猛暑による今年の新米へのダメージとは? 美味しく炊くコツをプロが解説

2023年10月27日(金)5時10分 ウェザーニュース

2023/10/27 05:00 ウェザーニュース

今年も新米の季節がやってきました。米穀店やスーパーマーケットなどの店頭には、すでに「令和5年産米」のシールが貼られた全国各地の銘柄米が並び始めています。
ウェザーニュースで「今年、もう新米を食べましたか?」というアンケート調査を実施したところ、「食べた」という回答がすでに4割近くに上っているようです。

この夏は記録的な猛暑が続き、新米への悪影響が懸念されます。今年の新米の出来や特徴、おいしく炊くポイントなどについて、“お米のプロ”である「五ツ星お米マイスター」の東京・原宿「小池精米店」三代目店主・小池理雄(こいけ・ただお)さんに解説して頂きました。

“出来が良い米”とは?

そもそも米の「出来の良し悪し」というのは、どのようなポイントで判断されるのでしょうか。
「品種としてのポテンシャルが十分発揮されているものが、“良い米”ですね。見た目だけの話だと、粒に光沢があってぷっくりしていてる。そしてしっかりとした飴色をしているのが“良い玄米”です。
こういった『見た目が良い玄米』に仕上げるのは生産者さんの乾燥・調整技術によるところもあるのですが、今年のように猛烈な暑さの年の場合は、なかなかカバーしきれないところがあります。そのため、今年の玄米は米粒の背中や腹に背白・腹白と呼ばれる白い筋が入る『高温障害』が多くみられます。
なお、なかには岐阜県産『いのちの壱』や、石川県産『能登ひかり』のようにもともとの品種特性としてそういった筋が入るお米もあります。
精米業者の立場からすると、歩留まり(玄米を精米して白米になった際の重さの割合)が高い米が“良い米”でもあるのですが、『高温障害』が出ているお米は歩留まりがよくないため、悩ましいところではあります」(小池さん)
玄米の等級は農産物検査法に基づいて定められています。検査官が米粒の状態を目視し、形が整った状態を示す「整粒」の割合などによって1〜3等と規格外とに格付けされます。
整粒割合が70%以上で「被害粒・死米・着色粒・着色粒・異種穀粒および異物(稲わら、もみ殻など)混入の計」15%以下の米が1等、整粒60%以上/被害粒など20%以下が2等、整粒45%以上/被害粒など30%以下が3等とされています。含有水分は1〜3等とも15%以下です。

猛暑によるダメージは大きかった米は?

今夏の猛暑が新米に与えた影響は大きかったのでしょうか。
「コシヒカリはもともと暑さに弱い品種のため、猛暑によるダメージは大きかったと思います。特に新潟県では渇水も相まってかなりの影響を受けています。例えば弊社が仕入れている魚沼産のお米は1等がなく2、3等だけ。山形県に近い地域ではオール3等ということで、私も経験したことのない情勢になっています。
そのため、今年の新潟県産コシヒカリは『食感』があまりよくない気がします。
私の店では扱いがありませんが、秋田県産『あきたこまち』も猛暑の影響を受けているようです。
もちろん、生産者さんの技術や産地の環境、品種などによって等級の程度にはばらつきがあります。同じ新潟県内でも品種が違えばそこまでの情勢はではありませんし、コシヒカリでも糸魚川市では標高が100m下がっただけで等級が落ちたという話も聞いています。
今年の新米はまだ出そろっていませんが、11月初旬になればほぼ出そろいます。弊社では現在、新潟県魚沼産コシヒカリ、青森県産『つがるロマン』、滋賀県高島市産『コシヒカリ』、先ほど紹介した『銀の朏』、三重県産『結びの神(品種名・三重23号)』などが入荷済みです。
三重県の米は例年と変わらず良い出来でしたが、このようび弊社のラインナップでは新潟県産コシヒカリの品質が目立って悪い状況です。
とは言え新潟県以外の産地であっても、精米するとおしなべて歩留まりが悪く、酷暑の影響はどの産地でもゼロでは無かったのかな、という印象ですね。
夏が暑いとかえって米粒内のたんぱく質が減り、ごはんとしての硬さが減るので悪いことばかりではありません。また品種の中には『つや姫』(山形県など)や『にこまる』(高知・愛媛県など)、『きぬむすめ』(島根県など)は、もともと暑さに強い品種もあります」(小池さん)

価格はやや高めに推移!?

価格やその他の面の状況はいかがでしょうか。
「全般的に今年の新米の価格は、結構上がっていますね。新潟県産コシヒカリは2等・3等がメインのため下降傾向ですが、同じ新潟県産米でも『つきあかり』を例に取ると、60kgで1400円程度上昇しています。
米は自然相手の農産物ですから、消費者の皆さんも『1等米が少ない』『品質が悪い』などといったネガティブな面だけに注目するのではなく、“こういう年もあるよね”と、毎年のお米の出来具合を楽しむくらいの気持ちで新米を味わっていただきたいと思います」(小池さん)

新米を美味しく炊くコツ

新米をおいしく炊くポイントはありますか。
「今年の新潟県産コシヒカリは普通に炊くと柔らかくなりますから、水に漬ける時間を若干短くするとか水の量を減らすなどの工夫が必要です。
ただし、新米は水に漬けることによってうまみや甘みが引き出されますので、水を減らすことで“食感はいいけど、味はいまひとつだな”と感じてしまう可能性はあります。水にしっかり漬けていないのに炊飯器の『早炊きモード』を使うのも、同様の理由で、個人的にはあまりおすすめできません。
ここ最近の新米の特徴でもあるのですが、暑さの影響で弾力性に乏しいお米となっている場合が多くみられます。そのため水を減らすと“新米らしさ”が失われてしまうかもしれません。『普段どおりに炊いてみて、気になるようであれば水を減らしてみてください』というアドバイスはしています」(小池さん)
今夏の猛暑と水不足によって新潟県産コシヒカリは大きなダメージを受けたと報じられていますが、小池さんは「うまみ・甘みなど味には問題がない」といいます。
他の品種や産地も含めて色々なお米を試してみて、自分好みの「令和5年産米」を見つけてみて下さい。この時季ならではの新米の味わいを楽みましょう。

取材協力
小池精米店(東京・原宿)三代目店主・小池理雄さん

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