発達障害者などを「困った人」扱いで「炎上」の書籍、出版差し止め求める署名開始 当事者「深く傷付き落胆」

2025年4月18日(金)19時34分 J-CASTニュース

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、愛着障害などの人を「職場の『困った人』」と表現し、SNS上で波紋を広げている産業カウンセラーの本について、出版差し止めを求めるオンライン署名が2025年4月17日に始まった。

この書籍をめぐっては、SNSでも出版差し止めを求めるハッシュタグが拡散する一方、出版差し止めには疑問を呈する声もみられる。

「社会的排除や分断を招きかねない内容」

問題になっているのは、4月24日発売予定の「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)。著者は、カウンセラーとして35年のキャリアがあるという神田裕子さんだ。書籍の紹介ページでの説明によると、「職場の『困った人』たち」を、「ASD」「ADHD」「愛着障害」「トラウマ障害」「世代ギャップ」「疾患(自律神経失調症/うつ/更年期障害/適応障害/不安障害・パニック障害)」の6タイプに分類し、対応の仕方を紹介する内容という。

ASDのタイプは「こだわり強めの過集中さん」、愛着障害のタイプは「愛情不足のかまってさん」、「疾患」タイプは「頑張りすぎて心が疲れたおやすみさん」などと表現。帯には「なぜ、いつも私があの人の尻拭いをさせられるのか?」といったコピーが記載、表紙などには「困った人」を動物に例えたとみられるイラストも描かれていた。

なお、著者の神田さんはJ-CASTニュースの取材に、「私の中に差別意識はまったくありません」と説明している。

17日、オンライン署名サイト「Change.org」上で、この書籍について「発達障害や精神疾患患者を差別し、社会的排除や分断を招きかねない内容」として、出版差し止めを求める署名が開始された。

「Change.org」のページでは、書籍が、発達障害や精神疾患の当事者を「真面目ないい人」を苦しませる「困った人」扱いしていることや、イラストで健常者を人間、「困った人」を動物で表現していることなどを指摘。発起人は精神疾患と発達障害(ADHD)の診断を受け、治療中だといい、書籍が販売されることに「深く傷付き落胆し、あらためて自分が『世間のお荷物』であり『厄介者』でしかないことを痛感しました」と心境をつづった。

さらに、「社会や世間に絶望し、自ら命を絶ってしまう方もおられる可能性も危惧されます」とも主張した。

18日夕までに690筆超の署名が集まっている。

出版差し止めが通ると「当事者にも悪手」...反対の声も

Xでは、「#神田裕子著作の出版差し止めを求めます」とのハッシュタグが拡散し、出版差し止めを求める動きも出てきている。

また、出版差し止めを求めているわけではないが、発達障害についての情報時発信や啓発活動を行う「発達障害当事者協会」は、この書籍の表現に抗議する動きを見せている。17日に公式サイトで、「発達障害者を『対応に苦慮する存在』『厄介な存在』として描写していると受け取られかねません」として、三笠書房に表現やイラスト表現に関して適切だったと考えているかどうかを問う質問状を送付したと発表した。

一方で、美術家・漫画家のろくでなし子さんはXで、「発達障害児の親だし、この本に怒る気持ちもわかるけど、出版差し止めが通ってしまえば、今後、発達障害に関するタブー感も強まり、自由な議論も広がらなくなるのは返って当事者にも悪手なので反対します」と見解を述べた。ほかにも、「検閲の禁止や表現の自由に反する」として、反対する意見も見られる。

J-CASTニュース

「障害」をもっと詳しく

「障害」のニュース

「障害」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ