残間里江子73歳「すべては自分の責任なんだと生きていれば、何とかご機嫌でいられる。ゆっくり、ヨタヨタでも、人生を自分のペースで黙々と歩いて」

2024年4月1日(月)12時29分 婦人公論.jp


40年来の盟友だという、残間里江子さん(左)と吉永みち子さん(右)(撮影:藤澤靖子)

40年来の盟友、残間里江子さんと吉永みち子さん。コロナ下で会えなくなって以来3年ぶりの再会だそう。73歳の今も現役でご活躍されるお二人の、最近の暮らしぶりは(構成=丸山あかね 撮影=藤澤靖子)

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<前編よりつづく>

想像力を備えて先手必勝といこう!


残間 みっちゃんって、怖がりなとこあるよね。

吉永 私は父が60、母が40の時の子で、小学校4年の時に父が死に、小学校6年の時に母が死にそうになった。そんな頃から、たとえば民生委員の人と、孤児になった時の受け入れ先とかを相談したりしていたから、不安要素を察知して対策を考える癖がついた。

父の死後は、私が夫で母が妻みたいな関係性が生まれたの。母が経済的な不安まで訴えてくるものだから、中学からずっとバイトして。母の精神の安定のために米櫃を満タンにすることばかり考えていてね。とにかく安心のために備えておかなければ、という思考がしみついてる。

残間 私も幼い頃は極貧生活だったけど、母は自分もお金に困っているのに人に振る舞ってしまうような性分で、それでもなんとかなるんだなぁと思ってた。社会人になってからは親に仕送りするようになったり、子どもを育てるためにもお金を稼がなくちゃ、とあくせくした経験があったりするから、困らない程度に蓄えておかないと不安だというのはあるけどね。

吉永 子どもたちは私のことを不死身だと思ってる節があるけど(笑)、実のところ臆病で弱いのよ。

残間 私も息子に、「私は鉄人じゃないからね」と言ったことがある(笑)。山あり谷ありの人生を、惑いながらもここまで生きてきたんだもの。改めて考えてみると、いろいろなことがあったな。

吉永 お母さんの介護をしていた時期もあったよね。

残間 最後は施設に入所したけど、なんだかんだで15年間。

吉永 15年も!うちの母は旅先で突然死したので、私は介護の経験がないの。だからことさら思うのかもしれないけど、子どもたちに自分の介護をさせるのは可哀想というか、まず自分たちのことで手一杯で無理だと思う。パンクでもされたらこっちの悩みが増えちゃうから、具合が悪くても言わないの。

残間 わかるわかる。

吉永 最後まで子どもの世話にはならない。ならばどうするのかと算段して、着々と計画を実行に移しておく必要があるけどね。

残間 どんな計画?

吉永 ボケてゴミ捨てができなくなったら、施設に入ると決めてるの。でもできるだけ長く家にいたいから、働けるうちは働いて、自分の食いぶちは自分で稼ぐ。体力維持に励むのも、今の暮らしを続けるための活動の一環だね。

残間 想像力を備えて、先手必勝でいきたいところよね。

吉永 とはいえ、人生はギャンブルみたいなものだから。

残間 元祖女性競馬記者がいうのだから間違いないね。(笑)

吉永 だって100通りの未来図を想定していても、想定外の101通り目のことが起こるのが人生じゃない?それでも100通り考えてれば少しは応用が効く、かもしれない。

残間 そもそも私は一人で生きていけるように働く道を選んだのだし、若い頃に「一人で生きていきます」と宣言しちゃったから、今さら後には引けないわ。

生き方を肯定すれば自ずとご機嫌になる


吉永 専業主婦の友達に、「あなたは自由でいいわね」なんて言われるんだけど、自由も容易ではないしね。

残間 自分の選んだ道なのに、できなかったことを見つめてしまうと不幸になってしまう。

吉永 どの道を生きるにしても、その時の状況のせいであの道を選べなかった、と考えるより、自分の意思で違う道を選んだ、と考えるほうが、自分のことを肯定できるんじゃないかな。できなかったことではなく、できたことがその先を生きる力になるんだと思う。

残間 自分の考えを持って、つまり精神的に自立していることが重要なのよ。何でも人任せではどこまでも不安だし、うまくいかなかった時に誰かのせいにしている限り、不機嫌な人生になってしまう。

逆に言うと、すべては自分の責任なんだと生きていれば、何とかご機嫌でいられるってことなんだけど。

吉永 気分なんて、思い込み一つで変わるって気もする。たとえば私は朝、起きた時に「あーしんどい」ってため息をつくと一日中ドンヨリしちゃう。だから、「今日は元気だぞ!」とか言うようにしてるんだけど。

残間 私の朝の儀式は仏壇に手を合わせること。うっかり忘れると一日中気分が冴えないの。

吉永 それぞれ儀式があるのね(笑)。でもさぁ、思うに、必ずしもご機嫌である必要もないんじゃない?

残間 無理は禁物だとは私も思う。

吉永 人って基本的にネガティブ思考に陥りやすいのは、誕生と同時に死に向かっているからだと思う。哀しみをたたえてるのが自然な姿。暗部を見ないで明るくいなきゃというのは危うい気がする。暗部を見つつ、それでも明るく生きたいんだよね。

残間 最悪のことを想定して、何が起きても対処できる気構えを持ってこそ、ポジティブになれるのではないかしら。

吉永 私の座右の銘は「丙(へい)を丙とすれば丙ならず」。良くないことも潔く受け入れてしまえばなんてこともない、ということで、ある意味究極の癒やしかもしれないね。

残間 私は、母が雑記帳に書き残していた「私は歩く」という言葉が好きなの。ゆっくりでも、ヨタヨタしていても、人生を自分のペースで黙々と歩いていくのが理想的だなと思って。

吉永 素晴らしい人生訓だね。最後はみんな一人なのよ。でも寂しいのは自分だけじゃないと悟って、とにかく歩んでいこうと決めれば、心は安泰でいられる。そうありたいね。

婦人公論.jp

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