100年前の日本の平均寿命は何歳? その“衝撃の数字”とは

2024年2月23日(金)6時0分 ダイヤモンドオンライン

100年前の日本の平均寿命は何歳? その“衝撃の数字”とは

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私たちはふだん、人体や病気のメカニズムについて、あまり深く知らずに生活しています。医学についての知識は、学校の理科の授業を除けば、学ぶ機会がほとんどありません。しかし、自分や家族が病気にかかったり、怪我をしたりしたときには、医学や医療情報のリテラシーが問われます。また、様々な疾患の予防にも、医学に関する正確な知識に基づく行動が不可欠です。そこで今回は、「気づけば読みふけってしまった」「ためになることしか書いてない」と反響を呼んでいる、21万部を突破したベストセラーシリーズの最新刊『すばらしい医学』の著者・山本健人氏(医師・医学博士)に最新の医療について話を伺いました。(聞き手:『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏)

Photo:Adobe Stock

100年前の平均寿命は?

安達裕哉(以下、安達) 医療技術は、日進月歩の勢いで発展していると聞いたことがあります。医師として実感されていることはありますか?

山本健人(以下、山本) まさに、この100年の医学の進歩には目を見張るものがあります。

 たとえば、いまから約100年前の大正時代の平均寿命は40代でした。「人生100年時代」とも呼ばれる現代を生きる私たちからすると、恐るべき数字ですよね。

 当時、多くの人命を奪っていたのは、肺炎や胃腸炎といった「感染症」でした。抗生物質がなかったので、細菌やウイルスが体内に入って症状を起こしたときに、治療の手立てが何もなかったんです。

安達 つまり、抗生物質の登場で医学が大転換したというわけですね。

山本 その通りです。新型コロナウイルスも含め、感染症の「完全な克服」は難しいですが、ワクチンや抗生物質、抗ウイルス薬といった予防・治療法ができたことで、平均寿命が大きく延びたのは紛れもない事実です。

 また、特に近年は、医師が日々勉強して情報をキャッチアップし続けないとすぐ遅れをとってしまうほど、医療技術が加速度的に進化しています。

 病気の種類によっては、5年前になかった薬がいまは使えるとか、5年前はベストだった治療がいまでは2番手になっている、というようなことが普通に起きています。

 また、「コレステロールが上がるから、卵は1日〇個まで」という呼びかけが以前ありましたが、いまではそのような注意喚起は行なわれていません。

 これは、コレステロールは食品での摂取よりも体内で作られる量の方が多く、卵の摂取量の上限を決めることの科学的根拠が十分でないことが判明したからです。

安達 なるほど。ということは、医療や健康にまつわる最新の情報を知らずに、誤った古い言説を信じ続けていると、危険な場合もあるかもしれないですね。

山本 実際、そういう例は少なくありません。たとえば、ひと昔前は、転んでできたすり傷に赤チンを塗ってすぐに消毒していましたよね。

 しかし、じつは赤チンが皮膚を傷つけてしまい、治癒を遅くすることがわかったので、現在では赤チンは使っていません

安達 ということは、消毒にはオキシドールを使うんでしょうか?

山本 オキシドールも使いません。怪我をした直後の処置としては、傷口を水道水でしっかり洗い、中の砂や異物を除去することが最も重要です。よほど特別な理由がないかぎりは、消毒はもうしないんです

安達 そうなんですね。「それは初耳だ」という人も多い気がします。

山本 手術の場合も、昔は術後の傷を医師が毎日消毒していましたが、いまでは消毒は手術の前だけで、傷を縫った後は原則消毒をしません。

 なので、患者から「消毒しなくて大丈夫でしょうか」と聞かれることが結構あります。

安達 患者側も、「あれ?」と思ったことは医師に聞いておかないと、「なんで消毒してくれないんだろう」という不信感につながりかねないですね。

山本 そうなんです。なので、医師と患者とのオープンなコミュニケーションが非常に重要なんです。

治療の選択肢は1つではない

安達 医師の立場的に「患者に質問されたら困ること」は何かありますか?

山本 困るというより答えるのが難しいのが、「先生自身が患者だったらどんな治療をしますか?」という質問です。

 なぜなら、こういう質問をする人は、医師がその場で出す答えをそのまま選ぶつもりになってしまっているからです。

 現在は、同じ病気に対する治療の選択肢はいくつもあり、年齢や病状だけでなく生活環境・家族構成・仕事などさまざまな要素を踏まえて、「総合的に最適な治療」を選びます。

 患者と医師とでは、そういったバックグラウンドが全く違うので、それぞれにとってのベストな治療が異なる可能性が十分あるんです。

 なので、「医師自身のケース」はあくまでも参考程度に聞いておき、それが自分にも当てはまるかどうかは患者自身がきちんと検討しないといけません。

安達 「家族構成」まで関係あるんですか?

山本 大いに関係があります。たとえば、通院頻度が高くなり副作用も強い治療法は、付き添いや送迎が必要になるので、家族・親戚が遠方にしかいないひとり暮らしの人には勧めにくいですよね。

 また、いまでは抗がん剤の副作用はかなりコントロールできるようになり、入院せずに外来で使えるものも多いです。なので、「午前中に抗がん剤を点滴で打って、午後から仕事に行く」というライフスタイルも可能になっています。

 こういう場合、「仕事内容」や「休みを取れる頻度」を患者から聞き取りながら、最善の治療を考えていきます。

安達 そうすると、医師と患者とのコミュニケーションが円滑でないと、ベストな治療ができなくなるリスクがありますね。

山本 その通りです。さらには、医師の声がけや言い回しひとつで、患者が治療に前向きになれたり、逆にネガティブになってしまったりもします。

 そういう意味でも、医師という職業には「コミュニケーションスキル」が必要不可欠なんです。実際、僕と同じかそれより若い年代の医師は、その重要性を医学部で教育されています。

 コミュニケーションとの関連が深い「インフォームドコンセント」という概念も、この20年くらいで認知が広がりました。こういった言葉の登場も、医師と患者とのコミュニケーションの大切さが、医療現場で認識されるようになった証しだと思います。

(本稿は、『すばらしい医学』の著者・山本健人氏へのインタビューをもとに構成しました)


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