セブン&アイ、米国で株式上場を計画…クシュタールの提案「最善の選択になる保証ない」
2025年3月6日(木)20時45分 読売新聞
記者会見するデイカス氏(右)と井阪氏(6日、東京都千代田区で)=武藤要撮影
カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けている、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は6日、自力での企業価値向上を目指す方針を発表した。井阪隆一社長(67)は特別顧問に退き、社外取締役で取締役会議長のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏(64)を後任に充てる。人事は5月27日付となる。
クシュタールの買収提案について、井阪氏は東京都内で開いた記者会見で「現時点で株主やステークホルダー(利害関係者)にとって最善の選択になる保証はない」と述べた。
企業価値向上策では、主力の米国コンビニ事業について、2026年下半期までに米国で株式上場を目指すとしている。米国事業の独立性を高め、北米市場での成長を加速させる考えだ。
祖業であるイトーヨーカ堂などを集約した中間持ち株会社「ヨークHD」を米投資ファンド「ベインキャピタル」に8147億円で売却することも発表した。セブン&アイは売却後も35%の株式を保有し、一定の関与を続ける。
グループ内で金融事業を行っているセブン銀行についても、25年度中に、株式の保有比率を40%未満に引き下げ、連結対象から外す。
上場益や事業売却益は自社株買いに充て、30年度までに総額2兆円の自社株買いを実施する。
セブン&アイ・ホールディングスの記者会見の主なやりとりは次の通り。
——単独での経営維持を決断した背景は。
井阪隆一社長「初期段階からクシュタール社に対して米国の独占禁止法関連の対処について指摘してきたが、具体策が見いだせていない。提案がステークホルダー(利害関係者)にとって最善の選択となる保証がない」
スティーブン・ヘイズ・デイカス次期社長「米国の規制のハードルは高い。一番望ましくないのは、2年以上かけて塩漬け状態になり、裁判所から拒否され続けることだ」
——社長交代の理由は。
井阪氏「さらなる成長実現には、今までと異なる施策が必要なフェーズに入り、最適なタイミングだと考えた」
——株価低迷の責任を取るということか。
「株価がさえなかったのは、事業構造改革で相当多くの特別損失を出し続けたため。改革は一定のめどがついた。引責ということは全く考えていない」
——セブンの現状をどう認識しているか。
デイカス氏「市場シェア(占有率)の一部を失い、勢いを少し失っていることは謙虚に受け止める。しかし、業界をリードする企業ではよくみられるサイクルで、珍しいことではない。株主還元については、過去に十分に注意を払ってこなかったという反省がある」
井阪氏「国内コンビニ業界は競争が激化している。セブン—イレブンは総菜、弁当、おにぎりで圧倒的に強かったが、そこにも競争の範囲が広がっている」
——米国のコンビニ事業をどう立て直すのか。
デイカス氏「日本のセブンの食料品は品質が高い。日本のようなサプライチェーン(供給網)を米国に持ち込みたい」