老後にお金で苦労する人、しない人の習慣

2024年3月12日(火)6時0分 ダイヤモンドオンライン

老後にお金で苦労する人、しない人の習慣

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今年1月以降、新NISAが導入され、お金の本が売れに売れている。だが、マネー本も玉石混交だ。どんな本から読んだらいいかわからない人も多いだろう。そんな人たちにおすすめなのが、全米ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』。本書を「『金持ち父さん 貧乏父さん』(2000年刊)&『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(2002年刊)以来の衝撃の書」と『人生で読んでおいた方がいいビジネス書75冊』の中で絶賛しているのが「ビジネスブックマラソン」の土井英司編集長だ。今回は3万冊を読んできた日本随一のビジネス書の目利きである土井氏が「老後にお金で苦労する人、しない人の習慣」を特別寄稿する。

Photo: Adobe Stock

『金持ち父さん 貧乏父さん』の著者が定義する「資産」と「負債」とは?

 前回、『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ダイヤモンド社)の著者、ニック・マジューリ氏のこんな言葉を紹介した。

技能や知識は人生を通じて向上する。だが、時間は減っていく。そのため、人的資本は結局、時間の経過とともに減っていくことになる。この人的資本の減少に抗うための唯一の手段が投資だ

 要するに投資家は、自分自身に生産能力がなくてもお金を生み出すことができる。

 なぜなら彼らは「資産」を持っているからだ。『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん —— アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』(ロバート・キヨサキ著、白根美保子訳、筑摩書房、2013年:最初の単行本は2000年)の定義でいえば、「資産は私のポケットにお金を入れてくれる」ものだ。

 人的資本が減る老後では、この資産からの収入をいかに増やすか、そして支出につながる負債をいかに減らすかがカギとなる。(ちなみに『金持ち父さん 貧乏父さん』の定義では、「負債は私のポケットからお金をとっていく」ものだ)

賢い人がやっている老後の資産戦略

 資産からの収入を増やすのは、実に簡単で、まずは資産額そのものを増やすこと。

『JUST KEEP BUYING』の教えどおり、ひたすらドルコスト平均法で資産を買い続ければいい。 次に考えるのは、同じ資産額でもより多くの配当収入を得られるものを選ぶこと。 ただ、これはリスクを伴うので、老後の戦略としては、慎重にならざるをえない。 老後の資産戦略は、「失わないこと」をメインに考えることだ。

 では、いくらぐらいまで資産を増やせば、お金に苦労しない人生になるのか?

『JUST KEEP BUYING』では、ファイナンシャル・アドバイザーのウィリアム・ベンゲンの研究成果を紹介し、こう述べている。

<ウィリアム・ベンゲン(1947〜)は、退職者が老後資産を使い果たさずに毎年どのくらいのお金を引き出すことができるかを試算し、ファイナンシャル・プランニング界に革命を起こす研究結果を発表した。ベンゲンは歴史的なデータに基づき、老後生活者は30年以上、老後資金を使い果たすことなく、50対50(株式5割、債券5割)のポートフォリオから毎年4%を取り崩せることを明らかにした。インフレに対応するために、取り崩し額は毎年3%ずつ増やす計算になっているが、それでも30年間は資産が尽きることはない>

「4%ルール」とは?

 この4%ルールを実践するためには、<リタイア後1年目に予想される年間支出の25倍の資産が必要>だ。

 つまり、月々30万円使う生活がしたければ、360万円×25=9000万円の資産が必要になる。

 厳密には、みなさん年金をもらうので、仮に年金を月々15万円、年間で180万円もらうとすると、180万円×25=4500万円となる。これなら達成可能だ。

 それでも厳しいという人は、月々20万円使うシミュレーションにすると、必要資産額は1500万円となる。さらに容易に達成できるだろう。

 この4%ルールは、債券の利回りや株式の配当利回りが現在よりはるかに高かった時代につくられたもので、批判もある。ただ、その分インフレ率も過去より低いため、ベンゲンは「4%ルールは依然として有効だ」と述べている(このあたりは日本の実勢と合わせて考える必要がある)。

明治の大富豪がやっていた「つもり買いのつもり貯金」とは?

 そしてありがたいことに、年を取るほどにわれわれの支出は減っていく。 ローンの支払い、衣服代、交通費などが減るからだ(J.P.モルガン・アセット・マネジメントが米国60万以上の世帯の経済行動を分析した結果)。

 老後は、職場に縛られる必要がないので、移住によってさらに住宅費を安くすることもできる。 また、自動車をはじめ、負債化する可能性の高いものは売り払って生活をスリムにする必要もあるだろう。

 学者でありながら100億円の資産を築いたといわれる明治の大富豪、本多静六の『人生と財産 —— 私の財産告白』(日本経営合理化協会出版局、2000年)には、氏が収入の4分の1を貯金した方法が書かれているが、氏は買い物の際、「つもり買いのつもり貯金」というのをやったらしい。 たとえば、植木を買いたくなった時は、「それを持ち帰って枯らしてしまうより、この店に預けておけば水も忘れずやってくれるし、枯葉も一々のぞいてくれる。みたければいつでもここまで散歩に来ればいいじゃないか」。

 氏は、こうして貯めたお金を鉄道株と山林に投資し、明治を代表する大富豪となったのだ。

老後の不安と無縁になる、ちょっと変わったお金の本

 倹約というと、やや地味な印象を与えるが、倹約できる人は資産形成のスピードがアップし、老後の支出も少ないため、不安な老後とは無縁になるのだ。

 老後の不安と無縁になる、ちょっと変わったお金の本に、作家・森博嗣氏の『お金の減らし方』(SBクリエイティブ、2020年)がある。

 お金を増やそうと思わない著者が、庭に趣味の鉄道を建設しようとして、仕事をした結果、お金持ちになってしまった話が書かれているのだが、ここでは、「収入の2割を遊ぶために使う」ことが奨励されている。

「欲しいものはなんでも買えば良い、でも必要なものはできるだけ我慢をすること」

 著者は、どんなに貧乏なときでも、収入の1割を自分の趣味のために使い、奥様にも「1割を遊ぶために使いなさい」と言っていたそうで、残りの8割で生活を維持することをルールにしていたという。

 確かにこれならお金は理論的に減らないし、個人も好きなことをやって満足できる。 そして、好きなことをやるために稼ぎ、結果としてお金が増えるのである。 現代人の多くは、刹那的な承認欲求のために無駄なお金を使い、欲しくもないのに交換価値を考えて「賢い消費」や「投資」をする。

 本書は、そんな消費や投資とは無縁の考え方を提示する。目から鱗の一冊だ。資本主義システムに毒されて人生を見失わないために、ぜひ読んでおきたい。

人生の喜びを先送りしすぎている事実に気づく一冊

 最後にご紹介するのは、最近ベストセラーとなっている話題書『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著、児島修訳、ダイヤモンド社)だ。

 人は、すべからく死ぬ時「ゼロ」を目指すのがいい、と説いた、異色のお金本だ。

 著者は、アメリカ領ヴァージン諸島を拠点とするコンサルティング会社「BrisaMaxホールディングス」のCEOであり、かつてウォールストリートのトレーダーとして成功したビル・パーキンス氏。

 現在は、1億2000万ドルの資産を抱えるヘッジファンドのマネージャーでありながら、ハリウッド映画のプロデューサー、ポーカープレーヤーの顔も持つ人物で、これがデビュー作となる。

 著者は本書の前半で、我々が人生の喜びを先送りしすぎている事実を嘆き、こう警鐘を鳴らしている。

<残念なことに、私たちは喜びを先送りしすぎている。手遅れになるまでやりたいことを我慢し、ただただ金を節約する。人生が無限に続くかのような気持ちで>
<人生の充実度を高めるのは、“そのときどきに相応しい経験”なのだ。時間と金という限りある資源を、いつ、何に使うか──。この重要な決断を下すことで、私たちは豊かな人生を送れるのである>

 ウォールストリート出身の著者だけあって、人生の残り時間に必要なお金の計算方法から、資産をいつどのように切り崩すか、寄付・相続はいつがいいかまで、具体的に述べている。いくつかポイントを紹介しよう。

<実際のところ、老後にどれくらいの資産を最低限用意すればいいのか。私は、「毎年の生活費×残りの年数」の70%ほどをすすめている>
<金の価値を最大化できる年齢は26〜35歳>
<中年期には、金で時間を買いなさい>
<資産を減らすポイントは45〜60歳>

 後悔しない豊かな人生を送るために、すべての方におすすめしたい一冊だ。

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