日産リストラ 反転攻勢に向けた新戦略示せ
2025年5月16日(金)5時0分 読売新聞
日産自動車が四半世紀ぶりの大規模なリストラ策に踏み切る。自動車産業は裾野が広いだけに、日本経済への打撃も大きい。反転攻勢に向け、早期に戦略を描いてほしい。
日産は2025年3月期の連結決算を発表し、最終利益が6708億円の赤字に転落した。過去3番目の赤字額となる。26年3月期の業績予想でもトランプ関税により営業利益が最大4500億円減少するとの見通しを示した。
合わせて公表した大規模なリストラ策では、27年度までに、世界に17ある完成車工場のうち7工場を閉鎖する。神奈川、福岡、栃木の3県に計五つある国内工場も検討の対象になると説明した。
国内で大規模な閉鎖に踏み切れば村山工場(東京都)以来、四半世紀ぶりとなる。自動車産業は取引先が多い。地域の雇用や経済への悪影響は大きく、不安が広がりかねないだろう。
日産は長年にわたり日本の自動車産業の中核で、17年度は世界で約580万台を売った。
販売不振を受け、過剰生産体制を見直し、中国を除く世界各国の年間生産能力を50万台削減して250万台とする。世界各国の拠点で働く従業員の15%に相当する2万人規模の人員削減も行う。
今回の大規模リストラは、カルロス・ゴーン元社長の主導で1999年に打ち出した大胆なリストラ策「リバイバル・プラン」に匹敵するもので、衝撃的だ。
懸念されるのは、当時と異なり、リストラ後の反転攻勢に向けた道筋が見えないことである。
日産は、昨年12月にホンダとの経営統合方針を公表し、100年に1度と言われる変革期に臨む戦略だったが、わずか1か月半で破談となった。それから3か月で今度は大リストラである。経営の迷走は目を覆うばかりだ。
日産が苦境に陥った最大の要因は、消費者を引きつける「売れる車」がないことにある。
過剰な値引きによる販売台数の拡大に走って、ブランド価値を損ねてきたと指摘される。商品開発力も低下し、機動的に商品を投入する経営が出来ていなかった。
米国市場に対しては、人気の高いハイブリッド車の投入が遅れている。まずは黒字体質への転換を急ぎ、商品開発力の強化を進めていくしかあるまい。
世界の自動車産業は中長期的には電気自動車への移行が進むだろう。巨額の研究開発費が必要なため単独での生き残りは難しい。新たな提携戦略も求められよう。