性があり、長年にわたって痛みが残るなど日常生活に支障をきたす。そのため厚生労働省は2025年4月1日より、65歳以上を対象に予防ワクチンの定期接種を始めることを発表した

* * * * * * *

<前編よりつづく>

あと1ミリのズレで失明していた


今回、取材したなかには、発疹や水疱、痛みが顔に出現してつらい思いをした人も多かった。

「なんだか目が疲れるな、と感じる日がありました。肩こりや頭痛もあったので、風邪の初期かもしれないと思って翌朝起きたら、右側のおでこからまぶたにかけて、まるで殴られたように赤く腫れていたんです」と話すのは川端佳子さん(仮名・63歳)だ。

眼科を受診すると「帯状疱疹だと思う」と言われ、翌日、かかりつけの皮膚科へ。「発疹で顔がすごい状態だったのでとても電車には乗れず、サングラスをしてタクシーで行きました」。

医師は川端さんの顔を診るなり、「すぐに入院したほうがいい」と提携先の病院を手配した。手続きを待つ間に抗ウイルス薬の点滴をスタート。入院して5日目には顔の腫れが引いてきた。点滴は1週間に及び、その2日後、退院した。顔に跡は残らなかったという。

「頭部に症状が出ると、視力や聴力の低下といった後遺症が残る可能性もあると説明を受けましたが、処置が早かったせいか、大丈夫でした。発症したのが旅先とか、海外でなくてよかった。すぐに治療が受けられなかったら大変なことになっていたと思います。

実は前年、夫が帯状疱疹にかかっていて。よほどの痛みだったのか、ワクチンを打つよう勧められていたんです。でもお産以外で入院したことがない私は、普段から薬も飲まないタイプ。健康オタクの自負もあり、夫の提案に耳を傾けませんでした。大変な経験をして、あまり頑固になりすぎるのも危険だと、いい勉強になりました」


(写真:stock.adobe.com)

栗田みどりさん(仮名・79歳)も川端さんと同様、顔に発疹や水疱が出た。24年6月のことである。しかし当初、違和感があったのは耳の中だったという。

「耳の穴のすぐ入り口が痛がゆかったんです。触ると、ぷつっとした発疹があって。そのうちどんどん痛くなったので、耳鼻科に行きました。50代で一度、帯状疱疹を経験していたこともあり、私から『帯状疱疹だと思うんですが』と伝えると、医師は『そうね』と言って薬を処方してくれました」

ちょうどそのころ、栗田さんは自宅リフォームのトラブルに見舞われていた。知人に勧められた業者に依頼したところ、思い入れのある家のあちこちを壊され、一軒建てられるほどの金額を請求されたという。老後のために残しておいた資金を思わぬかたちで失い、もう自宅は元には戻らない。ストレスで帯状疱疹を再発したのだと考えた。

2日ほど薬を飲んだが、痛みはひどくなる一方。栗田さんは「効かないのなら」と、その晩、薬を飲むのをやめてしまった。

すると翌日、耳だけでなく、顔の半分に激痛が走るようになった。慌てて大学病院に駆け込んだが、症状が出てすでに4日目。緊急入院となり、10日間、抗ウイルス薬の点滴による治療を受けた。

「『3日以内に来られたらよかったのだけど』と先生が言うように、入院中から、巨大な水疱が顔の右半分に広がっていきました。一番大きなもので3センチ大。水疱のあとのかさぶたは木の皮のようになり、食事を届けてくださる方やお掃除の方と顔を合わせると、皆見てはいけないものを見た、という表情をしていました。それはそれはひどいありさまでした」

しかし、問題は見た目だけに留まらなかった。

「顔の右半分がとにかく痛いんです。唇から歯茎まで腫れて、歯科で麻酔の注射をしたときのような感じ。片方の鼻からは鼻水が出なくなり、のども片側が痛いから、食べ物を飲み込むのも大変。目やこめかみにも水疱が出たのですが、あと1ミリ目に近かったら失明していたかもしれない、と言われました」

顔にできたかさぶたは、その後きれいにとれたが、退院後、2ヵ月は寝たきりで、気がおかしくなるような痛みが続いた。ペインクリニックや鍼、灸など、いいと聞いたところに通ったが効果はなく、いまもこめかみとのどにブロック注射を打ち、痛み止めを飲む生活が続いている。

「耳の中には発作的に激痛が走ります。歯茎も腫れたまま、耳たぶは柔道選手の耳みたいです。三叉神経のすべてが傷ついてしまったので毎日軽い頭痛がありますし、洗髪すると、右半分の髪の毛だけ、手触りがゴワゴワして指が通らないんですよ。

これをお読みになった方には、体に痛がゆさを感じたら、迷わず皮膚科に行くことをお勧めします。別に、ただの虫刺されですよ、と言われてもいいじゃないですか」


●2種類の帯状疱疹ワクチンを比較すると…

ワクチンには2種類ある


帯状疱疹は、繰り返しかかる可能性がある。免疫力が低下する高齢者は特にかかりやすいことから、25年4月1日より、ウイルスの再活性化を防ぐ帯状疱疹ワクチンを定期接種化すると、厚生労働省が決めた。(参照:厚生労働省「帯状疱疹」)

65歳以上のほか、持病があり感染リスクの高い人も対象とする。すでに50歳以上に対して助成金を出している自治体もあり、自己負担なしで受けられるケースがあるのでご自身で調べてみてほしい。

ワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンの2種類がある。1回接種のみの生ワクチンは、6000〜8000円程度。効果は5〜7年続く。

2ヵ月以上の間隔をおいて2回接種する組換えワクチンは、合計で4万4000円ほどかかり、高額だが、効果は10年近く続という。

「高い効果が長く続くのは組換えワクチンのほう。費用は高額ですが、自治体によっては助成されます。ただ2回接種する必要があるのと、副反応が強い傾向にあるのがデメリット。

仕事を休めないといった働き盛りの世代は、副反応のことを懸念して生ワクチンを選ぶ人が多いですね。どちらも一長一短あるので、よく考えて選択してください」(吉木院長)

この原稿を書いている最中、たまたまマンションのエレベーターで一緒になった70代の女性が、歩きにくそうにしていた。声をかけると、「帯状疱疹の後遺症で坐骨神経痛がひどく、杖がないと歩けなくなってしまったの」と言う。ペインクリニックでブロック注射を100回打っても、症状はよくならなかったのだとか。

いつもはつらつとしていて若々しい印象だったのに、いつからか、つらそうに歩く姿を見かけるようになっていた。怪我をしたのか病気なのか、気になっていたが、まさか帯状疱疹だったなんて。

「知識がなかったから、治療を始めるのが遅くなってしまって。帯状疱疹でこんなことになるなんて思ってもみなかった。私の話を聞いた人たちは、みんなワクチンを打ちに行ったのよ」

取材中、私もワクチンを打った。あの痛みをまた経験するのはゴメンだし、前にかかったときより年齢を重ねたぶん、確実に重症化のリスクが高くなっていると思ったからだ。

高い効果が10年続く組換えワクチンも魅力的だったが、副反応のことを考えて生ワクチンを選択した。これで万が一、発症しても重症化は避けられるだろう。

この記事を読まれた皆さんも、ぜひ住んでいる自治体の取り組みを調べ、帯状疱疹予防について検討してみてはいかがだろう。

婦人公論.jp

「女性」をもっと詳しく

「女性」のニュース

「女性」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ