時給7000円のデリヘル嬢は80万円の借金が返せない。 第7回 闇の業界の実態、人の心理を突くスカウトマン

2024年4月14日(日)7時0分 マイナビニュース

私にお金を払った客はこう言う。「こんなこと早く辞めた方がいい」って。産婦人科の医者にはこう言われた。「あんた、バカ?」と。高額エステで借金を背負い、性風俗の道へ入った24歳の“つばき”。「フーゾクしかない」と思いこんだあの時の自分に伝えたいことは? 女性の性売買当事者によるコミックエッセイ『時給7000円のデリヘル嬢は80万円の借金が返せない。』(ころから)より、一部をご紹介します。
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○業種の実態
風俗とは、もともとは「風習」とかと同じ意味。でも今は「性風俗」が略されて風俗と呼ばれている。なんとなく「フーゾク」と書く方がしっくりくる? ともかく風俗にはさまざまな業態があり、歓楽街に多く存在している。その中での「デリヘル」は無店舗型のため、繁華街を問わずにどこにでもあるんだ。
世の中には、ガールズバーなど、若い女性がお酒をつぐだけの店もある。それらは「酒類提供飲食店」という種類で営業許可を得ている。でも実際その中には、セクキャバ(セクシーキャバクラ)などの女性が下着のような衣装でお酒をついだり体を触られる店もある。店の中を暗くして性的なサービスを行うピンサロ(ピンクサロン)も同じ「酒類提供飲食店」として許可を得ている。中にはほぼ公然と売春が行われる店があり、それが「料亭」や「マッサージ店」として営業許可を取っている。日本に「売春防止法」があるのに、こうやって営業許可を得ることで風俗業者が存在できてしまうんだ。
例えば、一般的な就職活動の面接では、就職から就職までの「空白の期間」について問われる。だから、なんと、デリヘル店のオーナーは女性が次に就職するときのための履歴書の書き方「デリヘル店ではなくマッサージ店の屋号など)まで教えるほど巧妙なんだよ!
○闇の業界
漫画でスカウトマンの山田は、「これは闇の業界」と言っていたよね。それは、世間一般的に「裏社会」や「反社」と呼ばれ、いわゆる犯罪組織のこと。闇の業界のほとんどに暴力団が関係していて、、日本では東京都新宿区歌舞伎町が最大の拠点と言われている。山田は、つばきにわからないように「闇」という言葉を用いたんだ!
そのような闇社会と関わりのある性風俗。単に「いやらしいから」だけではなく「闇」という言葉を置き換えると「裏社会=犯罪行為」「売春(買春)=売買禁止の市場(違法)」なんだ。
この業界は、よく知らない人が関わりたくなる「人の心理」を突き、脱法的に存在している。誰もが出入り可能な、囲いの見えないタブーの領域。それが、山田の言っていた「闇」。やると決めたら引き返せないようになっているんだ。
つばきはあのとき、「闇」の意味がモヤッとしたものに包まれていた。秘密にしないといけない仕事って、興味深くて、なんならちょっとかっこよく聞こえた。その意味は闇に包まれたまま、この本が生まれるまで長い月日が流れたんだ。
現在、性的な店の看板やサイトの多くが裏社会に繋がっている。入ってしまうと、店の人は「最初に君から興味をもったんだよ? 君のためにこちらもリスクを飲んで頑張る」という逆のスタンスで構えているんだ。
つばきは、性行為や性風俗に関わることを知らなくていいことだと思い、そのまま大人になった。確かに、その内容は教育課程に出てこないし、自分から尋ねないかぎり教えてもらえないのが現状。社会は、それらを未成年や女性は大人になっても知るべきじゃないというスタンスでいるんだ。
私は、未成年や女性も性行為のことを避けずに正しく理解するべきだと思う。むしろ、男性、女性、みんな生きていくうえで必要なことだから。つばきをふくめ若い人たちには詳しく知ってほし。それはけっして悪いことばかりじゃない。つばきは当時、そういうことを知りたい気持ちもあり、やろうと決めたんだ。
あの時のつばきに伝えたいこと
・性風俗の求人は、求人情報のページにその仕事内容が書かれていないんだ
・物事には何でも、表と裏がある。「裏」はいつも見えにくいけど、たまに少しだけ見える。社会にも、「表」と「裏」があるんだよ。
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○『時給7000円のデリヘル嬢は80万円の借金が返せない。』(ころから)
著者:つばき イラスト:うなばらもも
24歳のつばきは、高額エステの支払いに苦しみ、ネットショップ詐欺に遭う。そうして80万円の借金を背負うが、徐々に返済が滞り、風俗の世界へ入るが——。著者のデリヘル嬢体験をもとにした漫画とエッセイで、風俗業界の実情を伝える、ありそうでなかった一冊。若い読者層を意識した造本でありながらも、産婦人科医の高橋幸子さんによる解説や、「困った時の相談先リスト」を収録するなどの工夫が凝らされている。Amazonで好評発売中です。
公式サイトhttp://korocolor.com/book/9784907239701.html
つばき 公立高校を卒業後に海外旅行し帰国後、団体職員を経て、リゾートホテルに勤務。職場のストレスが原因で借金が重なり、水商売と性風俗で働く。2016年末に『サバイバー 池袋の路上から生還した人身取引被害者』(マルセーラ・ロアイサ、ころから)に強く共感し自身の経験の執筆を決意。筆名は、韓国での性売買経験を手記にした『道一つ越えたら崖っぷち』(ポムナル、アジュマブックス)の著者名「春の日(ポムナル)」に対して、自身の心にはまだ春が来ておらず「心に冬が一生残り続けても、謙虚に咲き続けたい」ことから真冬に開花する椿(つ ばき)に決めた。 この著者の記事一覧はこちら

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