絶望の数字…認知症疑いの高齢運転手「5万人」、"病的賭博"疑いの男「3%」、"0歳0カ月0日"虐待死「20年で176人」

2024年3月29日(金)11時15分 プレジデント社

出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字』

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一見平穏に見える日常生活の中には多くの危険が潜んでいる。それを明確に示す統計データがある。例えば、認知症疑いのある高齢ドライバーは5万人以上いると報告されている。また、過去20年間で虐待死した日齢0日児176人のうち医療機関で生まれたケースはゼロで、母親たちは自宅トイレや風呂場などで孤立出産した。社会に横たわる問題をわかりやすく伝えることを目指しているチャリツモが世の中の不都合な数字を紹介する——。

※本稿は、チャリツモ『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。


■日本人の2.2%がギャンブル依存症!?


2021年度に成人8223人を対象に行った調査で、2.2%の人がギャンブル依存症の疑いがあることがわかりました。男性は3.7%、女性は0.7%と、男性の割合が高いこともわかっています。


ギャンブル依存症とは、「ギャンブル(結果が偶然に左右されるゲームや競技等に対して、金銭を賭ける行為)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態」のこと。


ギャンブル依存症は、ギャンブル依存に留とどまらず、それに関連した多重債務や貧困、虐待、自殺、犯罪などさまざまな社会問題と密接に関わります。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

なかでも多いのは「パチンコ・パチスロ」に依存する人。依存症の疑いがある人の7割以上の人が、過去1年で最もお金を使ったのは「パチンコ・パチスロ」だと答えています。


海外に目を向けると、生涯のうちにギャンブル依存症にかかる割合は、オランダが1.9%(2006年)、フランスが1.2%(2011年)、スイスが1.1%(2008年)。他国と比べても日本のギャンブル依存症の割合は高いといえそうです。


また、近年ではスマホゲームの「ガチャ」への高額課金が問題になっています。射幸心をあおるガチャは、パチンコなどのギャンブルと同様に依存性が高く、ハマると危険です。ガチャを回す際、脳内でドーパミンが放出される快感が中毒になって課金を繰り返した結果、何百万円もの負債を抱えて破産する例が増えています。


ギャンブル依存の割合が高い日本人は、スマホアプリの課金額でもダントツの世界一。課金の多くはガチャなどギャンブル性の高いものに使われていると考えられます。


ギャンブル依存症は、1970年代後半にWHO(世界保健機関)において、「病的賭博」という名称で正式に病気として認められました。ギャンブルをやりたい気持ちをコントロールできずに生活に支障が出るほどハマってしまったら、それはもうギャンブル依存症にかかっている可能性が高く、自分ひとりでは解決できません。そうなったら、早期に専門家のもとで治療に取りかかったほうがいいでしょう。


参考


● 令和2年度依存症に関する調査研究事業「ギャンブル障害及びギャンブル関連問題の実態調査」(久里浜医療センター、2021年)


ギャンブル依存症疑い320万人 厚労省推計、諸外国と比べ高く(日経新聞、2017年)


ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ(消費者庁)


「しらふが怖かった」課金ゲー、スマホ…重なった依存(朝日新聞、2021年)


■子どもの虐待死、一番多いのは「0歳0カ月0日」


2021年度、日本国内で虐待により死亡した子どもは74人。そのうち心中により死亡した子どもは24人でした。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

心中以外による虐待死をした50人の子どものうち、亡くなった年齢で最多だったのは0歳児の24人(48%)。子どもの虐待死のケースでは、0歳児の中でも、とりわけ生まれたその日(日齢0日)に亡くなる子どもの割合が多いことがわかっています。


厚生労働省が2007年から2021年までの15年間の子どもの虐待死を調べたところ、亡くなった747人のうち、28.6%に当たる214人が0歳児で、そのうち過半数の127人が日齢0日で亡くなっていました。


日齢0日児の虐待死が多いことは、さまざまな困難を抱えた出産が虐待死につながっていることを示唆しています。社会の中には、10代での若年妊娠や、思いがけない妊娠、性被害の結果身ごもってしまったケースなど、妊娠したことを誰にも相談できないでいる妊婦が少なくありません。


誰にも打ち明けられないまま妊娠が進行してしまうと、病院で必要な検査を受けず、行政などの支援も得られぬまま、孤立出産にいたります。そうしたケースが赤ちゃんの虐待死につながることが、ままあるのです。


厚労省の調査によると、過去20年間で虐待死した日齢0日児176人のうち医療機関で生まれたケースは1つもありません。母親たちは自宅のトイレや風呂場などで、たった1人で出産(孤立出産)をしていたのです。「孤立出産」や「日齢0日児の虐待死」の背景には、私たちの社会が抱えるさまざまな課題があります。性教育が不十分であることや緊急避妊薬(アフターピル)を手に入れるのが困難なこと、人工妊娠中絶の経済的なハードルが高いこと、経口避妊薬も含めて人工妊娠中絶の際に配偶者の同意が求められるために女性が自分ひとりで決められないといった制度上の問題があります。


妊娠や中絶に対する社会の強いタブー意識や自己責任論もまた、妊婦が助けを求める声を上げづらくしています。



チャリツモ『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)

また、思いがけない妊娠などで生みの親が子どもを育てられない場合、生まれた子どもを養親が引き取る「特別養子縁組」という仕組みの周知も課題です。特別養子縁組は家庭に恵まれなかった子どもの命を救い、温かい家庭の中で健やかに育つ環境を用意するために1988年にスタートした制度です。


制度ができてからすでに35年以上が経ちましたが、いまも救われない子どもの命があります。少子化が国難となっている日本は、「産めよ殖やせよ」といわんばかりに出生数を増やすことにやっきになっています。


しかし、実際に生まれた子どもたちは、幸せに生きることができているでしょうか? 今も生まれて間もなく消えていく命があります。すべての命が安全に、健やかに育つことができるようサポートするのは、社会の責任です。


参考


こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第19次報告)(こども家庭庁、2023年)


「こうのとりのゆりかご」第5期検証報告書(熊本市、2021年)


■高齢ドライバーの5万人以上が、認知症の恐れあり


2022年時点の日本の人口1億2495万人のうち、65歳以上の「高齢者」の割合(高齢化率)は29.0%。日本は3人に1人ちかくが高齢者の「超高齢社会」です(一般に全人口のうち65歳以上の割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ぶ)。


内閣府が2017年に公表した「平成29年版高齢者白書」では、2012年に462万人(高齢者の7人に1人)だった認知症患者は、2025年には5人に1人に当たる約700万人に達すると推定されています。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

高齢化によって問題となったのが、高齢ドライバーによる交通事故の増加です。2020〜22年までの3年間に起きた死亡事故のうち、4件に1件(25%)が65歳以上の高齢ドライバーによるものでした。


年をとると視力や体力が衰えたり認知機能が低下することで、事故を起こしやすくなります。75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の発生率は10万人当たり5.7件。75歳未満の2.5件に比べ倍以上です(図表1)。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

2017年からは、高齢ドライバーの事故を防ぐため、75歳以上の人が免許を更新する際は「認知機能検査」を受けることが義務付けられ、認知症と認定されると免許取り消しなどの措置を受けることになりました。


2019年にこの検査を受けた高齢ドライバー216万365人のうち2.4%に当たる5万1849人が認知症の恐れがある「第1分類」と診断されています。2022年からは認知機能検査に加え、実車での「運転技能検査」も導入されています。


また、近年は高齢者に免許の自主返納を勧める動きもあります。


しかし、それでも多くの高齢者が、今も運転を続けています。高齢者が運転を続ける背景には、過疎化により地域の鉄道やバスなどが廃線になったり、核家族化が進み高齢者だけの世帯が増えたことで、移動の手伝いを頼める家族がいないといった事情があります。


高齢ドライバー問題解決のためには、買い物や通院など、高齢者の日々の移動手段をどうやって確保していくのかを考えなければなりません。


今後も高齢化や過疎化はどんどん進行します。誰もが歳をとり、高齢になれば認知症になっても不思議はありません。認知機能が低下した高齢者が、危険な運転をせずとも社会生活を送れる環境づくりが私たちみんなの安全と安心につながります。


参考


令和5年版高齢社会白書(全体版)(内閣府、2023年)


高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究(警察庁、2021年)


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チャリツモ
これまで遠く感じていた社会問題を、自分ごととしてとらえるきっかけを提供し続けるクリエイター集団。「そうぞうしよう。そうしよう」がキャッチコピー。本書のベースとなっているWEBサイト「チャリツモ」をはじめ、10代の若者が抱える性のモヤモヤにこたえる「セイシル」(運営会社はTENGAヘルスケア)や「日本財団 Instagram」など、WEBメディアを中心にさまざまな媒体の運営に携わっている。
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(チャリツモ)

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