周囲に流されやすい人は今すぐ取り組む価値あり…茂木健一郎「ブレない自分軸」が持てる黄金ルーティン

2024年3月10日(日)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/peshkov

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他人に流されず、自分軸のある人は何をしているか。脳科学者の茂木健一郎さんは「自分の人生や仕事で、何が大事なことかということをいつも整理できている人は、自分自身との対話によって、自分の価値観を常日頃から確認している。逆に、自分自身の考え方を整理できていないと、どうしても小さいことに囚われてしまったり、ついつい他人に流されたりして、自分自身を見つめ直す時間をつくることはなかなか難しい。白洲次郎のようにプリンシプルに生きるには、自分の考え方を一度整理してみるといい」という——。

※本稿は、茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/peshkov
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■職場を離れてもなかなか気持ちが休まらないときは


普段、仕事で疲れていると、休日はベッドの上やソファでダラダラと過ごす人もいるのではないでしょうか。あるいは、極力体力を使わずに、1日中ゲームをして休日を過ごす人もいるかもしれません。


ですが、そんなときに、何となく身体のだるさを感じてしまうという経験をしたことはないでしょうか。


特に、忙しく働いているビジネスパーソンのなかには、「職場を離れてもなかなか気持ちが休まらない……」という人が少なくないようです。


繰り返しになりますが、心身の健康を維持していくためには身体を休めるだけではなく、脳からしっかりリラックスさせ、疲労を回復させることが大切です。


脳がリラックスしている状態というのは、副交感神経が優位に働いています。


逆にいえば、交感神経が優位に働いている状態では、脳も活発に働いていることになります。


つまり、日頃忙しく働いているビジネスパーソンというのは、脳が働いている状態とリラックスしている状態を上手に切り替えられるようになることで、脳をしっかりと休ませることができるようになるというわけです。


■変化のない生活を見直す


こうした交感神経と副交感神経の上手な切り替えを行うには、いつもと代わり映えしない生活パターンを見直すということをお勧めします。


というのも、毎日変化のない生活を送っている人というのは、脳がリラックスしづらい状態に陥っていることが多いからです。


写真=iStock.com/maroke
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私たちの脳は、常に変化による刺激を求めています。


だからこそ、いつもと同じ働き方をしたり、休日にいつもと同じ部屋でダラダラしたりしていると、何となく気が滅入ってしまうのです。


脳を休めるということは、もっとしなやかで伸びやかなものです。


に述べた、クリエイターのゆったりとした空気をつくるイメージにしても、ただダラダラとした時間を過ごしているわけではありません。


彼らは、ただがむしゃらに真面目にやるだけでは呼び込めないものがあるということを知っているのです。


■尊敬するあの人なら、「どう仕事をするか」を考える


では、私が実践している、交感神経と副交感神経の切り替えを行い、脳をリラックスさせる、具体的なノウハウをご紹介したいと思います。


それは、「自分の尊敬する人になぞらえて自分を高める」ということです。


私はよく、「これから10分間仕事をするとしたら、自分の尊敬する人だったら同じ時間でどれだけの仕事ができるのだろうか」ということを考えて仕事に取り組むようにしています。


たとえば、スティーブ・ジョブズの功績は誰もが知るところですが、ジョブズの10分間と自分の10分間は物理的には同じです。


そこで、「これからの10分間はジョブズの10分間を超えるんだ」という意気込みを持って物事に取り組むことで、働き方に変化をもたらすというわけです。


■自分の考えを整理する時間こそ、脳を休める時間


「自分はいつも他人に流されながら生きている……」
「面倒だから、みんなと同じ流れに乗ってしまおう……」


こんなふうに考えて、何気ない日々を過ごしてしまっている人も多いのではないでしょうか。


ですが、こうした考え方というのは、脳を休める上での大きな阻害要因となることがあるので注意が必要です。


というのも、大きな成功を手にしているビジネスパーソンや、今の世に名を残してきた偉人というのは、常に自分を貫く確固たる価値観を持って行動し、自分らしく生きているからです。


そうした「ブレずに自分の価値観に基づいて行動できる」生き方こそが、ビジネスで成功する要因の1つであることは間違いありません。


こうした、自分の軸を持って生きている人は、「自分はこうあるべきだ」という、揺るがない確固たる価値観を持っています。それが、脳を休めることにも深く関係しているというのが、脳科学者としての私の見解です。


写真=iStock.com/kieferpix
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■過去の成功体験を振り返ってみる


では、こうした価値観が、一体どのように脳を休ませるということにつながっていくのでしょうか。


「自分を見つめ直し、自分の考え方を一度整理する」


このことこそが、脳を休めることになるのです。


しかし、自分を見つめ直し、自分の考え方を整理するというのは、いざ実行するとなると非常に難しいものです。


そんなとき、私がお勧めしているのが、自分の過去の成功体験を振り返ってみるということです。


成功の大小にかかわらず、自分の過去の成功体験を思い出して、それらの共通点を探し出してみてください。そこに、自分の確固たる価値観が浮かび上がってくるはずです。


そうすれば、「自分の強み」や「自分らしさ」に気づくことができるようになります。


そこから、自分の「ありたい姿」を想像して、それに適した行動基準や価値観を自分の軸にしていくのです。自分の軸を自己設定することで、他人に流されない生き方を実現できるというわけです。


■白洲次郎のようにプリンシプルに生きるには


こうした、「自分の軸」をブレさせることなく生きた人物がいます。


吉田茂首相の側近として活躍し、占領中のGHQから「従順ならざる唯一の日本人」と呼ばれた白洲次郎です。


白洲次郎は、あのマッカーサーをしかりつけたなど、実に数々の逸話を残しているわけですが、彼がよく口にしていた次の言葉があります。


「プリンシプル(principle)に生きる」


プリンシプルは、「原理」「原則」などと訳されるのですが、「プリンシプルに生きる」ということは、すなわち「軸を持って生きる」といいかえることができるのではないでしょうか。


では、白洲次郎のように、プリンシプルに生きるには、一体どうすればいいのでしょうか。


それこそが、先に述べた「自分の考え方を一度整理するために脳を休める時間を意識的につくり出す」ということにつながってくるというわけです。


実際に、自分自身の考え方をしっかり整理できている人というのは、何が重要なものであるかということが、しっかり理解できている人といえます。


逆に、自分自身の考え方を整理できていない人というのは、どうしても小さいことに囚われてしまったり、ついつい他人に流されたりしてしまいます。


このような行動パターンでは、自分自身を見つめ直す時間をつくることはなかなか難しいでしょう。


■自分自身との対話によって、自分の価値観を常日頃からチェック


自分の人生や仕事で、何が大事なことかということをいつも整理できている人は、自分自身との対話によって、自分の価値観を常日頃から確認しているのです。



茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房)

こうした自分自身との対話こそが、脳を休ませている時間ということです。


皆さんのまわりにいるはずです。


まったく他人に流されることなく、やりたいことをやっている人。


いつもエネルギッシュで行動的だと感じる人。


そういった人というのは、自分の考えや価値観をしっかり整理する習慣を持っているのです。


それはイコール、脳を休ませてしっかりと自分を見つめ直す時間を持っているということに、他ならないのです。


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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。クオリア(感覚の持つ質感)を研究テーマとする。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。近著に『脳のコンディションの整え方』(ぱる出版)など。
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(脳科学者 茂木 健一郎)

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