米大統領選挙に出馬表明したバイデン大統領のスーツの着こなし、ブランドは?

2023年9月12日(火)12時0分 JBpress

独自の審美眼を貫く、世界のレジェンドたち。政治家から作家、思想家、建築家、ビジネスエリートまで、彼らが身に着ける品々から、その生き様も見えてくる。いかに洋服を楽しみ、相手への印象を考えて装っているのか、ドレスファッションに精通するスタイリスト四方章敬氏が解説。今回取り上げるのは第46代アメリカ大統領、ジョー・バイデン氏。来年のアメリカ大統領選挙に出馬を表明しているバイデン大統領が再選に向けて選挙戦を本格化させている中、スーツやカジュアルなスタイルでどのように民衆にイメージを与えているのか。着用ブランドも解き明かしていく。

写真=アフロ 協力=四方章敬 編集・文=名知正登


民主党の“青”をスーチングにも取り入れてイメージアップ

 2023年7月10日、イギリス・ロンドンのダウニング街10番地に到着したジョー・バイデン米大統領。この後、首相官邸でリシ・スナク首相との会談に臨んだ。アメリカが7月7日に決めたウクライナへのクラスター弾の供与について説明した模様。アメリカとの立場の違いをにじませる英国に理解を求める狙いがあった。

「ネイビースーツに白シャツ、ブルータイといったシンプルで王道のコーディネートに好感が持てます。民主党のシンボルカラー、ブルーを基調にしていますね。スーツが普通のネイビーより明るく、それに合わせてネクタイの色も明るいブルーで合わせて華やかな印象に。公式の場にふさわしいカラーコーディネートとしてお手本になるかもしれません。

 また、個人的に目を引かれたのはシャツの襟型です。アメリカらしいクラシックなレギュラーカラーがかっこいい。唯一残念だなと思ったところはチーフの入れ方です。アメリカ大統領が王道のコーディネートを作るなら、アメリカから流行ったTVフォールドでチーフを入れてほしかったなと思います」。


NOT米国式!?相手に敬意を表したネクタイを締める

 こちらは、前の写真の2日後。2023年7月12日、フィンランドのヘルシンキ空港に到着する。バイデン大統領は北欧首脳会議に出席するため首都ヘルシンキを訪れた。その後の記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻はNATOをより強固にする結果になったとし、「NATOが強くなれば、世界全体が強くなる」と言明した。

「ネイビースーツ、白シャツまでは先ほどのコーディネートと同じですが、こちらのコーディネートはネクタイが明るく派手ですね。コーディネート的にはネクタイが目立ちすぎでブルーシャツとかに変えてもいいのかなと思います。ただネクタイがアメリカ式レジメンタルタイ(ストライプの向きが左上がり)ではなく、英国色レジメンタルタイ(ストライプの向きが右上がり)なので何か意図があるのかな…と思いきや、やはり英国を含めた欧州の首脳たちと対談するからなんですね! 

 いくら世界の大国、アメリカ大統領だからといってあぐらをかかず、相手に敬意を表しているのでしょう。相手を敬いコーディネートを組むのもとても大事なことですね。読者の皆さまもビジネスシーンにおいて仕事内容や、誰と会うかなどで服装を少し変えてみるのもいいですね」。


正統な紺ブレスタイルに遊びを。これぞアメリカの大統領!

 7月4日はアメリカの独立記念日。2023年7月4日、ワシントンのホワイトハウス内の芝生で行われた独立記念日の祝賀会で医療従事者や軍の関係者らおよそ1000人を前に演説。新型コロナウイルス対策が進み、社会が正常化に近づいていると強調する一方で「闘いが終わったわけではない」と述べ、ワクチンの接種を改めて呼びかけた。

「ネイビーブレザー、チェックシャツ、コットンパンツといった正統派なアメリカコーディネート。さらっとアメリカ国旗が入ったベルトを着けているのに目を奪われました! オーセンティックなジャケットスタイルなのにこういった遊びのきいた小物を着用することによって古臭く見えず親近感が湧きます。また、シャツのチェック柄もポイントです。

 大きなチェック柄だと子供っぽく見えてしまいがちですが、遠目からだと無地にも見える小さいギンガムチェックは上品でカジュアルさもあり良いです。いわゆる“紺ブレ”を正統でカジュアルに着こなした、いいお手本です。年を重ねた方が似合うスタイルかも」。


リラックスした“完全オフ”でも、ブルーとホワイトは忘れない

 今年の7月、欧州を歴訪する直前にはデラウェア州の沿岸都市リホボスにある自宅近くのビーチで休暇を楽しんだ。アンダーアーマーのベースボールキャップをかぶり、ポロ ラルフ ローレンのポロシャツ、カメ柄のハーフパンツにランニングシューズ、サングラス姿というバイデン氏が目撃された。

「ショーツにポロシャツといったシンプルなコーディネートですが、これもまた色味を青と白で合わせているのでまとまり感があります。腕時計、キャップの小物までブルーで統一し、それがアクセントとして効いています。他に注目するところはポロシャツですね。ラルフ ローレンの定番のポロシャツですが、洗いざらしで着用しているところや、襟のニュアンスの出し方が完璧! ポロシャツはこれくらいラフに着こなす方がいいです。バイデン大統領は普段スーツとかジャケットのイメージが強いのに、こんなショーツスタイルも様になるのは流石ですね」


 2020年のアメリカ大統領選で勝利し、第46代大統領に就任したジョー・バイデン氏。幼少時代は吃音に苦しみ、上院議員初当選の直後に交通事故で妻子を亡くした過去があることをご存知だろうか。弁護士資格を持ち、29歳の若さでデラウェア州の上院議員に選出。オバマ政権時代には副大統領を8年間務めていたという華々しいキャリアを持ちながらも、常にプライベートな部分で苦労してきた人物なのだ。そのぶん人の痛みが分かるとアメリカ国民から支持を得ている。

 そんなバイデン大統領の服装に目を向けてみよう。装いの中心に添えているキーカラーは青。ブルーは洗練を感じさせる色で民主党のイメージカラーでもあり、好感度も高い。前大統領トランプ氏が使っていた赤に対して、あえてそうした印象を国民に植えつけようと画策したのかもしれない。

 80歳とは思えないスラリとした体型で、ネイビースーツ、白シャツ、ブルータイを締める着こなしは清潔感や誠実さが漂い、トランプ氏とは対極の印象を演出している。バイデン大統領が愛好するラルフ ローレンのスーツやジャケットも「何の変哲もない」と言えるほどのコンサバティブなデザインを基本にしていて、仕立ての良さがうかがえる。服選びにおいてもアメリカの歴史を大切にする姿勢はずっと変わらない。

四方章敬(しかたあきひろ)
1982年京都府生まれ。スタイリスト武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレスファッションに精通し、「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」など、多くのメンズファッション誌からオファーを受ける敏腕スタイリスト。業界きってのスーツ好きとしても知られ、イタリア・ナポリまでビスポークに赴いた経験もある。最近はセレクトショップやブランドと共同でウェアのプロデュースを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。

筆者:名知 正登

JBpress

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