「頂き女子りりちゃん」に懲役9年の実刑判決 なぜか詐欺と性犯罪比べて「重すぎる」、こんな声に弁護士の見解は

2024年4月25日(木)11時20分 J-CASTニュース

「頂き女子りりちゃん」を名乗り恋愛詐欺マニュアルを販売し、自身も3人の男性から合わせて現金1億5000万円以上をだまし取ったとして詐欺などの罪に問われた渡辺真衣被告(25)に対する公判が2024年4月22日に名古屋地裁であった。大村陽一裁判長は懲役13年・罰金1200万円の求刑に対して、懲役9年・罰金800万円の実刑判決を言い渡した。

この判決に、SNSでは、「性犯罪と比べて罪が重すぎるのではないか」といった意見が出ている。一方で弁護士は、今回は性犯罪ではなく詐欺などの罪に問われているとして、重い、軽いを比べることは「難しい」と見解を示した。

「四谷大塚」の盗撮事件は保護観察付きの執行猶予5年、懲役2年

渡辺被告は、男性から現金をだまし取った詐欺罪、恋愛詐欺マニュアルを販売し他人が男性から現金をだまし取る手助けをした詐欺ほう助、そして約4000万円の脱税の罪に問われた。

ところが、SNSでは、3月26日に東京地裁で言い渡された、大手学習塾「四谷大塚」の元講師が教え子の女子児童を盗撮した罪に問われている事件の判決などを引き合いに出し、「性犯罪と比べて罪が重すぎる」とする意見が寄せられている。四谷大塚の元講師は、保護観察付きの執行猶予5年、懲役2年の判決だった。

では実際、今回の判決は「四谷大塚」の事件と比べて重すぎると言えるのか。

盗撮の罪は「法定刑としてはかなり低い部類のものだと理解されている」

弁護士法人リーガルプラス市川法律事務所(千葉県市川市)の小林貴行弁護士は、4月24日、J-CASTニュースの取材に対し、異なる罪を比べて重い、軽いを判断することは「難しい」と見解を示す。

小林弁護士は、「性犯罪、盗撮はもちろん重大な人権侵害ですので、被害者の方を傷つけてしまうような重大な犯罪だと私は思いますけれど」としつつ、法律によってそれぞれの犯罪に対する法定刑がそれぞれ決まっているといい、「法定刑の中でどれほど悪質かというところを見ていく」と説明。

「被告人が犯した罪がどのような罪に当たるのかを出発点にして、その法定刑は何年から何年なのかがまず決まり、その法定刑の中で被告人の犯した行為が重い部類なのか軽い部類なのかを判断します。これに、過去の前科や本人の反省態度などといった一般情状も加味したうえで、最終的に何年の懲役に処するか、罰金はいくらにするか、などといった処断刑が決まってきます」

今回の渡辺被告の場合、法定刑は懲役15年が上限だ。詐欺、詐欺ほう助、脱税は最も重いものでも懲役10年が上限だが、複数の罪に関わっていることから、上限が伸びるという。

一方で、四谷大塚の元講師は盗撮の罪に問われたが、これは懲役3年が上限だ。小林弁護士は、これを規定している性的姿態撮影処罰法は23年施行と比較的新しく、それまでは各都道府県の条例により処罰されていたとして、「これまでの歴史的な流れから、そもそも盗撮という行為自体が、法定刑がかなり低い行為として規定されている」と説明した。

なお、小林弁護士は、「法律自体は国会で決まるので、例えば『盗撮の罪に対して最大3年はちょっと軽すぎるんじゃないか』という世論が多くなれば見直しがなされたり、あるいは『詐欺の10年は重すぎるんじゃないか』という議論になってくれば短くなることもあり得ます。それは政治が決める話だと思います」と変更の可能性についても解説した。

「頂き女子りりちゃん」は「悪質性は指摘せざるを得ない」

ではその上で、今回の渡辺被告に対する懲役9年の実刑判決は妥当と言えるのか。

小林弁護士は、詐欺罪の場合、処罰を決めるうえで一番大きな要素は金額だと説明する。「無銭飲食やタクシーの乗り逃げも詐欺にあたります」とし、そうした金額の低い詐欺も含めて比較すると、「多数の被害者を出していて、金額も非常に大きいという意味では、悪質性は指摘せざるを得ないのかなと思います。悪質な事案として、懲役9年という1つの回答が出てきたのかなと思いますね」と見解を示した。

J-CASTニュース

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