本当に出世するのは「仕事がデキる人」より「デキそうな人」…「顔の印象が他人を動かす」という残酷な真実

2024年2月19日(月)13時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/key05

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組織内で評価される人と評価されない人の違いは何か。ヘアメイクアップコンサルタントの池畑玲香さんは「くたびれた服を着ていたりノーメイクで顔色が悪かったりすると、『仕事がデキなそう』『疲れている』とネガティブなイメージを発信することになり、本人の能力が正しく伝わらなくなってしまう」という——。

※本稿は、池畑玲香『自分の顔は自分でつくる 戦略メイク』(BOW BOOKS)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/key05
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■仕事はデキるけど、外見はパッとしないA課長


「なぜかスルスルと、理想の未来をかなえている人たち」の存在に、私が気づいたきっかけとなったシーンがあります。まずはそのお話をさせてださい。


外資系企業の役員秘書時代、担当本部内に、A課長とB課長という、全くキャラクターの違う2人の課長がいました。


課長になって数年、仕事の能力が高いのはもちろん、部下との信頼関係もしっかりできているA課長。部下はA課長を信頼し、安心して仕事ができています。もちろん直属の上司である部長にも、その能力は買われています。


ですが残念ながら、外見が今ひとつパッとしません。レンズが汚れたメガネ、しばらくカットしていなさそうなヘアに、シワが目立つスーツ。全体的になんとなくもっさりしていて、傍目には、とても「デキそう」には見えないのです。


■役員の目にとまったのは新米のB課長


一方、昇進したての若手、B課長。能力はあるものの、まだまだ課長としては新米です。やる気だけが空回りしているところもあり、部下からは、「課長、また新しい仕事引き受けちゃってテンパってるよ、俺らもいい迷惑」と、ヒソヒソ陰口を叩かれてしまっています。


とはいえ、体のサイズに合ったスーツをパリッと着こなし、すっきりとカットされた清潔感のある髪に、キリッとした顔つき。スマートな身のこなしは、なんだか「デキそう」な雰囲気を醸し出しています。


あるとき、会社全体で課長以上を集めたタウンホール・ミーティングが開催されました。


その際に私は、ある役員さんが「あいつ誰だ」と1人の男性を指差して、自分の部下に何やら質問し、他の役員とヒソヒソ話をしているのを目にしてしまったのです。


一体何があったのだろう? と後からその部下の方に聞くと……。


「あいつできそうだな」「なんてやつだ」と名前と所属を聞いていたというではありませんか。


そう。B課長です。「近いうちに、何かやらせるつもりなんじゃないかな」とその部下の方が言っているのを聞いて心底驚きました。


■B課長はA課長より先に部長に昇進した


その後、予想通りB課長は、特命プロジェクトに招集されました。彼はなんとかプロジェクトをやり遂げ、役員もその成果に満足した様子。それ以降も、何か特命プロジェクトがあるたびに招集される、ということを繰り返すようになったのです。


どんどん新しいことにチャレンジするうちに、実際にB課長の能力は上がっていき、なんと驚くべきことに、最終的にはA課長を追い抜いて、先に部長に昇進してしまったのです!


評価が、年1回の評価会議の中だけで決まっていると思ったら、大間違い!


いつも優秀な人材を探している管理職や役員は、評価会議のときだけではなく、普段から「誰かいいやつはいないか」と目を光らせているものなのだと、そのときにはじめて知りました。


実際には、経験豊富なA課長は、能力があるのはもちろん、新米のB課長にはない「部下からの信頼」までも持っていました。本来であれば、B課長よりも、高く評価されてもよかったはずです。


写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

■年1回の人事評価より普段のアピールが重要


A課長の能力と信頼は一緒に仕事をしている人たちには伝わっていました。もちろん書類上にも書かれていたに違いありません。ですが、残念ながら、外見で、本来よりも「デキなそう」な印象を与えてしまっていたために、そのことが、部外まで広い範囲で「伝わる」ことも、評価会議以外の場で、役員に「伝わる」こともありませんでした。


その能力は「年1回」の次の評価会議まで、ファイルの中で眠ることになってしまったのです。


一方、B課長はまだ新米課長なのにもかかわらず、「デキそう」な外見の印象が、遠くから役員の目にもとまり、その「能力」が「伝わった」のです(多少盛り気味に!)。


そして、「特命プロジェクト」への参加を繰り返すことで、さらにその能力は磨かれ、結果的に昇進という未来をかなえることができました。A課長よりも先にです!


この出来事をきっかけに、私は、「なぜかスルスルと理想の未来をかなえている人たち」の存在に気づくと同時に、「年1回提出する評価シートと、年1回の面談でアピールしているだけでは、ダメなんだ」ということに、ようやく気づくことができたのです。


■「本人にも責任ある」は自分にも当てはまる


さて、女性グループのランチで、このA課長、B課長の昇進の行方が話題にならないはずがありません。


「ねえねえ、聞いた⁇ Bさん、部長になるらしいよ! なんでBさんが⁉ Aさんのほうが、能力だけじゃなくて部下の信頼も厚いのに」
「上の人って、本当に見る目ないよね」
「Aさんかわいそうに……でも本人にも責任あるよね」


このエピソード、私の講座の中でお話しすることがよくあるのですが、皆さん、にやにやしながら「あるある、似たようなこと」とおっしゃいます。


あなたの周りでも起きているのではないでしょうか。


男性の昇進レースを、あるあるトークのネタにしている場合ではありません。私たち女性にも似たようなことは起きています。


■外見のせいで能力を評価されない女性たち


・ 学歴も高く英語も堪能。能力もあり、人間性もとても素敵なCさん。でも、いつもほぼノーメイクに、乾かしっぱなしのヘア。なんとなく顔色が悪く疲れて見えます。彼女は後輩に、昇進で先を越されてしまいました。


・ 資格取得の努力を惜しまず、仕事が速いので、課内で頼りにされているDさん。でもキラキラアイシャドウに、マツエクがギャルっぽい。一方、真面目な印象の後輩は、上司に連れられ、対外的な仕事を増やしています。彼女が交渉スキルを身につけていくのを横目に、Dさんは課内での補佐的なポジションにとどまっています。


・ 課長のEさん、髪色が明るすぎて、陰で「ヤンキー姉ちゃん」とあだ名がついてしまっています。会議で意見を言っても、なかなか部長陣に真剣に聞いてもらえません。他の男性が同じことを言ったら耳を傾けてもらえているのに……。


これらのエピソードはすべて、能力があるにもかかわらず、「外見」で、その能力を伝えることができていない。むしろ知らず知らずのうちに真逆のネガティブなメッセージを発信してしまっているために、評価・昇進につながっていないケースです。


あなたの身の回りにも、こんな女性が、いるのではないでしょうか。


そして、あなた自身はいかがでしょうか?


写真=iStock.com/Wand_Prapan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wand_Prapan

■「選挙の勝敗は顔の印象で決まる」という真実


人の顔の「印象」が持つ影響力に関しては、最新の心理学でも研究が進められています。


アメリカのプリンストン大学で、アレクサンダー・トドロフ博士らが行った実験で、人の顔の「印象」が、それを受け取った人の行動に影響を与えていることがわかってきました(『Science』2005.6.10号)。


実験では被験者に、それぞれ1人ずつ人物が写っている2枚の写真を見せ、どちらが、より「有能な政治家」か、を判断させました。


実は、その2人は実際の選挙で、対立候補となっていた2人でした。


被験者が選んだ人物と、実際に選挙で勝利を収めた人物は、なんと約70%の確率で一致していました。


この実験は複数回の選挙において行われましたが、毎回ほぼ同じ確率で一致していたそうです。顔の「印象」から、「有能な政治家である」と「判断」し、「選ぶ」という行動を起こす、また、それが実際の選挙行動と高い確率で一致している。


「選挙の勝ち負けは顔の印象で決まる」と言っても過言ではないと思いませんか?


■他人は「目」より「眉」を見ている


プリンストン大学心理学部のアレクサンダー・トドロフ教授らによる『第一印象の科学』(みすず書房)という本の中に、とても面白い実験が掲載されていたので、ご紹介させてください。


視覚学者のパワン・シンハらが行った実験だそうで、人が「この人は誰なのか」を認識する際に、主に、顔のどのパーツを見て判断をしているか、を調べたものです。


髪と輪郭の中に1つのパーツのみを残してそれ以外のパーツを消した写真、つまりは、顔の中に眉だけがある写真、目だけ、鼻だけ、口だけ……の写真をそれぞれ見せて「この人は誰なのか」を被験者に判断させたのです。


さて、「この人は誰なのか」を、最も正確に認識できたのは、どのパーツだったと思いますか?


「目」だと思いませんか? 私はそう思いました。ですが実は……「目」よりも「眉」のほうがより正確に認識できるという結果が出たそうです。


もしもあなたが、「眉のメイクが苦手」だからとボサボサ眉のまま会社に行っているのなら、周囲からは、「ボサボサ眉」で「あなた」だと認識されているかもしれませんね。


■顔の印象は戦略的につくることができる


顔の「印象」が人の行動に影響を与えるならば、「印象」を、戦略的につくれば、人に思い通りの行動をさせることができるということになります。


ですが、「印象」を戦略的につくる以前に、そもそも、顔の「印象」は何によって生まれているのか、わかっていない方が大半なのではないでしょうか。


顔の「印象」を生んでいる要素の1つ目は、生まれながらにして持っている「造形」です。たとえば「尖った顎」や「左右対称の顔」などのこと。



池畑玲香『自分の顔は自分でつくる 戦略メイク』(BOW BOOKS)

「尖った顎」はキツい「印象」を生みますし、「左右対称の顔」なら信頼感・安心感・安定感といった「印象」を生みます。


そして2つ目は、「ヘアメイク」です。斜め前髪なら信頼感、ピンクのチークなら優しいなどの「印象」を生みます。


また、「印象」は、受け取る側の価値観で決まるものですから、当然3つ目としてその点も考慮に入れなくてはなりません。


「造形」「ヘアメイク」「受け取る側の価値観」


この3つの組み合わせで「印象」は生み出されるのです。


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池畑 玲香(いけはた・れいこ)
ヘアメイクアップコンサルタント
大学卒業後、美容専門学校、美容室勤務を経てプロヘアメイクアップアーティストとして、メディアなどで活動。女優、タレントに「役を掴ませ」、アーティストに「ファンを創る」発想でメイク。来日ハリウッド女優も担当。その後、健康上の理由からアーティスト活動を断念し、大手外資系企業に就職。10年間の役員秘書経験を通じてさまざまな職種・階層の視点を得、その間に心理学・パートナーシップ学を学び、独自のメイクメソッドを構築して、2017年に起業。レッスンや講座などを通じて、働く女性の「昇進」「転職」「営業成績社内1位」「売り上げUP」「婚活」などの目標達成のサポートを続けている。著書に『自分の顔は自分でつくる 戦略メイク』(BOW BOOKS)がある。
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(ヘアメイクアップコンサルタント 池畑 玲香)

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