33年間変わらぬフォルムのJUKI職業用本縫いミシン。「SL-700EX」が2023年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞。ユーザーに寄り添った機能拡張で市場を席捲

2024年2月16日(金)13時12分 PR TIMES STORY

  JUKI株式会社は1938年の創業以来「ものづくり」を社業として、工業用ミシン事業を中心に家庭用ミシン事業など、7つの事業を展開しています。

各事業の技術から生まれた製品は、衣服、靴、鞄などのファッションを始め、自動車のシート、エアバッグなどのノンアパレル商品、そして、スマートフォン、医療機器など電子基板を搭載したハイテク製品まで多岐にわたり、世界185カ国のお客様にご使用いただいています。

 JUKIは、「縫う=sewing」から進化、発展した技術で、人々の暮らしと産業の発展を支えています。

昨年、JUKIの家庭用ミシンの一つである職業用本縫いミシン「SL-700EX」が、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞しました。104件の審査対象の中から6件が受賞し、そのうちの1件に当社の職業用本縫いミシン(以下、職業用ミシン)「SL-700EX」が輝きました。

ロングライフデザイン賞とは

 受賞した「SL-700EX」は、33年前に発売した職業用ミシン「TL-90」から一度もフォルムを変えることなく、ユーザーに寄り添った機能を開発・追加して進化させてきたミシンです。

 このストーリーでは、33年前に発売したミシンを起点に、職業用ミシンが“プロ用”という位置づけから“一般ユーザー用”へと、活用の幅を広げてきた取り組みについて、関係者の言葉を交えてご紹介していきます。

1980年代までの職業用ミシン市場とJUKIの状況

職業用ミシンは、まだ既製服が普及していない時代に、オーダーメイドの服作りを請け負う仕立屋さんなどが職業的に使うことから、その名が付けられたと言われています。

JUKIでは1954(昭和29)年に職業用ミシンの初代機「TR-7」を発売、1976 (昭和51) 年には2代目「TL-72」、1983(昭和58)年に3代目となる「TL-82」を発売しています。この時代の職業用ミシンは、工業用ミシンと同じ鋳物でできて重量があり、またテーブルに固定されているため日常的な移動は困難で、重厚感がいかにも“プロ用”というものでした。

JUKI職業用ミシンの基点となった33年前に発売した「TL-90」

 これまでの職業用ミシンを“プロ”だけでなく、“一般”へ普及させるきっかけをつくったのが1990(平成2)年4月に発売した「TL-90」です。

 当時、プロを目指す服飾学校の学生などから、職業用ミシンの軽量・ポータブル化のニーズが出てきていましたが、JUKIには提案できる製品がありませんでした。販売代理店からも“工業用ミシン世界トップのJUKIが作る職業用ミシン”への期待の声をいただいていました。

こうした背景があり、新しい職業用ミシンのコンセプトは、“軽量・ポータブル”で、“工業用ミシンの技術を搭載”し、かつ“スタイリッシュな外観”であることに決まりました。

 当時の企画担当者も、「コンセプトが明確だったため、開発部門やデザイン部門もすんなりと受け入れてくれ、全員が同じベクトルで開発プロジェクトのスタートを切ることができた」と振り返ります。

 他社では、軽量化のためにプラスチック素材を用いたミシンもありましたが、JUKIは軽量化を図りながらも、耐久性や縫いの安定化を実現できるアルミダイカストフレームを採用しました。細かいところまで形状を実現できるアルミ素材の特性を活かすことで、デザインの自由度も上がりました。

 フォルムには、デザイン部門のこだわりがありました。「TL-90は、滑らかな形状や質感のあるデザインを目指した。全体のフォルムは嗜好性に偏らずスタンダードなデザインにし、広い縫製空間を確保したフトコロ 、高さを抑えたボディ、面部カバーは上から下にかけて曲線形状を変化させたほっそりした針元、そしてミシン本体を支えるベッドは、船底のようなイメージに仕上げた」。また当時のミシンは、操作部がごちゃごちゃしていたため、触るのも戸惑うくらいだったため、ミシン全体のフォルムに内在させ、すぐに操作できるようなレイアウトにしました。

 機能面での最大の特徴は、職業用ミシンに自動糸切り機構(縫い終わりにボタンタッチで上糸、下糸が同時に切れる仕組み)を搭載したことです。スタイリッシュなボディには、工業用の自動糸切り機構をそのまま組み込むことができなかったため、キーパーツは工業用ミシンのものを使用して品質を維持しつつ、コンパクトに収める工夫をするなど、開発においては様々な試作・検討を行いました。

こうして工業用ミシンと同様の機能を数多く取り込むことで、生地の送り力が強く、薄い生地から厚い生地まで、綺麗でしっかりとした「縫い目」を実現したJUKI初の軽量・ポータブルでスタイリッシュな職業用ミシン「TL-90」が誕生しました。

 企画担当者は振り返ります。「企画通りのミシンが完成し”これは売れる”という自信の半面、高い目標を達成できるだろうかという不安があった」。入社3年目で初めて任された大きな商品企画でした。

ところが、その心配をよそに、全国各地で開催した新製品発表会では、参加した方々から「期待以上のミシンだ」との大きな賞賛を受け、「TL-90」は販売計画の3倍を超える大ヒット商品となりました。

縫い目の美しさがキルターに評価。「キルト大国」アメリカへの挑戦。

国内では大ヒットとなった「TL-90」ですが、アメリカ進出は簡単ではありませんでした。国内で好評だったアルミダイカストフレームが安っぽいと受け止められ、その割に値段も高いと評価されたのです。

 一度は断念した職業用ミシンのアメリカ進出ですが、数年後に転機を迎えます。アメリカでは、母から娘へ、そして孫へと引き継がれるキルト文化が古くから根付いており、ミシンをキルト制作のために使用している”キルター”と呼ばれる方がたくさんいます。日本ではミシンと言えば「直線的に縫うもの」という固定観念がありましたが、アメリカのキルターは、生地を奥側に送る”送り歯”を使用せず、生地を自在に動かしながら、縫い目で一筆書きの絵を描くようにミシンを活用していました。この姿を見た時、「こんなミシンの使い方があったのか!」と衝撃を受けたと担当者は話します。

 多くの縫製物は、縫い目が表に出ることはありませんが、キルト作品は縫い目が勝負です。アメリカでは、職業用ミシンの「縫い目の美しさ」が評価されたのです。

その後、「TL-90」を起点にキルターの要望に応える機能を盛り込むことで、次第にアメリカでも受け入れられていくようになります。

日本国内シェア7割を達成。究極の職業用本縫いミシン「SL−700EX」誕生まで

 近年、手作りのバッグや革小物を通販サイトなどで販売する方が増えています。

ハンドメイド市場が活況を呈する中、“売り物作品”として、「帆布や皮革生地などの厚い生地を用いた作品の品質を向上させたい」というユーザーの声に応える形で、2017年に「SL-700EX」を発売しました。

 企画担当者だった馬場は話します。「基本構造を継承したまま、新機能を加えていく方向性を考えた。ユーザー評価の高いフォルムは継承するのが前提だった」。

開発者の白石は「JUKIの職業用ミシンは、長い間シンプルさや縫製品質の高さに定評がある。そのスタンスやフォルムを維持しつつ、機能を追加していくにはミシン内部のスペース不足の問題をクリアしなければならず、非常に苦労した」と話します。 

 もともと薄い生地から厚い生地まで広範囲に縫えるミシンを、さらに厚手生地の縫いを強化して、美しい縫い目も実現するには、細かなチューニングが必要となりますが、それでは操作性が低下してしまいます。そこで太い番手(糸の太さの種類)の糸張力のチューニングを簡単にできるように、専用の糸掛け経路を設けることにしました。

 後に高い評価をいただくフロート機能(押えの高さを微量調整して、厚地以外にもキルト地やニット地なども綺麗に縫える機能)やユーザーの声から生まれた糸切りフットスイッチ付きコントローラー、LEDランプ光量スイッチなどの新機能は、時に担当者の間でぶつかり合いながら誕生しました。

こうして生まれた究極の職業用本縫いミシ「SL-700EX」は、SNSを通じた戦略的プロモーションも功を奏し、JUKIの職業用ミシンのシェア(日本国内)を7割まで高めることに成功しました。

さらにユーザーに寄り添ったミシンへ

 2023年6月には『ボタンホーラーEB-1』を発売しました。

これは、職業用ミシンに取り付けて使用する、コンピュータ式のボタンホール専用装置です。

 本来職業用ミシンは直線縫い専用のため、洋服作りなどでボタンホールをつくる際は、手縫いか、ボタンホール機能が備わった中級クラス以上の家庭用ミシンが必要でした。ボタンホーラーは、こうしたユーザーからの強いニーズがあり実現した商品です。

 この商品の特徴は、既存の職業用ミシンに取り付けることができる仕様にした点です(レトロフィットという)。開発陣は、お持ちの職業用ミシンを長く大切にお使いいただきたいという思いから、あえてレトロフィットにこだわりました。

 しかしながら、レトロフィットの開発は初めての挑戦であり、大変な苦労を伴いました。

制約が多い中でいくつもアイデアを出し、試作や実験を繰り返して、最終的に商品化することができました。「開発を通じて、改めて職業用ミシンの素晴らしさを発見したところもあり、ますます職業用ミシンが愛おしくなった」と開発者は振り返ります。

ミシンを道具として「趣味」を応援する企業に

 「ミシンソーイング」と一口に言っても、バッグや小物、洋裁、キルトなど、その分野は大きく広がっていて、「趣味のソーイングをさらに深める」ために“本格的な縫い”ができるミシンが求められています。こうした「本物の道具」にこだわるヘビーユーザーから、JUKIのミシンは圧倒的な支持をいただいています。

 各ソーイング分野のエキスパートとして活躍されている、JUKIミシン愛用の先生方とコラボして、趣味分野に寄り添ったソーイング教室の展開を行っています。

またホビーショーなどの展示会においても、ワンランク上のソーイングの喜び・楽しみを共有できる機会を提供し、さらにSNSを通じたコミュニティ活動を通じて、ミシンソーイングを楽しんでいらっしゃるお客様を応援しています。

 JUKIは “ミシンを売る会社 ”から、道具としてその“楽しさ・趣味力の向上をサポートする会社 ”へ、本物の道具にこだわるソーイング愛好家と共に歩んでいきたいと考えています。

 最後に2023年度ロングデザイン賞の評価コメントをご紹介して、このストーリーを終わります。

「ミシンと聞けばJUKIを思い出す。それくらい圧倒的なシェア率を誇りながらも、妥協しない製品の質は日本のモノづくりの底力を感じざるを得ない。JUKIのミシンがあることによって、日本の、特にアパレルの世界は格段に品質を上げているように思う。また、その品質の評価は日本国内だけに留まらず、世界まで響いているというから影響力がすごいのである。このロングライフデザイン賞を獲得したことは、その品質もさることながら、長きにわたって愛されてきたモノ、そのもののデザインにおいても評価する意義があるということだ。色々なアクセサリーや余計なアナウンスを付けず、必要にして十分な機能を提供し続けているところに企業としての自信と覚悟を感じるのである。こういったデザインが今後も評価される世の中を目指していきたい。」

https://www.g-mark.org/gallery/winners/15897


行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

PR TIMES STORY

「デザイン」をもっと詳しく

「デザイン」のニュース

「デザイン」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ