クルーズトレイン「四季島」はガラスで光を自在に調節!

2018年8月21日(火)10時55分 ウェザーニュース


2018/08/21 10:40 ウェザーニュース

いま話題を集めているJR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」(以下、四季島)の窓ガラスをめぐる最新技術を紹介します。

ガラスで光を自在に調節!

「四季島」をはじめとしたクルーズトレイン(周遊型豪華観光列車)が高い人気を集めています。車窓を流れる景色は、列車の旅の醍醐味のひとつですが、それを演出しているのが窓ガラスです。
「四季島には、最新技術を駆使したガラスが複数組み合わせて使われています」と、国内外の多くの鉄道車両にガラスを供給しているAGC株式会社の大東英幸さん(アジア事業本部グループリーダー)が説明します。
「特筆すべきは、展望エリアと運転席の窓です。展望エリアの窓には、調光ガラスが使われています。調光ガラスとは、スイッチ1つでガラスの色を透明からダークブルーに変えることができ、太陽光の透過率を調節できるもの。
合わせガラスの間に特殊な粒子が封入してあり、通常は粒子がランダムに存在するため、光が吸収・散乱されてダークブルーに見えます。スイッチを入れると、電圧により粒子が同じ向きに整列し、ガラスが透明になります。ガラスそのものがブラインドやカーテンの役割を果たすわけです」(大東さん)

まぶしさをカットし、景色が楽しめる(画像提供:AGC株式会社)

さらに、透明モード時にも車内を快適に保つ工夫があります。
「ガラスに、特殊なコーティングが施してあります。紫外線や赤外線をカットする効果があり、透明モードでも日焼けや暑さを軽減することができます」(大東さん)

大空を楽しむための新技術

モダンなデザインの四季島でも目を引くのが、運転席上部から前部にかけてのダイナミックな窓です。先頭の展望車両からも、開放的な視界が楽しめます。ここには、「曲げ電熱合わせガラス」が使われています。

先頭の展望車両では運転席のガラスを通して眺望を楽しめる

「合わせガラスは、2枚のガラスをフィルムで圧着加工し、衝撃に強く、破損時にも破片が飛び散らないようにしたもの。それにヒーター機能を組み込んだのが、電熱合わせガラスです。
ガラスに挟み込んだフィルムに十数μm径(髪の毛より細い)の電熱線を張り巡らせてあり、必要に応じて通電加熱してガラスの曇りを防ぎます。電熱線は目をこらさなければわからないほど細く、視界が遮られることもありません」(大東さん)
四季島では、大開口で緩やかに曲がった運転席のガラスを通して、乗客も運転席越しにも眺望を楽しめるように考えられています。
「ガラスの軟化温度は600℃以上ですが、フィルムの耐熱温度はそれより低く、合わせガラスの状態では曲げ加工ができません。そこで最初にガラスを狙った形状に曲げてから、フィルムと電熱線を間に挟み、圧着加工して作っています」(大東さん)

ほかにも、客車にカーブを描いた形状の「高断熱ペアガラス」が使われています。2枚のガラスの間に乾燥空気層を挟み込んだ「ペアガラス」の内面に、特殊な金属膜をコーティングしたものです。赤外線カット率が通常のペアガラスの3倍以上で、高い遮熱・断熱効果が得られます。
四季島に限らず、鉄道車両のガラスは基本的にオーダーメイドとなり、特徴的なものが多いといいます。
「クルーズトレイン『ななつ星 in 九州』では、フラットな形状の『高断熱ペアガラス』が使われました。こういった最新技術は、鉄道車両に限らず様々なシーンに採用されるガラスの未来を示すものかもしれません」(大東さん)
知ってから乗れば、また列車の楽しみが広がりそうですね。


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