「昼休み後の15分間」が超重要…1日にPDCAサイクルを2度回す「超速進化組織」のすごい働き方

2024年2月27日(火)7時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jirsak

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業務効率を上げるにはどうすればいいのか。キーエンス出身のコンサルタントである田尻望さんは「キーエンスには1日にPDCAサイクルを2度回す仕組みができている。このためすべての業務において展開のスピードが速い」という——。(第3回/全3回)

※本稿は、田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)の一部を再編集したものです。


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■成功の秘訣は「再現性のある商品企画」


会社というものは、「どんな商品(サービス)であれば、お客様は買いたいと思うのだろうか」ということを企画することから始まります。


商品企画の巧拙で、会社の命運が変わると言っても過言ではないでしょう。


言ってみれば、商品企画者は組織における「再現性の司令塔」なのです。


キーエンスの成功は「再現性のある商品企画」によって支えられていると言っても過言ではないと、私は思っています。


キーエンスでは、「商品を通じて世の中のありようを変える」という考えが重要視されていました。


私自身、キーエンスを入社志望したときも、この言葉に感銘を受けて憧れを持ったのを鮮明に覚えています。


私たちの社会・暮らしは、商品によって大きく変化してきました。


自動車、家電製品、パソコン、スマートフォンをはじめ、今、身の回りにある数々の商品が存在しなければ、私たちが暮らす社会はまったく違ったものになっていたでしょう。


■商品自体が「最強の営業パーソン」


「商品が私たちの生活を、よりよいものに変えていく」とすれば、よりよい新しい商品をつくり上げることこそが、高い付加価値をつくることにつながります。


これは同社の考え方の基軸となっており、「商品こそ本命策である」と考えられていました。


そう考えると、「商品自体が最強の営業パーソン」とも言えます。


営業担当者が電話やメール、面談などで見込顧客やお客様と接触できる時間は限られています。


しかし、商品はお客様先でずっと役に立ち続けることができますし、お試しとして使える商品(デモ機)があれば、お客様は自分たちが得られる価値を実際に体験できます。


お客様は「言葉で説明されるだけでなく、実際に商品を確認したい、見せてほしい、試してみたい」とひそかに思っています。


お客様は常に、「商品の機能や特長だけでなく、私たちにとっての利点を説明してほしい。そのあとは実際に商品を見せてほしい。最後に、体験させてほしい」と望んでいるのです。


営業でお客様と会うときは、「言う(言葉で説明する)」「見せる」「体験させる」の3つが重要なのです。


■全社一丸で高付加価値商品を生み出す


高付加価値を持つ新商品をつくるには、商品企画や開発の部署だけでなく、営業も含め、全社一丸となって取り組める仕組みをつくらなければなりません。


営業担当者は、「私たちの仕事は商品を売ることであり、商品企画・開発は私たちには関係のない仕事だ」と思わず、また企画・開発担当者も「これは営業的な話だ」と考えず、会社全体としてお客様への役に立つ商品の企画の一端を担っていることを意識して、仕事に取り組むことが大切です。


写真=iStock.com/metamorworks
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その結果として、高付加価値商品をお客様に提供でき、会社としての価値が高まり、売上・利益が増え、最終的に自分たちの給料にも反映されるのだ、と考えるべきです。


優れた商品によってお客様の成功を実現(価値実現)できたとすれば、会社としても利益率が大きくアップし、その利益を社員の給与として還元しようと思うでしょう。


しかし、個人的な営業力や流行などによって一時的に売上・利益が増えても、会社はそれを給与として社員に還元するのは躊躇します。


なぜなら、それは継続的なものではない、すなわち、再現性の高いものではないからです。


「この商品によって継続的に利益が出る」「高付加価値を持った商品を、高い再現性をもってつくり、提供し続けることができる」という確信があるからこそ、会社は利益を給与や賞与として社員に分配できるのです。


大切なのは、付加価値の再現性の主軸を成す「商品企画」のために、全社員一人ひとりが、「自分はどのように貢献すべきか」と考えることです。


そしてキーエンスという会社が秀逸なのは、その「貢献の仕組み」ができあがっており、日々、特別な意識をすることなく、新商品の企画に貢献できる仕組みになっていることだと思います。


■超速進化組織の「PDCAサイクル」の仕組み


企業活動のあらゆる側面で仕組み化を実践し、「価値の再現性をいかに高めるか」を徹底的に追求している会社、それが私から見たキーエンスです。


同社はとくに「付加価値の再現性」の向上に焦点を当て、その実現を目指しているように見えます。


まさに、キーエンスは「付加価値再現性企業」と言えるでしょう。


ここからは、私がキーエンスで学んだ付加価値再現性企業として実行している基本的な考え方や、再現性を向上させるための仕組みについて、多角的な視点から詳細に解説していきます。


本稿で最初に紹介するのは、営業業務における1日にPDCAサイクルを2度回す超速進化組織の仕組み化です。


■午前中の営業内容を昼礼で確認・評価・改善する


その営業業務におけるPDCAサイクルから説明しましょう。


図表1がその仕組みです。


出所=『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊

ここに、みなさんご存知の「P」「D」「C」「A」という記号が並んでいます。


朝礼でその日の目標を確認して一日の計画を立て(PLAN)、それに則って午前中の営業電話をかけます(DO)。昼礼で、午前中の電話業務の進捗を確認・評価する(CHECK)とともに、改善策を反映した午後の計画を立てます(ACTION・PLAN)。


もし、昼礼時に「午前中の案件数が足りない」と判断されれば、その日の案件数を達成するために、どのように午後の電話を工夫するかの計画を立てるのです。


そして、再び午後の営業電話を行い(DO)、最後に、その日の目標に対する実績を評価して(CHECK)、翌日に向けた改善策を検討します(ACTION)。


■社員教育だけでは個人レベルで止まってしまう


このような仕組みを構築することで、1日に2回、PDCAサイクルが回るという体制を確立することができます。


営業担当者全員がこの仕組みに沿って業務を遂行することで、PDCAサイクルが確実に実行されます。


PDCAを効果的に回すための一定のフォーマットをつくり、それをベースに一日のスケジュールを組んで仕組み化すれば、PDCAは確実に回り始めるのです。


多くの会社では、「PDCAサイクルを回すためには、まずは社員教育が重要だ」と考え、社員に「PDCAに関するこの本を読んで、よく勉強してください」と指示し、PDCAの実行を個々の判断に委ねます。


その結果として、一人ひとりの意識は向上し、個人の業務レベルではPDCAサイクルがうまく機能するようになるかもしれません。


しかし、会社組織全体としてはPDCAサイクルがまったく回らないという事態が発生します。


■組織全体で自然とPDCAサイクルが実践される


一方、仕組み化されたPDCAサイクルがあれば、社内の有能な誰かが再現性の高いフォーマットを作成し、その基準に従って全社員が行動するだけで、PDCAサイクルが自然と回り始めます。



田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)

このような構造が整っていれば、業務改善の質が保証され、すべての業務において展開のスピードが速まるのです。


社員数が2000人でも3000人でも、全員が決められた時間に必ず指定された会議・振り返りが実行されているという仕組みが確立されているため、組織全体の取り組みが同期し、協調的に進められるのです。


このような誰もが自然とPDCAを実践できる仕組みが多数存在していたのです。


そして、私自身も退職したあとに気づいたのですが、キーエンスではPDCAという言葉は使われていませんでした。


実際、退職後に立ち上げた研修会社でお客様に「PDCAサイクルが大事だよね」と言われたときに、PDCAの書籍を買って学んだくらいです。


そして、その本を読んで気づきました。


「あ、やってた、全部」と。


そう、私は、教育されることなく、PDCAを実践していたのです。


これが、PDCAを教育で一人ひとりに実行させることと、仕組みでPDCAを回るようにすることの違いなのです。


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田尻 望(たじり・のぞむ)
戦略コンサルタント
株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という経営哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズ®までを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円〜4000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善などを達成した企業を次々と輩出。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。著書に『構造が成果を創る』(中央経済社)、『キーエンス思考×ChatGPT時代の付加価値仕事術』(日経BP)、発刊10万部を突破した『付加価値のつくりかた』(かんき出版)がある。
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(戦略コンサルタント 田尻 望)

プレジデント社

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