東京から90分。歩いて渡れる無人島「沖ノ島」に行こう!【千葉県館山市】

2023年9月10日(日)7時30分 ソトコト

※トップ写真は、令和元年房総半島台風以前のものです。写真提供:NPO法人たてやま・海辺の鑑定団


沖ノ島で海と森の活動を行うNPO法人『たてやま・海辺の鑑定団』




沖ノ島の地図


平成16年に設立されたNPO法人『たてやま・海辺の鑑定団』は、「海鑑(うみかん)」の名で親しまれていて、沖ノ島の自然環境を守る活動や、自然体験プログラムを実施しています。沖ノ島の周囲は約1キロメートル、面積は約4.6ヘクタール。海の環境を守るために、2016年から「アマモ場」の再生活動をスタートしました。アマモは、「リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ」という、植物で一番長い名前を持った海草です。アマモ場は海のなかにある森のような存在で、たくさんの生き物たちが暮らし、豊かな生態系を生みだしています。




アマモ場再生活動の記念写真


2019年の令和元年房総半島台風では、樹齢350年以上といわれていた御神木や多くの木々が倒されました。倒木の原因は台風だけではなく、島内にあるコンクリート道路や人工物などの影響によって、岩盤の乾燥が進んでいたことも挙げられました。豊かな森で蓄えられた雨水は、時間をかけて海へと流れ、海をも豊かにします。海鑑は50年後の豊かな森の再生を目指して、海の活動だけではなく森の再生活動も行っています。




森の再生活動実施中


シュノーケリングで出会えるサンゴや魚、生き物たち




ニホンアワサンゴ


『環境省令和5年度水浴場(開設前)水質調査結果』での沖ノ島は、全透(または1メートル以上)のAAランク。透明度が高く、黒潮の影響を受けた温暖な海はサンゴの北限域で、30種類以上のサンゴやソラスズメダイ、カゴカキダイやニシキベラ、トゲチョウチョウウオなどのカラフルな魚に出会うことができます。




カラフルな魚たち


南房総にはいくつかのシュノーケリングポイントがありますが、沖ノ島のいいところはビーチの右側が多少荒れていても左側は静かだったり、その逆だったりするので、わざわざ車で他のポイントに移動することなくどちらかの海に入れることが多いのが魅力です。また、カラフルな生き物たちに出会えるのもテンションが上がるポイント。見た目がかわいい小さな魚から、何だかおいしそうな大きな魚まで、毎回いろいろな魚たちに出会えます。イワシなどの群れに囲まれて一緒に泳いでいると、魚に仲間入りした気分で自然と笑顔に。ときには、息継ぎをするために顔を出したウミガメと出会うこともあるそうです。




ハタンポ幼魚の群れ


海鑑では、シュノーケルやフィンの使い方からていねいに教えてくれるシュノーケリング体験を行っています。海の状況をみながら、魚やサンゴが見られるポイントへと案内してくれるので、はじめてでも安全にシュノーケリングを楽しむことができます。




シュノーケリング体験の様子


夏は海水浴場や海の家も開設され、ライフセーバーもいるので海水浴だけでも十分に楽しめます。海の家にある有料シャワー以外、島内に水道はないので手洗いやシャワー用の水を持参することをおすすめします。海水浴場の開設や期間については館山市のホームページで最新情報を確認してください。
館山市役所:https://www.city.tateyama.chiba.jp/index.html


次のページでは「ビーチコーミングで土器や化石が!? 」を紹介します


ビーチコーミングで土器や化石が!?




ビーチコーミング


沖ノ島の森を通り抜けると、貝がらがたくさん集まった“シェルビーチ”があります。南房総には約50種類のタカラガイ(※)があるといわれていて、沖ノ島でもいろいろなタカラガイを見つけることができます。
※タカラガイ科の巻き貝の総称で、滑らかで光沢のある卵型をしている。貨幣や装飾品として使われていた歴史があり、現在もコレクターを魅了している貝がら。




さまざまなタカラガイ


貝がらやシーグラスだけではありません。ウミガメやイルカの骨、サンゴの骨格、土器や化石、コクヨウセキなどがあることも。なかでも、イルカの耳骨(じこつ)は縁起のいいお守りとして身に付けている人もいる、ラッキーアイテムです。沖ノ島を含め、南房総の海岸で何十年もビーチコーミングをしている海鑑メンバーには、今までに1000個くらいイルカの耳骨を拾ったという人もいます。 台風など海が荒れた3日後あたりに行くと、海底にあったものがうち上がる確率が高くなるそうです。(注:くれぐれも台風当日に、海に近づかないようにしてください)




サメやイノシシの歯


白ではなく、茶色や黒っぽくなっているイルカの耳骨やサメの歯は化石化したもので、何万年も前の骨だといわれています。沖ノ島には、“縄文海中遺跡”とも呼ばれている「沖ノ島遺跡」があります。その名の通り、ふだんは海面下にある縄文時代の遺跡です。イルカの骨がたくさん出土しているので、イルカ漁の拠点だったのかもしれません。そう考えると、この辺りで化石化したイルカの耳骨が見つかりやすいのも納得です。見つかりやすいといってもなかなか見つけられませんが、挑戦してみる価値はありそうです。


沖ノ島にある出会いスポットと、映え写真スポット


沖ノ島には、赤い糸とイワシ網が設置された神社、「宇賀明神」があります。




宇賀明神



宇賀明神は嘉保3年〜康和元年(1096年〜1099年)に掛けて安房國司として赴任した「源親元(みなもとのちかもと)」が安房國の発展を願い、嘉保3年(1096年)、倉稲塊命(うかのみたまのみこと)を歓請し、鷹ノ島の弁財天と共に建立したとされています。倉稲塊命は五穀を司る神として平安時代以降、絶えること無く人々の厚い信仰を受けてきた、あらゆる産業の神と言われています。
説によると「宇賀」は「なが」とおなじとされ、「なが」とは「蛇」のことであり「宇賀」は「白い蛇」とも言われているそうです。


昔から、春になるとイワシの群れが島を囲んで海を深紅に染めたことから、宇賀明神の白いヘビと深紅のイワシの出逢いが幸せを呼ぶといわれ、設置されているイワシ網に赤い糸を結ぶと幸せが訪れる「であいスポット」として注目を集めています。




であいスポット宇賀明神


「映え写真スポット」は第二次世界大戦のときに掘られた洞窟で、薄暗い洞窟とその向こう側に見える輝く海との対比が美しく、きれいな写真が撮れるポイントの一つになっています。




手彫りの洞窟


季節を通して、一人でも家族と一緒でも楽しく過ごせる自然豊かな沖ノ島。海沿いを自転車で走るのも気持ちがよく、天候によっては富士山を見ることも。沖ノ島に沈む夕日や、沖ノ島の手前にある館山港辺りから見る館山城の姿も、個人的におすすめします。




館山港から見える館山城


沖ノ島の駐車場は無料ですが、海水浴期間中は環境整備のために使われる「環境保全協力金」のお願いを行っているので、できる範囲で協力して気持ちよく沖ノ島を利用しましょう。「環境保全協力金」についての詳細は、館山市のホームページをご覧ください。
沖ノ島環境保全協力金について:https://www.city.tateyama.chiba.jp/shoukan/page100267.html


NPO法人たてやま・海辺の鑑定団
web:https://umikan.jp/


写真:NPO法人たてやま・海辺の鑑定団、鍋田ゆかり
取材協力:NPO法人たてやま・海辺の鑑定団
文:鍋田ゆかり
ライター。身近な面白い場所や人を取材するのが好き。築100年以上の古民家で、犬猫ヤギとともに田舎暮らしを堪能中。自転車キャンプ、犬連れ車中泊しながら自然を満喫するのが好き。
https://awaawalife.com/


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