【アイデアを生みだす技術】なぜ、アイデアの拡散が重要なのか?

2024年4月4日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン

【アイデアを生みだす技術】なぜ、アイデアの拡散が重要なのか?

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価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

Photo: Adobe Stock

世の中には、さまざまな発想法がある

 アイデアに少なからず関心を抱いたことがある方なら、世の中にどんなアイデア発想法があるのか調べたことがあるでしょう。私も、アイデア出しに苦労していた頃に、よく調べていました。たとえば、以下のようなものがあります。

 KJ法、NM法、オズボーンのチェックリスト、SCAMPER法、「なぜなぜ」5回、マンダラート、マインド・マップ、ブレインストーミング、TRIZ法、等価交換法、ロジックツリー、シックス・ハット法、ブレイン・ライティング、PREP法、セブン・クロス法、希望点列挙法、欠点列挙法、特性列挙法、ゴードン法、連想(接近、類似、対照、因果)、逆設定法、リフレーミング、アンチプロブレム……。

 このように、ざっと調べただけでもたくさん出てきます。

 ぜひ、お時間があれば、気になるものを調べてみて、実際にアイデア出しを行ってみてください。実際に「使えるもの」も多くあります。どんなときに、どんなアイデア発想法を使うのがいいのか見極めていくためにトライ&エラーして、自分にとって便利な発想法を見つけてみてください。

 使っているうちに相性のいいツールも見つかるでしょうし、使っているうちに発想のストレッチになっていくと思います。

 しかし、そのうちに、どんなときにも万能なツールとしての発想法がないのもたしかだと気づくはずです。

 だからこそ、発想法の活用や使い分けができるようになることも大事なスキルになってきます。私自身が、既存の発想法をベースに応用している例を、あとでお伝えします。

アイデアについていちばん多い悩みとは

 私の講義や研修の出席者に「アイデアについてどんな悩みを抱えているのか」と質問をすると「アイデアの数が出ない」ということが、いちばん多く挙げられます。それ以外にも、以下のような悩みが寄せられます。

 ・そもそも何から考えていいかわからない ・考えてはいるのだけどアイデアが湧かない ・浮かんでもどれもつまらなく思えてしまう ・焦ると頭が真っ白になって何も思い浮かばなくなる ・打ち合わせ30分前になるともう思考停止

 たくさんアイデアが出てこない理由は人それぞれにあります。アイデアを出そうと思っても出てこないといったときに「思考の回転が止まってしまう」と感じ、ストレスになっているようです。

広告会社の研修でもよく出る例題

 では、ひとつの例題に一緒に取り組んでみましょう。これは、広告会社の研修でもよく取り組まれているものです。

【例題】 待ち時間が長くてイライラする会社のエレベーター。どうしたら待っている人のイライラを減らせるでしょうか? 5分間で、アイデアをたくさん書き出してください。丁寧に説明する必要はなく「鏡をつける」など自分が後で思い出せるようにメモする程度でOKです。とにかく、たくさんアイデアを書き出してみましょう。

 せっかくですので、実際に少し取り組んでみましょう。

 さて、5分間でどれだけの数のアイデアを出せたでしょうか。

 講義においては、まずは「50個出せた人?」とまず聞くようにします。1分間で10個。6秒で1個のアイデアを出しつづけると、その数になります。これは、なかなかのペースです。おそらく5分間の間に一度も思考を止めることなく、アイデアを出しつづけたことになります。50個のアイデアを出せたら、大したものです。

 たいていの研修では、50個のアイデアを出せる人はいません。

 それから、私は「では、40個以上出せた人」「30個以上の人」「20個以上の人」「10個以上」「5個以上」と順に問いかけていきます。

 30個以上もほとんどおらず、いちばん多いボリュームは、10個から20個という人です。その次は、5個から10個という人です。20個以上出せる人は、なかなかいないという結果になります。

 これは、社会人向けの講座であっても、大学生向けの講座でも、広告代理店の新入社員研修でも、数字にあまり差はありません。

 ちなみに、これまで私が目にしたアイデアを出した数の最高は、62個でした。子ども向けの創造力を伸ばすための課外教室を開いているその方は、「アイデアに自信がある人?」と最初に私が聞いたときも、まっすぐに手を挙げていて、とても印象に残っています。

例題の回答例

 さて、答えを見ていきましょう。ある講義において次のようなアイデアが出てきました。ちょっと長いですが、列記してみます。

【回答例】 鏡をつける、エレベーターガールを各階に置く、椅子を置く、テレビをつける、広告を流す、待った分だけお金がもらえる、待ち時間がカウントされる、ゲーム機を貸してあげる、コーヒーのサーバーがある、ウォーキングマシンがある、猫がたくさんいる、犬が飼われている、そこでしかできないスロットが置いてある、グレープフルーツの匂いがする、相田みつをのポスターを貼っておく、エレベーター製造者のエレベーター開発に関する感動秘話を貼っておく、制汗剤使い放題、タブレット等のリフレッシュ菓子がもらえる、1分で読める漫画を貼っておく、ニュースが流れる、階段を使用できなくする、エスカレーターを設置する、テレポーテーションできるようにする、エレベーターの代わりに滑り台にする、節電中という張り紙を出す、エレベーターを増設する、エレベーターの速度を速める、仏様の写真を貼っておく、和む音楽を流す、占いが見られる、天気予報が見られる、いい匂いがする、美人時計を置く、階数表示がイヌ語になっている「いま8階だワン」、めっちゃイケメンがチラチラこっちを見ている動画を流す、階段が危険だという映像を流す、映画の予告編が見られる、飴がもらえる、待ち時間だけ無料ダウンロードできるスタンプやアプリをつくる、待ってる間だけマイナスイオンが流れる、待ってる間だけ無料の自販機を設置する、などなど。

 このように、アイデアをたくさん出すことを「アイデアの拡散」と呼んでいます。

 まず、大切なことは、自分の頭の中で「これはないな」と判断せずに、とにかく思いつく限り書き出してみることです。ブレインストーミングと同じですね。

 ブレインストーミングは、グループで議論するときに他人のアイデアを否定しないということを議論のルールにしているものですが、それを自分の頭の中で行っていくのです。

「アイデアを捨てる」ために拡散する

 では、そもそもなぜ、たくさん出す必要があるのでしょうか。

 その理由は「捨てる」ためです。先ほど列記したアイデアを見たときの心理を思い出してください。こんなことを思いませんでしたか?

「それ、同じこと考えた」「それ、思いつけそうだな」

 そうなのです。5分ほどで考えたアイデアのほとんどは、誰もが思いつくような凡庸なアイデアです。

 だからこそ、もっと考えて、もっと広げて、アイデアの拡散を行う必要があるのです。どんな仕事であっても、アイデアで戦おうと思うのならば、凡庸なアイデアを超えて、いいアイデアにたどり着くために、「人と違うこと」を考えるのが大原則

 もしくは、凡庸でも伸ばす芽のあるアイデアを見極めるためにも、すべてのアイデアの棚卸しとして、アイデアの拡散を行うことを出発点にしましょう。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤 安久 (にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター

1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012〜13年電通サマーインターン講師、2014〜16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。

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