姉妹都市を越えた?「夫婦」の自治体 「結婚」のなれそめを聞いてみると...

2018年4月8日(日)11時0分 Jタウンネット

国内外を問わず、文化交流や親善を深めるために提携や協定を結んだ都市のことを「姉妹都市(友好都市などとも)」と呼ぶ。アメリカでこうした関係を「sister city」と呼ぶことから直訳したようで、全国の自治体でもしばしば「姉妹都市である○○市と〜」といった表現が見られる。


だが、特別な関係の2者は「姉妹」に限らないようだ。静岡県の富士宮市観光協会が2018年4月1日に公式フェイスブック上で、滋賀県近江八幡市との「夫婦都市(めおととし)」提携50周年を記念したキャンペーンを実施すると発表しているのだ。


結納、結婚式ときちんとやってました


姉妹、兄弟都市なら聞いたことはあるが、夫婦都市はなかなかない。というか、恥ずかしながら、記者は初耳だった。なぜ富士宮市と近江八幡市が「夫婦」になったのだろうか。富士宮市のサイトには「夫婦都市」の紹介ページがあり、その中で


「夫婦都市近江八幡市とは『神様が土を掘り、その土を運んでつくりあげたのが富士山、掘った後が琵琶湖』との昔話をもとに、日本一高い山『富士山』、日本一大きな湖『琵琶湖』、この二つの日本一を持つ両市が、昭和43年8月、国内でも大変めずらしい夫婦(めおと)都市の提携を結びました」

と説明されている。おそらくはいくつかの昔話で見られる「山運び(ダイダラボッチの山運びなど)」のエピソードを指していると思われる。


より詳しい経緯を確認するためJタウンネットが4月4日、富士宮市企画部情報発信課広聴広報係に取材したところ、次のように話してくれた。


「もともとは、1952〜53年ごろ、近江八幡市の有志の方々が『富士山と琵琶湖を結ぶ祭典』という行事を始めたことが、両市の交流のきっかけだったようです。その後も交流を続けてきましたが、1967年に『都市縁組をしないか』との話が具体化したと聞いています」

兄弟姉妹よりも縁の深い都市、という意味を込めて縁組によって夫婦都市になったというわけだ。縁組にあたってはきちんと結納も執り行われた。


「1968年には富士宮市からサクラ200本を結納として送り、近江八幡市からは結納返しとして琵琶湖で獲れたヒゴイやマゴイが送られ、晴れて婚約が成立しました」

もちろん、適当に夫婦都市と名乗っているわけではなく、両市の間で夫婦都市の提携書を交わし、公式の文書にも夫婦都市と明記されているという。


「名前は夫婦ですが、関係は一般的な友好都市、姉妹都市と変わりません。行政、スポーツ、文化面などで交流し、友好と親善を深めています」

こうした夫婦都市は他にもあるのだろうか。調べてみると、北海道稚内市と鹿児島県枕崎市の間でも夫婦都市の提携が結ばれていた。


稚内市のサイトによると、2012年に最北端と最南端の駅を有する都市として友好都市関係を結んだが、2014年により関係を深めるため、「コンカツ(昆鰹、稚内の特産品の昆布と枕崎特産の鰹を指す)プロジェクト」が始動。出雲大社で昆布と鰹節の奉納(結婚式)を行い、島根県出雲市長を仲人役にコンカツ婚姻書の調印式まで行ったという。


どうも、夫婦になる以上は、都市間でもきちんと作法に則る傾向にあるようだ。


さらに調べていくと、「夫婦町(めおとまち)」まであることがわかった。こちらは宮城県松島町と秋田県にかほ市の間で結ばれているもの。もともとは合併してにかほ市となっている旧象潟町(きさかたまち)と松島町の盟約だったようだ。


こちらは前述の2例と比べると、関係性がわかりにくいのだが、何か夫婦になる縁があったのだろうか。松島町に確認したところ、2012年に行われた夫婦町締結25周年を記念した「銀婚式」の資料をもらうことができた。


これによると、松島町とにかほ市(旧象潟町)は、松尾芭蕉の『おくの細道』の中で対照的な絶景の地として描かれており、江戸時代にはセットでその名前がよく知られていたという。


さらに、1321〜1324年ごろに象潟の女性が亡くなった婚約者が暮らしていた松島に嫁ぎ、義父母をよく支えたという「紅蓮尼(こうれんに)」の物語などもあったことから、両町の交流が進み、1987年に夫婦町締結に至ったようだ。


歴史や文化、ちょっとしたきっかけと各都市が夫婦になった経緯はさまざまだが、そこがまた現実の夫婦のようで興味深くもあった。あなたが住む地域にも、「結婚相手」となる、深い関係の自治体がいるかもしれない。

Jタウンネット

「都市」をもっと詳しく

「都市」のニュース

「都市」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ