ライバル選手と差をつける”アスリートのためのライフスキル”

2023年2月15日(水)11時0分 ココカラネクスト

 成功と失敗を繰り返しながら日々多くの練習を繰り返しているアスリート。近年、社会生活においてより良く生きていくためのスキルとしてメンタルトレーニングの中でも”ライフスキル”が注目されています。ライフスキルを意識し、身につけることで日常生活におけるあらゆることが円滑に進み、格段に生活が豊かになります。今回は、ライフスキルについてお話します。

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世界的にも重要視される”ライフスキル”

世界保健機関(WHO)から”日常生活に生じるさまざまな問題や要求に対してより建設的かつ効果的に対処するために必要な心理社会的能力”と定義されている”ライフスキル”です。世界的な教育フォーラムにおいても”万人のための教育”とも称されます。

単に生活に必要な技能だけではなく『習得することは国家としての目標達成や個人・社会が必要とするニーズを大きく上回っている』と指摘されたことからライフスキル教育の重要性が大きく注目されるようになりました。

わかりやすく簡単に言えば、社会生活で自立し、円滑に良く生きていくためのスキル。集団生活での人間関係を築くために必要となるスキルでもあります。言葉として意識付けをすることで自分は日頃行えていなかったことなどを再認識し仕事などをより円滑に進めることができます。

ライフスキルという言葉だけを聞くとピンとこない人も多いと思いますが、物心ついた頃から家族など関わる人から自然と教えられてきたこともライフスキルの一種です。そのため育ってきた環境や得た知識が記憶に残っているのかそうでないのかによって多少の個人差が生じます。

しかし常日頃、自然に行っている会社のマニュアルや学校の規則などで定められていることもライフスキルの要素が多く入っているため、多くの人が義務教育の学校生活を過ごすことである程度のライフスキルが身につくのです。特に若者が成長する過程で直面するさまざまな問題で事件に巻き込まれる可能性も高く、社会全般において重要視するべき問題でもあります。

もちろん学問のみならず、教育現場においてもライフスキルを教える指導者の知識や認識も非常に大事な課題となってきました。エイズなどの感染症や若年妊娠などの性的問題、飲酒や喫煙、ドラッグやハーブなどの薬物乱用、そして自殺にも繋がりかねないうつ病などメンタルヘルスの問題を早期発見や予防するためにもライフスキル教育は世界各国でも重要視されている問題があります。

特に女児・女性にとってライフスキルを向上させることは、”リプロダクティブ・ヘルス/ライツ”に繋がる問題だと言われています。リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、国際人口開発会議において『女性の健康』という視点で月経、避妊、中絶や出産、婦人科的な疾患などの性と生殖に関わる問題全てを捉え直す新しい概念として提唱されているものです。

女子差別撤廃条約においてもリプロダクティブ・ヘルス/ライツは、女性人権の一種として”いつ子供を産むか産まないかの自由、安全で満足いく性生活、安全な妊娠や出産、子供の健康な発育など健康支援の必要性も重要視されているのです。

メンタル要素が強い”10種類の具体的スキル”

常日頃から自らの限界に挑み続けるアスリートにとってパフォーマンス向上のために、より有意義なライフスキルを身につけることが重要になってきます。意思決定、問題解決、クリエイティブ思考、批判的思考、コミュニケーション、対人関係、自己認識、共感性、情緒対処、ストレス対処が世界的に共通する10種類のライフスキルがあります。

まず1つ目に、生活する中で建設的に決断する能力として必要となるのが”意思決定”です。

2つ目に、生活していく上で起こる問題を建設的に解決する能力として必要となる”問題解決”です。特にメンタルヘルス的にもストレスと向き合う方法として大きな課題となっているスキルとされています。

3つ目に、意思決定と問題解決を実行するための代替案や行動などを考える能力として必要となる”クリエイティブ思考”。

4つ目に、情報を分析し客観的に判断する能力として必要となる”批判的思考”です。

5つ目に、文化やシチュエーションに適応するように自身の気持ちを言語や行動で表現する能力として必要となる”コミュニケーション”。

6つ目に、ポジティブに人間関係を築くための能力として必要となる”対人関係”です。

7つ目に、自分自身の性格の長所や短所そして願望などの望まないことを認識する能力として必要となる”自己認識”。

8つ目に、他者の生活や気持ちが自身の行動によってどのように感じるのかを想像する能力として必要となる”共感性”です。

9つ目に、自身や他者の感情がどのように影響するのか認識し適切な感情で対応できる能力として必要となる”情緒対応”。

最後に、日常生活のストレスを認識しどのように影響するのかコントロールできる能力として必要となる”ストレス対処”です。

10種類全ての共通点は、どれも心理的な要素である能力なことがわかります。ライフスキルにおいてもメンタルは、非常に重要なものなのです。

10種類の”アスリート的ライフスキル”

練習や特訓をすることが、何よりのライフスキルとも言えるのがアスリートです。目標を設定するスキル、考える力、最善の努力、失敗の挽回力、コミュニケーションスキル、礼儀やマナー、感謝する心、謙虚な心、ストレスマネジメントスキル、体調を管理するスキルの10種類がアスリートにとって必要な具体的スキルです。コミュニケーション、ストレスや感情などのメンタル的な要素がさらに強く入っています。

簡単に言えば、チームワークやリーダーシップ、感情をコントロールすること、目標の設定や達成、練習での成功と失敗の試行錯誤、パフォーマンス発揮する際のプレッシャーという流れのなかで身に付くスキルです。有名アスリートでは大谷翔平選手、小平奈緒選手などが特に”ライフスキル”が強いアスリートと言われています。

まず大会や試合に向けて”目標を設定するスキル”を身につけます。練習をする上で、意思疎通などで”コミュニケーションスキル”も向上してきます。そして大きなプレッシャーを感じながら大一番でパフォーマンスを発揮する経験をすることで”ストレスに対処するスキル”が身につきます。

さらにストレスを”マネジメントするスキル”と”体調を管理するスキル”など練習を積み重ね、大会などを経験していくことでアスリートとして必要なライフスキルが、自然な流れで身につけることができます。

しかし、スポーツをしていれば誰でもライフスキルが身につくわけではありません。意識を持って目標設定し、どのような気持ちで努力をしてきたのか、そんな経験を積んできたのかによって身につくライフスキルが異なります。

例え同じ指導者からコーチングを受けたとしても、同じような運動能力や技術であっても”ライフスキルの身につけ方によってライバル選手との差をつけることができる”それがライフスキルなのです。

今回は、ライフスキルについてお話しました。アスリートのみならずビジネスでも役立つスキルです。最高のパフォーマンスを発揮するために身につけておきたい重要なライフスキル。トップクラスの才能を持ちながら”才能を活かしきれていない”というアスリートにも試していただきたいのが、ライフスキルを見直すことです。

自身の意思や感情を理解することで練習が円滑に進み、人間関係が良好になることでストレスも安定します。結果的に良いパフォーマンスが発揮できれば、大会でも良い成績を残せる確率がグンと高くなるのです。今後もアスリートの皆様のご活躍を願い、より良い情報を発信していきます。

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。

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