中性脂肪の人生最高数値を更新。このまま運動を避けてるとまずいかも、とウオーキングを始めてみた

2024年3月29日(金)12時30分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第15回は「ウォーキングはいいかもしれない」です。

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初めの4キロ


「このまま運動を避けて生きていると、いよいよまずいかもしれない」

自分の人生に危機感を覚えたのが、2023年10月のこと。きっかけは健康診断結果の中性脂肪の人生最高数値を目の当たりにしたことだ。座業を生業にしていると、動かないことがデフォルトになってしまう。1カ月のうちの半分は打ち合わせや取材などで外出をして、もう半分はデスクワークになる。通勤がないし、住環境が良いのか遠出をしなくても生活用品は手に入る。1日の歩数が「100歩」なんていう日もザラである。この積み重ねが、私を立派な中年体型に仕上げてしまった。

そのうえ私、大の運動嫌いときている。よく「体を動かすとスッキリする!」と言っている人たちの気持ちが、1ミクロンも理解できないままアラフィフになってしまった。このまま運動嫌いを放置しておくと、中性脂肪の高記録はやがて病気へ進化するかもしれないという恐怖が押し寄せる。この悩みを日々の生活にトレーニングを欠かさない友人に相談した。

「なにか運動を習いに行ったほうがいいのかな」
「今まで何の運動を習いに行ったの?」
「スポーツクラブは2軒、筋トレ1軒、ピラティス2軒、ホットヨガが1軒。引越しをしながら通う施設も変わったんだけど……」
「結局続いていないじゃん」
「まあ」
「そんな人がまたどこかに通っても絶対に続かないと思う。まずはどこでもいつでもできる、ウォーキングから始めたらどう? 1日のクリア歩数を決めてさ」
「歩くねえ」

名だたる経営者や著名人、あの大谷翔平選手が定期的に行なっていると聞いたことがある、ウォーキング。午前中に行えば、太陽を浴びてセロトニンの分泌を促すこともできる……という事前情報だけはしっかり頭に入っている。友人のゴリ押しもあって、私はついに昨年の11月から始めてみることにした。

開始にあたって、最初の問題は家から外に出るまでだ。なんせ私、2〜3日くらい自宅にこもっていても平気という、徹底したインドア派。最初の一歩がなかなか踏み出せない。

そこでiPhoneのウォーキング記録を用いた。設定した4キロをクリアすると、カレンダー形式のデータの日付が緑色に変わる。運動量が足りないと、青色のまま。「このデータをすべて緑色にして、いつかエッセイのネタにする……!」と、データ更新を発奮材料にしたのだ。この作戦が功を奏したようで、スタートから現在まで約5カ月間、続いている。

歩いている自分を飽きさせない


徒歩データを記録することで、ウォーキングを行うマインドを持つことができた。次の問題は自分を飽きさせないことである。私と同じく、運動嫌い民にとって大きな難関とは“継続”だ。これらを打破するために考えたのは「コースを決めない」。

近所には一周すると約2キロとなる運動専用の公園があるので、ここを歩く基本コースにする。が、毎日同じコースを歩いていると飽きてくる。そんなときはイヤフォンでポッドキャストを聴く。それから公園で私と同じように運動している人たちの人間観察をする。週末は一日数万人が訪れるという巨大パークなので、何かと観察による発見はあった。その中で強く印象に残ったのは、走る人と歩く人の違いだ。

公園の一周はジョギング、サイクリング、ウォーキングの3種に分かれている。週末になるとジョギングコースには、セミプロと思しき男女混合のランナーたちが大集結。皆、筋骨隆々の手足を動かして走っている。


歩き始めた頃はまだ紅葉がチラホラ

「××さんが飲んでいたプロテイン、良かったですよ!」
「お、飲まれました? そういえばサプリは試しました?」

ランナー同士の会話も意識が高かった。走りながら息を切らさずに話すだけで尊敬に値するのに、会話にまで健康情報が溢れているとは、恐れ入った。

一方、私のように脂肪がつきまくった体型の人々は、ウォーキングコースをひたすら歩いている。ご近所同士なのか、2〜3人の横並びで、同性中高年同士のパターンが多い。

「この間の検査のコレステロールの数値も悪くってよォ」
「あ、この間紹介したホルモン焼き屋さん、行かれました?」
「行きました! どうです? この後とか」
「いいですねえ」

ちなみにこちらは、とても共感性を覚えるおじさん同士の会話だった。ジョギングコースを選ぶ人たちとはそもそもの体の作り、健康に対する価値感が、私たちとは全く違うと思い知る。ただ自分がランナーを目指して、走り始めることだけは絶対にない。とにかく歩くことをサボらず、公園にいるだけでも「偉い」と自分を褒めることにしている。無理は禁物だ。


ウォーキングの後の一杯♡「さいこんたん」のちゃんぽんは和風のさっぱり味。野菜がたっぷりだからヨシとする

そして次の関門は、毎日同じ公園のコースに飽きてくること。それならばと自分の勘に任せて、近所の4キロ圏内をひたすら歩くようにした。

「こんなところにパン屋ができていたのか〜」

と、女性雑誌の記事みたいだけど、近所の発見も楽しい。ちょっとした買い物も二駅先までなら往復を歩くようにすると、見えてくる景色も増えてさらに楽しい。ただ、新規店の発見が多すぎて、パン、フライ、たこ焼き……と買い歩きをしているうちに、我が家のエンゲル係数が増加していたことはご愛嬌にしておく。

気候との闘い


歩き始めて2カ月くらい経過した頃。年齢のせいなのか低迷していた体力が徐々に戻ってきた。朝ごはんもおいしいし、よく眠れるようになってきたので、0時には布団に入るという健康生活へ突入している。最近受けた血液検査でも、少しだけ中性脂肪が減っていた。これは継続したいと思っているところに、次の問題がやってくる。

季節は春を迎え、最近のウォーキングの敵になっているのが気候だ。寒さは着膨れをすればしのげるけれど、春の花粉と暴風はなかなか滅入る。


花を撮影し始めたらおばさんの始まりです

暴風は命の危険もあるのであきらめるとして、花粉はマスクと薬でケアをしながら歩いている。本当は緑があるところで深呼吸したいけれど、今は自殺行為なので控えておく。そんな季節の移り代わりを感じているうちに、また今年も酷暑がやってくるだろう。暑さに負けて、歩く気力がなくなるのかもしれないと考える。

と、同時に自分がなんとか言い訳を考えてウォーキングをサボろうとする惰性人間だと気づく。冒頭でアドバイスをしてくれた、運動大好き友人は「習慣になるまで頑張れ」と言ったけど、辛いものはなかなか習慣にならないようだ。それでも歩き終わると気持ちが良いし、自分への罪悪感はなくなる。

だから今日も私はこの原稿を書き終えたら、シューズを履いて外へ向かうのだ。

婦人公論.jp

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