空自練習機墜落 事故が多発する原因は何か

2025年5月16日(金)5時0分 読売新聞

 自衛隊でまたも深刻な事故が起きた。墜落した練習機に搭乗していた隊員の救助に全力を挙げるとともに、事故原因の究明を急ぐ必要がある。

 航空自衛隊のT4練習機1機が空自小牧基地(愛知県小牧市)を離陸した直後にレーダーから消え、約10キロ・メートル離れた犬山市の農業用ため池に墜落した。

 池付近で機体の一部などが見つかったが、搭乗していた1尉と2尉の幹部自衛官2人の行方は分かっておらず、自衛隊や警察、消防が捜索している。

 池の周辺には観光施設や民家、学校があり、一歩間違えれば大惨事につながっていた。

 事故当時は晴れていて視界も良好だった。このため、エンジンや操縦系統に突発的なトラブルが起きた可能性が指摘されている。

 事故機は急に池に向かったという目撃情報もある。被害を最小限にとどめるため、機体に異常を感知したパイロットが回避行動を取った、との見方も出ている。

 T4は、主にパイロットの養成を目的とした2人乗りの国産航空機だ。運動性能が高く、空自の曲技飛行隊「ブルーインパルス」でも使用している。

 今回は訓練ではなく、自衛官2人が拠点としている宮崎県の新田原基地に戻る要務飛行の途中だった。空自は、保有している約200機のT4の飛行を当面見合わせる。機体の総点検を行い、安全管理に万全を期さねばならない。

 空自は、事故調査委員会を設置した。機体の回収を急ぐとともに、乗員と管制官の間の交信内容を調査し、何が起きたのかを解明することが不可欠だ。

 空自は現在、練習機や戦闘機に、機体の動きを記録するフライトデータレコーダーを順次搭載している。だが、事故機は36年前に製造された古い機種のため、搭載していなかった。事故原因の特定が難航することが懸念される。

 自衛隊機の墜落事故は近年、相次いでいる。

 2022年には空自の戦闘機が訓練中、石川県沖に墜落し、2人が死亡した。23年には陸自のヘリコプターが沖縄県の宮古島沖に落ち、10人が亡くなった。24年には海自の哨戒ヘリ2機が太平洋上で衝突し、8人が命を落とした。

 毎年のように重大な事故を起こしていては、自衛隊に対する国民の信頼を失いかねない。

 人手不足に陥る中、機体の整備能力や操縦技術の練度に問題はないのか。自衛隊は背景事情を含めて調査を尽くすことが重要だ。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「墜落」をもっと詳しく

「墜落」のニュース

「墜落」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ