《Xと違って『アダルト広告』も『思想強めのインフルエンサー』もないけれど…》「mixi2」が“一過性のブームで終わる”可能性がある理由

2024年12月26日(木)12時0分 文春オンライン

 すでに登録者数は120万人を突破——mixi2が話題だ。同アプリは株式会社MIXIがリリースした完全招待制の短文SNSで、かつてmixiを使っていた40〜50代は歓喜に沸いている。しかし、今後拡大するためには「若者人気の獲得」や「ビジネス利用」がカギとなる。mixiと馴染みの薄い若者たちは同アプリをどう見ているのか? ビジネスパーソンが注目すべきSNSなのか? ITジャーナリストで成蹊大客員教授の高橋暁子氏が解説する。



中年世代は大喜びだが…「mixi2」の明暗はいかに(画像:公式サイトより)


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「広告ゼロ」従来SNSへの不満が解消されたmixi2


 執筆現在、mixi2が中年世代の間で爆発的に広まっている。それは間違いなく、「mixi」の名を継いでいるからであろう。そこから連想される、かつてのつながりや思い出が楽しいのだ。


 招待制をうたうが、一つの招待から何人でも参加できる。筆者がFacebookで早速、招待用のURLを投稿したところ、数十名がそこから参加してくれた。普段は特に反応がない人たちも参加しており、改めてmixiの中年世代からの人気ぶりに驚いている。


 近年はXやFacebook、InstagramなどほかのSNSへの不満が募っていたことも、mixi2人気につながっている。従来のSNSはとにかく広告がひどい。詐欺広告だけでなく、最近はコンプレックスを過度に刺激するもの、子供には決して見せられないアダルト広告も多く表示されるようになった。特にXについては、インフルエンサーによって拡散された投稿が優先表示されるようになったため、友人の投稿が見づらくなっている。


 翻って、mixi2はなんと広告ゼロ。フォローした相手の投稿が時系列で並ぶので、とても見やすい。人気の投稿を見たければ、発見タブから「ユーザーの身近ではやっていること」が閲覧でき、その快適さに驚く声は多い。


 かつてmixiを利用していた中年世代なら、楽しめることは間違いない。しかし、ビジネスとして成功するためには、もっと若い世代——たとえばZ世代などへの拡大が必要だ。では、若者たちはmixi2の登場に、どんな感想を抱いているのか?


若者はmixi2をそもそも認知していない


 筆者が客員教授を務める大学の講義で、大学生たちにmixi2の利用状況を聞いた。リリースから4日目のことで、筆者のSNSではmixi2の招待や感想などで埋め尽くされている状態のときだった。


 大学生16名中、mixi2を知っていたのは4名。利用者はなんとゼロだった。ほとんどがいぶかしげな表情をしており、本当に何も知らないことが伝わってきた。


 Z世代といえば、SNSが大好きな世代で、複数のSNSを器用に使いこなすことで有名だ。しかもSNSやITリテラシーについて学ぶ筆者の講義を受講しているのだから、一般の若者に比べてSNSに対する関心度が高いことは間違いない。それにもかかわらず、mixi2はまったく届いていないわけだ。


若者は「親世代が使うSNS」を使いたくない


 そもそも若者世代は初代mixiを知らない。今年の前期講義中に272名にSNSの利用状況についてアンケートを採ったところ、Instagram(94.9%)、X(80.5%)、TikTok(65.4%)、Discord(19.1%)、Threads(12.5%)という結果に。mixiを利用している学生は0.4%——1名しかいなかった。


 最初のmixiが誕生したのは2004年、学生たちの生まれた頃だ。その後、スマホへの最適化が遅れ、FacebookやTwitter(X)などの競合に押されるような形で失速していった。


 学生からしたら、自分が生まれてから小学生の頃まで大人たちの間で流行ったSNSなど興味の持ちようがない。mixiを知っている学生も、「親が使っていたもの」くらいの印象にすぎない。


 InstagramやTikTokのように、一般的なSNSは若者が利用し始めてから、年上世代に広がっていくことが多い。大人が参加し始めると、若者はそこから撤退し、新しいSNSへ移るのが常。すでに中年世代が主流を占める、mixi2を若者が使いたくなるとは思えない。


 となると、mixi2が若者世代へリーチを広げるのはまず厳しい。すでに認知度、好感度を得た、購買力のある中年世代への支持をさらに高めるほうがビジネスとしても得策だろう。しかし…。


mixi2の「収益化」が見えづらいワケ


 mixi2ユーザーの身近で流行していることが「おすすめ」として表示される仕組みは、たしかに居心地がいい。反面、バズっている投稿が優先表示されない。つまり、それは「拡散しづらいSNS」とも言える。拡散しづらいということは、企業やメディアが公式アカウントを作る意味や、インフルエンサーが参入する意味もあまりない。


 広告が出ない仕組みは確かに心地良いが、SNSの収益モデルは広告が主流で、ユーザーの属性に合わせたものを出稿できることがこれまでの強みだった。


 インフルエンサーや企業が参入してくれない、広告も出稿してもらえない…となると残る収益源としては、機能追加などができるプレミアムアカウントなどへの「ユーザー課金」が考えられる。初代mixiが流行していた時代は、「課金してもいいからなくなってほしくない」との声もあったので、これが一番、現実的に見える。


 現時点ではビジネスとして成功させるには、多くの壁が立ちはだかるmixi2。収益性のあまり高くなかった初代と同じ轍を踏んでしまうのか? それとも変身を見せるのか? どこか不器用で優しいmixiが戻ってきたのは嬉しいが、その不安はまだ拭えていない。


(高橋 暁子)

文春オンライン

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