子育てに自信がもてず、あれこれ詰め込みすぎてしまう…。親の不安を軽くする「子育ての引き算」の考え方とは。1万人以上の悩みを聞いてきたモンテッソーリ教師が伝授
2024年12月4日(水)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
「習い事やスポーツ、知育など詰め込みすぎていないか不安」「子育てに毎日一生懸命で疲れている」など、<詰め込みすぎの子育て>に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。1万人以上の子育ての悩みを聞いてきた、モンテッソーリ教師あきえさんによると、自信をもって子育てするためには、<子育ての引き算>が大切なのだそう。世界の約140ヵ国で行われている、子どもの自立と自律を助ける教育方法・モンテッソーリ教育から分かることは——。今回は、あきえさんの著書『詰め込みすぎの毎日が変わる! 子育ての「引き算」』から、一部を抜粋してご紹介します。
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「子育てに自信がもてない」声が多数
実際にこれまで1万人を超える子育てのご相談をいただく中でも、「何が正解かわからない」「こうかかわるのが良いという情報も見たけど、別のところではそういうかかわりは良くないという情報を見た。何をあてにすればいいのか混乱する」というお声をいただくことが多々あります。
それ故に「子育てに自信がもてない」というお声もとてもよくいただきます。
ただ、これは大人一人ひとりの能力や頑張りの話ではなく、私たち子育て世代を取り巻く環境に大きな影響を受けているものです。
だからこそ、変えられること、自分がコントロールできることに目を向けていきましょう。
子育てにどう向かっていくといいのか
不安やプレッシャーを抱えたまま、私たちは子育てにどう向かっていくといいのでしょうか?
ここで少し質問をさせてください。
みなさんは、登山をしたことがありますか? 登山したことがある方も、ない方も頭の中で、初めて登る大きな山を想像してみてください。その山は、登るのにとても時間がかかる大きな山です。どのような山が頭に浮かびましたか?
さあ、これからその山に登ることになりました。どのようなことを考え、準備をしましょうか?
「登頂までにどれくらいの時間がかかるのだろう?」
「どんなルートがあるのかな?」
「荷物は何を持って行くといいのだろう?」
「適した季節はいつで、どんな服装がいいのだろう?」
いろいろな心配事や知りたいことが浮かびますね。事前に準備したいことがたくさんありそうです。
子育ては初めての登山に似ている
私が今、登山についてイメージしていただいたのには理由があります。
それは、登山と子育ては、実はとてもよく似ているからです。子どもの育ちを助ける「子育て」という大仕事もまた、登ったことのない大きな山に登るような長期の挑戦だからです。だからこそ、不安やプレッシャーも大きくなって当然なのです。
(写真提供:Photo AC)
あれこれと情報を集めたり、「これがいい」と勧められたものをリュックにどんどん詰め込んだりしてしまう。
「これも必要かもしれない」
「あれも持っておいたほうが安心だ」
そうして、不安を解消するために次から次へと詰め込んでしまうのです。でも、リュックが重くなるほど、前に進むのが大変になってしまいますよね。
子育てにおいても、同じようなことが起きているかもしれません。子どもにとって“今”必要かよりも、不安を打ち消し、失敗しないために、後悔しないために、あれもこれも詰め込んでしまうことが。
しかし、重いリュックを持って進むのは疲れてしまいます。そもそも、リュックに何を入れたらいいか、どのルートが良いのかわからず迷っている間に日々が過ぎ、子どもはどんどん成長していくため、ますます不安と焦りが募ります。
そんな焦りや不安を抱えていること自体は、とても自然なことです。何も知らない中でスタートした子育てという登山。だからこそ、登山のように何が必要で何が必要ないのかを考えることが大切なのです。
足し算の子育てから引き算の子育てへ
より心地良く、そして楽しく子育てをするために、何を減らし、何を残すべきか。その答えが「子育ての引き算」にあります。
では、「子育ての引き算」とはどういうものなのでしょうか?
「子育ての引き算」とは、あれこれと「足し算」するのをやめて、子育てにおいて本当に大切にするべきことを見極め、必要なものだけを選び取ること。そして、必要ないものは手放していくことです。
そうすることで、より自信をもって、ウェルビーイングな(自分にとってちょうど良い状態の)子育てを実現するアプローチです。
子育てをするとき、誰もが気づくと背負ってしまっている子育ての「ムリ・ムダ・ムラ」があります。
・ムリ:無理をさせてしまう・大人も無理をしないといけない
・ムダ:必要のないもの
・ムラ:一貫性のなさ
です。それらの必要ないものを取り除くことで、子どもと大人、双方にとってより豊かな経験が得られるようになります。
先ほどの登山の例に戻り、自分が登る山に必要のないものは置いていって、適切な道具を選び抜いて登山をしていくとどうでしょう? きっと登山をより余裕をもって心地良く、楽しめるのではないでしょうか。
※本稿は、『詰め込みすぎの毎日が変わる! 子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
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