「やっぱり素通りですか岡山」…神戸・広島に劣り自虐的広告で「印象に残ること狙った」
2025年5月13日(火)14時47分 読売新聞
13日で開幕1か月となる大阪・関西万博を契機に、岡山県内へ観光客を呼び込もうと、県がPRに力を入れている。県内を訪れる観光客は、コロナ禍前の水準にまで回復し、さらなる伸長には国内の遠隔地や海外からも誘客が欠かせない。ただ、神戸や広島に知名度で劣る状況は変わっておらず課題もある。(中田敦子)
「やっぱり素通りですか岡山……。」
県は、こう記された新たなキャッチフレーズのポスターやデジタル広告を作製し、万博開幕を控えた1〜3月、関西や九州の主要駅や空港などに掲示した。交通の結節点として利便性が高い反面、観光客が県内にとどまらない岡山の状況を自虐的に表すことで、「印象に残ることを狙った」(県観光課担当者)という。
県が昨年8月に公表した県観光客動態調査によると、2023年に県外から訪れた観光客数は推計823万人。コロナ禍で最も落ち込んだ21年の515万人から回復し、コロナ禍前の19年の998万人に迫る勢いとなった。
地方別では、中国地方(263万人)、近畿地方(241万人)、四国地方(106万人)の順で多く、遠方からの集客が課題として浮かんでいる。
万博は、半年間の会期中に延べ2820万人、1日平均15万人の来場が想定されており、開幕日には11万9000人が訪れた。さらに、4月18日に開幕した現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」も春(5月25日まで)、夏(8月1〜31日)、秋(10月3日〜11月9日)の3会期あり、相乗効果が期待されている。
さらに万博では、想定来場者の1割強にあたる350万人がインバウンド(訪日外国人客)になると見込まれている。県は今年度予算で、万博関連経費として計約2億7800万円を計上した。
しかし、日本政策投資銀行と日本交通公社が昨年実施した訪日外国人の意向調査では、岡山の観光地認知率は11%、倉敷は4%で、神戸の30%、広島の34%に大きく後れをとった。
訪問意向率でも、岡山は3%、倉敷は1%で、神戸、広島はいずれも11%だったことから、県観光課の担当者は「岡山は交通の利便性が高い一方で、周囲に知名度の高い観光地があり、長くとどまってもらえない現状がある」と打ち明ける。
県は8月、万博会場に、県内の魅力を発信するブースを期間限定で出展するといい、同課担当者は「万博という大きなチャンスを最大限に生かしたい」と話している。