コメ不足と価格高騰で日本酒までピンチ 酒米が手に入らない...背景に「やむにやまれぬ事情」が

2025年5月16日(金)12時10分 J-CASTニュース

高騰を続けるコメの価格。2025年5月13日に農林水産省が発表した全国スーパーでのコメの平均価格は前の週から19円下落し、18週ぶりの値下がりとなった。だが、ここで発表された5キロあたり4214円(税込み)という価格は、前年同時期比で2108円高い。去年よりも約2倍の価格である。

江藤拓農水相は13日の閣議後会見で「ひとつの変化で歓迎したいと思うが、消費者が大いに評価するような水準ではなく、まだまだこれからだ」と述べている。

農家・JAは不足する主食用米の生産へ舵を切った

実際、この状況はすでに米飯だけでなく、私たちが口にするさまざまな食物に影響を与えるのは必至である。

ここへきて、農家やJAは主食用米への作付けを増やす動きを強めている。

農水省の調べによれば、2024年産では全国の主食用米作付面積が前年から1.7万ha増加している。さらに2025年産の水田作付け意向調査では、主食用米作付面積が前年比約2.3万ha増加した一方、米菓原料用などの加工用米は減少傾向を示している。

これによって、何が起こるのだろうか。

せんべい・みそ......コメ不足の影で高騰する食品

たとえば、おやつの定番・せんべいは、加工用米の減少に伴い原料価格が上昇し、製造者がコスト高に苦しんでいる。

多くの米菓を展開する岩塚製菓では、人件費・資材費・エネルギー費などの高騰に加え、原料費も上がったことで、この4月に一部製品の価格改定を発表した。

帝国データバンクの調べでは、2024年のせんべい(100g)小売価格は平均149円と過去10年で最高値を記録。この4年ほどで2割超上昇していることがわかっている。

また、近年米国で大ブームを呼んでいる日本酒業界でも、厳しい状況が続いている。

かつて日本酒に使用する酒米は、品質管理に手間やコストがかかることから、主食用米より高値で取引されてきた。しかしこのコメ不足により主食用米の価格が上がったことで、農家が主食用米への作付け転換を図る動きが見られ、酒米の確保が難しくなってきている。一部の蔵元では生産量の見直しも迫られているという。

日本食に欠かせない調味料である「みそ」も、米麹を原材料とする。テレビCMなどでもおなじみのマルコメでは、「現状の価格では供給に支障をきたす状況」となったとして、この4月から値上げを行っている。

「コメ価格は決して高くない」とJA全中会長

主食用米不足により、家畜の飼料として使われる飼料用米の作付けも減少している。

農水省では、生産者団体による飼料用米の集荷・流通体制が確立されていることから、主食用ほどの高騰は抑制できるとしているが、そのリスクへの懸念は大きい。

家畜の餌は飼料用米やトウモロコシ、麦を混ぜて作るのが一般的だが、ブランド肉──特にブランド豚肉では、飼料用米を多く使っていることをアピールする場合も多い。

さらに近年の円安傾向により、主に米国から輸入しているトウモロコシの価格も5年ほどで倍になっており、生産者にとってはダブルパンチの状況である。

そのようななか、5月13日の定例会見で全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長は、「コメ価格は決して高くない」「長年にわたり、生産コストをまかなえていない極めて低い水準だった」と発言。

高まる消費者の負担や、流通に深く関わるJAの責任をさておいて、米価高騰は農家を支援するために当然だと言わんばかりの発言には、非難が集まっている。

令和のコメ騒動は、まだまだ続きそうだ。

J-CASTニュース

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