BIGLOBEニュース サービス終了のお知らせ
平素よりBIGLOBEニュースをご利用いただき、誠にありがとうございます。
BIGLOBEニュースは、2025年6月下旬にサービスを終了させていただくこととなりました。
詳細な日時につきましては、決まり次第ご案内します。長らくのご愛顧、誠にありがとうございました。

「食べたい。とても食べたい」パリ人肉事件・佐川一政が“次に食べたい”と願った「2人の大女優の名前」

2025年4月5日(土)18時0分 文春オンライン

〈 【衝撃事件】殺害した25歳女性をわいせつ→フライパンで焼いて食べたのになぜ「自由の身」に…? パリ人肉事件・佐川一政のその後 〉から続く


 1981年、自宅へ招いたオランダ人の女子留学生(当時25歳)を殺害。遺体の一部を食べたことで、社会に大きな衝撃を与えた佐川一政氏。事件から20年後、佐川が取材にきたカメラマンに明かした「2人の食べたい女優」とは…。長年、報道カメラマンとして活躍する橋本昇氏の新刊『 追想の現場 』(鉄人社/高木瑞穂編)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)



佐川一政氏 ©文藝春秋


◆◆◆


ファインダー越しに見た気味悪さ、弱々しさ、秘めた欲望、耽溺、迷宮──


 事件から約10年後、私はアメリカの新聞の依頼で佐川氏のインタビュー取材に同行した。佐川氏の渡米をアメリカが拒否したことについてのインタビューだった。


 自宅の机の前に座って話す彼の印象は、事件当時とあまり変わってはいなかった。ウエーブのかかった髪が禿げ上がった額に張り付き、やや上を向いた鼻と三白眼、目には力がなく、口を尖らせて喋るのが癖らしい。内気でひ弱な青年という印象だ。ただ、同行の特派員を下から見上げる時だけは、その目に光が宿る。特派員はドイツ系の若く美しい女性だったのだ。


 インタビューを終えて三人で食事に行くことになった。その特派員の選んだ店が、ジョークにも程があるというものだが、ステーキの店だった。佐川氏が油でぎらつく唇を舐めながら、特派員の顔をじっと見つめていたのは言うまでもない。怖いもの見たさで取材に来た女性特派員が大満足で帰ったのも、もちろんのことだ。


 さらにそれから10年後、今度は雑誌の企画で再び佐川氏を取材した。待ち合わせの新宿駅東口に現れた彼は饒舌だった。


「今日はどうも。10年前の取材を覚えていますか?」


「ハイ! 覚えていますよ」と、やや皺枯れた声の答。


 おそらくリップサービスだろうが、彼のサービス精神を垣間見たように思った。


 あれから彼は、数冊の本を出し、さらにアダルトビデオにも出演していた。ビデオのなかで彼は、病的なまでのマゾヒストを演じていたが、それも彼の狂おしいまでのサービス精神の表れかもしれない。


 この日も彼は「今日はどんな感じで撮ります? ショーウインドウのマネキンを見つめるなんてどうでしょうね」と、新宿の人通りの真ん中に立ったり、壁の後ろからチラリとこちらを見たり、自ら率先してポーズをとった。


 ファインダーいっぱいにクローズアップされた彼の顔。気味悪さ、弱々しさ、秘めた欲望、耽溺、迷宮……彼の発するオーラから頭の中に数々の言葉が浮かんでは消える。あの神戸児童連続殺傷事件の犯人少年A(酒鬼薔薇聖斗)は佐川に憧れと嫉妬さえさせたという。


 だが、彼の本質は見えてこない。彼自身、自分が何者なのか問うても答えが見つからず、もがいているのではないだろうか。


 撮影が終わりインタビューになった。彼はパリでの事件の詳細をリアリティーたっぷりに語った。それは、事件の風化を恐れ、自分が忘れ去られていくことを恐れる佐川一政という男の姿だった。


 一方で、彼の語り口は、何の抑揚もなく、感情の起伏も喜怒哀楽も感じさせない、ただ彼の心の中のもやもやしたものが空中に浮遊しているという、まさに“霧の中”だった。


「僕は1か月に1回、聖マリアンナ医科大に通院しているんです。そこで僕と同じように“人を食べたい”という女性と知り合いましてね。いつか死なない程度にお互いを食い合おうと言ってるんです。僕は今でも女性を食いたいと思っていますよ。電車なんかで女性のふくらはぎを見ると食いつきたくなるんですよ」


「食べたい。とても食べたい」佐川の食欲を刺激したのは…


 また、こんなことも言った。


「いま女優の上戸彩さんと鶴田真由さんが、食べたい。とても食べたい」


 私は、霧の中から語られるそんな一言一言を軽くかわしながら、佐川氏の口元を見つめていた。


 これは、彼のサービス精神からくる言葉なのか、それとも本音なのか。その口元から発せられる悪魔のささやき、心の底から突き上げてくる欲望は、佐川一政というひとつの肉体が背負った業なのか。


 だとすると、彼はその業を背負って、冴えわたる満月の裏側のような暗黒の世界を漂っているのかもしれない。そんなことを考えながらも、あのときの私は彼の本質に迫ることはできなかった。


 いや、今でもできないだろう。彼はその業を背負ったまま、黄泉の国へと旅立っていったのだ。人は彼をモンスターと呼んだ。


(橋本 昇,高木 瑞穂/Webオリジナル(外部転載))

文春オンライン

「事件」をもっと詳しく

「事件」のニュース

「事件」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ