【並ばない万博】やっぱり長蛇の列だけど工夫次第で苦にならない?

2025年5月14日(水)15時0分 大手小町(読売新聞)

いつのころからか耳にするようになった「気になる言葉」を、漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さんが独特の切り口で読み解く夕刊「popstyle」の人気連載「辛酸なめ子のじわじわ時事ワード」。今回は【並ばない万博】(ならばない・ばんぱく)です。

日本国際博覧会協会は「並ばない万博」をかかげていますが、大阪・関西万博が開幕すると、初日から悪天候の中で並ぶ羽目になった人たちの()()(きょう)(かん)がうずまいていました。

通信障害が発生して入場のためのQRコードが表示できなくなり、入場待ちや荷物検査で長蛇の列ができ、人気のパビリオンも大行列。トイレやレストランなども並んでいたようです。帰宅時、最寄り駅に入場規制がかかって、ここでも大行列が発生。キャッシュレス決済や電子チケット、事前予約制を導入したら「並ばない万博」が実現するという見通しが甘かったのでしょうか。公式アプリは使いこなすのが難しいですが、よほどの情報強者なら行きたいところは事前予約できて「並ばない万博」も可能かもしれません。

開幕してから約1週間後の平日に、(ゆめ)(しま)の会場を訪れました。バスで比較的()いている西ゲートに到着したため、予約した入場時間まで約30分待機し、荷物検査に10分ほど並んで入場できました。並んでいる間、民族音楽のBGMが流れてきて、平和なマインドになる効果が。入場後は人気のイタリア館に40分ほど並んで入ることができました。並んでいる間も、館内に展示されている名産品や、モニターの映像を眺めていれば気が紛れます。他のパビリオンでも、スペイン館、マルタ館など、巨大ディスプレイを設置し、並びながら美しい映像を観賞できるようになっていました。サウジアラビア館は、前面の庭の樹木からミストが出て、暑い日でも快適に並べます。さらに伝統工芸品を実演制作するスペースや、植物についてのQRコードなど、並んでいる間も飽きさせない仕掛けが随所にありました。

「並ばない万博」は無理でも「並んでも苦にならない万博」はパビリオン次第です。逆に、予約したので並ばないはずの日本館は、入場したあと、展示コーナーの入り口に行列ができていました。やっと目玉の「火星の石」にたどり着いたら、撮影時にガラス面が反射して疲れた自分の顔が写り込んでいました。

とはいえ各国のパビリオンの趣向をこらした建築を見ているだけでも楽しいので、「建築を見るだけなら並ばない万博」も実現しそうです。「外から見るだけ」という条件付きなら「並ばない万博」にできます。一番ラクなのは、家でネットやニュースで行った気になる「並ばない万博」(行かない万博)ですが、やはり現地で実際に体験する意義は大きいです。

大阪・関西万博では、いくつか開館が間に合わなかったパビリオンも。注目はインドパビリオン。(はす)の花を思わせる美しい外観で、車輪や手のオブジェが回転する凝った演出ですが、そのためかオープンが間に合わなかったようです。SNSに「#今日のインド館」と連日投稿されるほどの話題に。「あと数日」「来週には」と言いながら期日が過ぎ、日本なのにインド時間が流れました。環境が変わってもぶれない精神性に心を動かされる人が続出。オープン後も注目度が高まる効果がありました。

大手小町(読売新聞)

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